089
ゲルプの部屋のドアを開けると、煙が上がっていた。
合成というのは、魔法の力でアイテムを作り出すというものだ。
言ってしまえば、魔法の一種なのだ。
特殊な食材を用いて作る以上、普通の料理とわけが違う。
なにせ、魔力が込められたエンジェルフルーツポンチなのだ。
普通の食べ物ではない。攻撃魔法と、弱体魔法の精度が跳ね上がる食べ物なのだ。
それでも合成で煙が上がることはないが。
やがて煙が晴れるとそこには、ゲルプが床にしゃがみこんでいた。
だけど部屋が荒らされていた。そして、家の窓には一人の怪盗。
真っ黒……というよりピンク色の派手なタイツを着ていた。
長い髪が、窓から吹く風に揺れた。
「女?」
「お前は何者だ?」
「いただくわ、あなたたちにこれは渡せない!」
僕の言葉に、ピンクタイツの人物がエンジェルフルーツポンチを持っていた。
綺麗にデコレーションされたフルーツポンチを、美味しそうに見ていた。
「ううっ、うまそう」隣のロゼがヨダレを垂らしていた。
「ブラウ、魔法を!」
「ここだと対人魔法は使えない。弱体も然り」
ヴァイオレットが叫ぶが、僕は唇を噛み締めるしかない。
シティとホームエリアでは、攻撃や弱体魔法は使えない。
もちろん攻撃もできない、マジック・クロニクルはPKができない。
「私はロゼを助けたい。だからお前たちをこれ以上進めさせない」
「どういう意味だ?」
「ロゼは気づいたはずだ」
女怪盗が一言言うと、アイテムを既に使っていた。
手に持った黄緑色の石、帰宅石が光を放つ。
手を伸ばしたオランジュだが、怪盗は転送されていった。
それは、一瞬のことで余りにも突然の出来事だった。
だけど、僕のそばにいたロゼは落ち込んだ顔を見せていた。




