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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
九話:とある少女が取り合いに参加する件
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~~キュベリオン・アラビス高原~~


バトルエリアであるアラビス高原は、常に人が多い。

一応ルームの少ないエリアに来たのだけど、ここにも人はいた。

そこは草原、象と恐竜が住む巨大生物のエリア。

敵がやたらとデカくて、人間が小さく感じた。

当然、それなりに強いわけだが。


敵を狩ることでも素材を集めやすいが、採集にも適していた。

ここで採集ができるのは草刈だ。僕は草原のほぼ真ん中で、草刈をしていた。

手に草刈鎌を持って敵を避けながら草を刈る。

小さき見える先に、ロゼがいた。やっぱり草刈鎌をもって走っていたが。


「草刈って地味すぎでしょ」

「まあ、ここでは『フェアジョア』がレアで取れるらしい」

「『フェアジョア』ねえ。本当に取れるの?」

そういいながらも、僕は草刈ポイントを見つけては草を刈る。


幸いにも、ここはエリアが広いのでバラければポイント探しは早い。

前の木こりと違って、ポイントが集中していることはなさそうだ。

パーティチャットで会話していれば、外に言葉がもれない。


「ただ、モンスターには気をつけろよ」

「大丈夫よ、お兄ちゃんこそやられないようにしなさいよ」

「僕は絡まれるほど弱くない。いざとなれば寝かして放置でもするさ」

「まあ、競争相手はいないみたいだしね」

「だいたい象牙狩りをやったほうが、金にはなるから。

やり方さえ間違えなければソロでいけるし」

確かに、僕の周りには象と戦っているパーティが見えた。

ちょうど象が覚醒していたが。


「あら、象に絡まれ」

「ロゼ、今行く!」

僕はロゼがパーティ会話で行ったので、急いで向かうことにした。

だが、そんな僕はあることに気づかなかった。


ロゼの方に駆けつけて、草原を走る。

遠くで象が見えた、おそらくそこでロゼが戦っているのだろう。

「見つけたっ!」そう思った瞬間、僕はいきなり背中を牙で襲われた。


「ぐっ、なんだ?」

僕のHPが三割ほど減った。

振り返ると、そこにはヘルヒューマがいた。

チーターのような獣が、僕の背中に不意打ちを入れていた。


「クソッ、後ろを取ったか」

「なに、何?」パーティ会話のロゼ。

「なんでもない」

だけど魔法を詠唱する前に、さらに横からヘルヒューマは僕に爪で攻撃。

僕は後ろに下がるしかなかったが、HPを削ってきた。


「くそっ、二匹かよ」

至近距離で間合いを潰すヘルヒューマは、動きが素早い。

魔法を使う前に攻撃を受けて、魔法が中断された。


「だったら盗賊で」

レヴェラッソで盗賊に切り替えた、短剣を持って屈む。

二匹のヒューマが、すぐに僕に襲いかかってきた。


「邪魔だっ」僕は向かって来るヒューマに、短剣で攻撃を入れた。

だけどヒューマの動きがさらに上回って、爪が二発ヒット。

さらに僕のHPが削られた。


「ちっ、強いな」近接攻撃は、得意ではない。僕は苦戦を強いられた。

絡まれても、相手の距離を取って戦うのが僕のスタイルだ。

当然、近距離戦にはめっぽう弱い。近接攻撃で動きの速いヒューマは分が悪い。


(逃げるか……でもやつの足だと追いつくな)

襲ってくる二匹のヒューマ、僕は次第に追い詰められた。

じりじりと削られるHP。そのままヒューマが僕にのしかかった。


「うわっ!」

ヒューマに押し倒された僕のHPは20%にまで下がっていた。

そのまま、身動きがとれない僕にのしかかって押さえ込む。

もう一匹が、僕の頭で前足を振り上げた。

だが、いきなり僕に馬乗りになったヒューマが飛ばされた。


「お兄ちゃん、大丈夫?」

ヒューマが降りると、僕は体の自由が利く。

振り下ろした爪をかろうじて転がることでかわした。

草原を転がった僕が、上を見上げる。


上にはたくましい姿のロゼが、巨大なハンマーを持っていた。

「ロゼ……助かった」

「あたしが仇を取るわ、お兄ちゃん」

そう言いながら、ロゼはあっという間に巨大なハンマーでもう一匹のヒューマを沈めた。

やっぱり廃人のロゼなら一撃だ。


「大丈夫?」

「ああ、なんとも情けない兄だな」

「ううん、そんなことないわ」

ロゼは心配そうに僕のことを抱きしめた。

半泣きのロゼの頭を、僕は優しく撫でていた。


「もう心配しなくていいよ。ごめんね、ロゼ」

「うん、お兄ちゃん。それよりもあそこに」

ロゼが指さしたところには、草刈ポイントが見えた。

立ち上がった僕は、鎖鎌を持ってポイントに近づく。


「ここにも沸くんだ」

「とりあえず、回収……」

そしてここで、運良く目的のアイテム『フェアジョア』が出てきた。

黄色い果実が、眩く光って見えた。


「やった、ゲットした」

「あとは……」

「問題の『ネクタル』ね。とりあえずヴァイオレットに声をかけるわ」

「相手はなんだっけ?」

「『ホーリーワーム』、だけどモンスターより難敵がいるわ」

ホーリーワームという言葉に、僕は数時間前にネットで見たマジック・クロニクル板のことを思い出した。



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