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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
六話:とある少女が祭りに参加する件
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~~バイエル公国・シュタットツェントイム~~


あれから三十分後、僕は巨大な繁華街を歩いていた。

キュベリオンの商業街をさらに凌ぐ、バイエル公国の繁華街だ。

なにせ、ここにはキュベリオン、サタルカンド、デモニースの三国のアイテムが買える。

モルゲンロート随一の繁華街なのだ。


当然ここはプレイヤーが昼夜を問わず多い。

昔は運営が、混雑緩和のためにエリア入室規制をかけたこともあるぐらいだ。

人ごみ集まる大通りを、ハロウィンに飾り付けられた街を一人で歩いていた。


ロード・オー・ランタン戦を終えた僕らは、カボチャ集めをしようとしたが時すでに遅し。

いつの間にか、終了の時間を迎えていたわけだ。


カボチャ集めの結果は……僕が19、ロゼは23、ロゼの逆転勝利だ。

後半の三十分は、遊んでいたわけだから仕方ない結果だ。

ロゼに負けたが、それほど悔しくはなかった。


あのあと、オランジュはパーティの前で引退発表をした。

ロートとゲルプは寂しがったが、リアルの事情を言うと納得してくれた。

ロゼはいないけど、リアルで僕たちをのぞき見ているから知らないわけでもないし。

そのまま、オランジュはゲームを落ちた。今頃は受験勉強中だろう。


(今頃は、ロゼがクリア報酬の画像を見ているのだろうな)

普段やかましいロゼがいないと、ちょっぴり寂しくなっていた。


(いかんな、クセになっているのか?)

僕は意味もなくそこで咳払いをした。

そんな時、僕の目の前に見慣れた灰色のローブが見えた。

しかもそれが路地の方に走っていく。


「あれはまさか……」

僕は体を横に動かしながら、灰色のローブを追いかけた。

そのまま路地に駆け込む。

シティエリアなので、攻撃はできないが動きは明らかに怪しい。


シュタットツェントイムは、路地も入り組んでいた。

しかもここにも隠された店があるのだ。

だけど、そんな店に目をくれずに僕は灰色のローブを追いかけた。


(やつらは何をしようとしているんだ?)

そう考えながらも、さらに細い路地へと進んでいく。

このあたりだと、場所的に言ってもひとつしかない。


(まさか……やつら魔映写室に)

それはまずい、ロゼが今一人で画像を見ている。

僕もここに来て、緊張が走った。慌てて路地の壁沿いに隠れた。

いきなり街の中で攻撃するのはできないが、ロゼとズイーバーは知り合いらしい。

そんなズイーバーが、魔映写室の裏口前に来ていた。


(どうする?あの部屋には、普通の冒険者は入れない……

僕ですら、アクセスができない。

ゴモリが映像と一緒に、アドレスを指定しているからな)

そうこう考えているうちに、灰色フードのズイーバーが鐘を鳴らした。


(あれは、GMコール)

それはGMコールの鐘だ。全てのプレイヤーが持っていた。

プレイヤーがGMを呼ぶ時に鳴らす鐘のこと。

最も頼まなくても、ゴモリは勝手に絡んでくるから使わないけど。

そして、呼ばれたのは一人の男だ。


(赤い名前……エリゴスか)

水色のローブを着ている男で、やはりゴモリ同様耳が長い。

GMはエルフィンが好きなのだろうか。

長い錫杖のような杖は、オランジュにプレゼントしたミストルテインか。

その二人が何やら話をしているようだ。


それから間もなくして、

「下手な尾行だな、ブラウ」

いきなり大きな声が聞こえた。エリゴスの声だ。

観念したのか、僕は両手を挙げて二人の前に出てきた。


「君は盗賊じゃないから、尾行に向かないさ」

「あなたたちは何をしようとしている?」

「ブラウ、君には関係ない」

「関係なくはない!知り合いがこの近くにいるのでね」

「ロゼのことだな」

ここで口を開いたのはズイーバーだ。


「ああ、ロゼは今何をしているか知っているようだな」

「ゴモリの拷問だ、あいつがロゼを不幸にする」

「何を言っているんだ?」僕はズイーバーを見返す。

口惜しそうに、ズイーバーが裏口を見ていた。


「ロゼの件に関して、君は関係ないだろう。彼女が君に取りついたのも単なる事故だ。

事故や事件を解決するのはGMの役目で、ズイーバーはその通報をしたに過ぎない。

本来なら、君がGMに通報するのが筋じゃないのか?」

「違うんです」

僕はGMエリゴスの言葉を否定した。


「何が違うというのだ?」

「僕ではない、ロゼは帰りたがっているんだ。自分の家に」

「果たして本当にそうだろうか?」

「え?」僕はエリゴスの言葉に驚いた。

「彼女はなにか嘆いていなかったか?」

「それは……」

闇の中で、助けてくださいと叫ぶ映像が出てきた。

それは、真衣……ロゼの過去の姿。だとしたら彼女は戻ってはいけないのだろうか。


「君は、ロゼから離れたほうがいい。君のためにもロゼのためにもならない。

ロゼのことは我らに任せてもらおうか」

「それはできない!」

「なぜだ?一人のプレイヤーでは持て余すぞ」

「僕は彼女とどこかでつながっているからだ」

そう言いながら、僕は裏口の方に近づく。

その瞬間、裏口が開いた。出てきたのはロゼだ。


「ロゼ……」僕が声をかけるなり、ズイーバーに睨みをかけるロゼ。

「ズイーバー出ていって!」

「ロゼ、君はそっちにいてはいけない」

「あたしのお兄ちゃんに手を出さないで!」

そして、ロゼは僕の前に立ちふさがった。

それを聞いて、僕は戸惑うしかなかった。


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