004
~~バイエル公国・小黒鷲旅団自宅~~
当選番号を確認して、帰ったのは自宅だ。
僕たち小黒鷲旅団は、バイエル公国の中で家を持っていた。
住宅街という専用のエリアがあって、そこに家を買うことができる。
立地が良ければ、家も高いわけなのはリアルと同じだ。
バイエルは一番人気のエリアだから、家も土地も価値が高い。
5000万ゴルダで買った最も小さい家だけど、そこは僕ら四人のパーティが住む家。
『小黒鷲旅団』とは、僕たちのパーティの名前でもある。
リーダーは僕、ブラウだ。まあ、なんとなく僕が選ばれたわけだ。
宝くじが当たったとしても、いつもどおりだ。僕の行動は変わらない。
ロートと別れたあとバイエル公国で、出展したオークションアイテムの売れ行きを確認。
店を覗いたり、オークションを見たりして時間を潰した。
僕が家に帰って、リビングに居るとゲルプがにこやかな顔で現れた。
「おかえりなさいですぅ~リーダー様」
なぜか、黒のドレスを着ていたゲルプだ。
胸元の空いた黒のドレスに、猫耳は色気が溢れていた。
そのまま玄関になっていた僕に、腕を絡めて胸を押し付けてきた。
「ど、どうしたんですか、ゲルプさん?」
「リーダーさんには普段からお世話になっていますから、あたしは今日からサービスしますよぉ」
「へ?」
「ほら、サービスですぅ、耳かきたくありませんかぁ?」
リビングに誘導したゲルプは、甘い声で僕をソファーの上で横に寝かせた。
太ももに僕の頭を乗せて、耳かきを始めた。
普段とは違って、妙に優しくてかえって怖い。
「こっちはかゆくないですか?」
「大丈夫だけど……」
「ごみ、詰まっていますぅ」
ゲルプは色気を出しながら、僕の耳かきをしていた。
その時、ドア奥にちらりとロートの姿が壁越しに覗いているのが見えた。
(なるほど、そういうことか)
僕は全てを理解した。
「宝くじ、アテにしているんですか?」
「ええっ、なんのことですかぁ。素材が欲しいわけじゃないですぅ」
とぼけているが、バレバレのゲルプだ。
顔を逸らして誤魔化そうとするが、下手すぎる芝居だ。
「ういっす、リーダー。いやあ、持つべきものは友だよなぁ」
そう言いながら、今度は金の全身スーツを着たオランジュが現れた。
見た感じが、派手すぎる金ピカスーツこそオランジュの普段着らしい。
「にこやかだな、オランジュ」
「いやあ、リーダーブラウは今日もイケメンだな」
「そう思ったことはないけど」
「またまた……リーダーかっこいいよな、ゲルプさん」
「かっこいいですぅ」
ゲルプとオランジュが、僕を一生懸命持ち上げようとしていた。
「二人共、気持ちわるいよ」
「そ、そんなことない」
「心にないことを」
「そんなことないですぅ、リーダーは頑張っていますぅ」
ゲルプが、必死に否定した。
「まあ、いいや。オランジュは、何が欲しいんだ?」
「ええっ、やだなぁ。話が早すぎだろ」
手をすりながらやってくる姿は、さながら悪代官風だ。
金ピカの派手スーツを見る限り、オランジュの方が金持ちに見えそうだが。
「ロートから聞いたんだろ、宝くじの話」
「なあ、俺にはスペシャルな武器が欲しいんだ。
『ミストルテイン』って武器があるんだけどよ、魔術師最高の武器でさ、属性めちゃくちゃ上がるんだよ。
よかったら……」
そう言いながら、装備品のカタログを僕に見せてきた。
「うーん、装備品ね。僕はメイン妖術師でこれといって欲しい装備はないし。
いいよ、申請出しておくよ」
「ほんと、ありがとう。さすが神様、リーダー様、ブラウ様」
「あの、あたしは……」
ゲルプもモノ欲しい顔で僕を見てきた。
「ゲルプさんならおそらく素材だろうね、僕は合成とかしないし。
ゲルプさんは何が欲しいんだい?確かS級の三つだったよな」
「う~んと、ミラクルダイヤモンド、それからリン革、後は天使布ですぅ」
「そっか、わかったよ。で、ロート」
そう言いながら、僕はドア越しに光景を見ていたロートの方に声をかけた。
ロートは恐る恐る小さな体を、リビングに出してきた。
恥じらっているようだけど、様子を伺って後から出てくるあたりは策士だ。
「ロートは何が欲しいんだ?」
「えと……その」
もじもじしているロート。
そんなロートを、優しい眼差しで見てくるゲルプ。
「欲しかったものがありますよねぇ」
「うん、欲しいの」
「何が欲しいんだ?」
僕はロートの言葉を待つことにした。そして顔を赤くして数秒後、
「新しい家が欲しい!」
ロートの発言に、僕は一瞬戸惑った。
そう、家はあまりにも高額だったからだ。
この家だって、みんなでお金を出し合って買った家だ。
「なぜ、家?」
「ロートね、家庭菜園にハマっているの。大きな家だと、庭も大きいでしょ。
趣味の家庭菜園がいっぱいできるから」
「収穫系のやつか、リアル時間で育つやつね。まあロート以外は誰も手をつけていないし」
「世話も面倒なんだよな、あまり効率的じゃない。
一億ゴルダだぞ、金を使うなら別のモノに投資したほうがいい」
オランジュはなぜか反対してきた。反対する理由が、イマイチわからないが。
「ええっ、ロートすごく楽しみなの。
新しいお家なら、部屋だって大きくなるし、最大二十人も住めるの。
ホームパーティだって、バーベキューだってできるんだから」
「固定メンバーである小黒鷲旅団は四人だ。
無理に二十人住む家は必要じゃない、いらない」
「む、オランジュに頼んでいない。ブラウどうなの?」
ロートが一生懸命、僕にアピールしてきた。
小さな体で綺麗な目で、純粋に僕を見てきた。
少しだけ考えて、僕は口を開く。
「まあいいよ、宝くじだってタダみたいなものだし。
僕だって一億円を、何に使うかあまりいい考えが思いつかなかったから」
「ほんと、ありがと。ブラウお兄ちゃんだ~いすきっ!」
「よかったわね、ロートちゃん」
「うんっ!」
ロートは満面の笑みに包まれ、オランジュは不満そうな顔を浮かべたリビング。
そんなメンバーを見回しながら、僕ははっきりさせたいことがあった。
「ただし、みんなに一つだけ頼みがある」
「なんだ?」
「宝くじことは家の中だけの秘密にして欲しい、ネットだと晒しがあるからな」
「もちろんだとも」
「ロートたちは仲間だし、家族だよ!」
「そうですぅ、あたしはこう見えても口は硬いですぅ」
オランジュ、ロート、ゲルプの三人と約束をした。
そこに、僕宛に運営からメールが届いた。
そう、それこそ宝くじ特等当選の正式なメールだ。




