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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
四話:とある少女が大人数パーティを組む件
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父が仕事に行ったあと、僕もまたバイトのためにガソリンスタンドに来ていた。

四時間のバイトだけど、明日は日曜ということで車の数が多い。

僕は走り回りながら、車の対応に追われていた。


大きな国道に面していて、土曜日は特に忙しい。

そんな僕に、しつこく付きまとうのがロゼなのだが。

基本は相手にしない、する余裕すらない。


「ありがとうございました」

僕は何度も頭を下げて、車を見送った。

そして、次の車が切れ間なくやってくる。


「いらっしゃいませ」

「久しぶりだな、打墨」

スタンドに止め、車から降りたのが担任の佐藤先生だ。

メガネをかけた中年の男性、学校帰りなのでスーツ姿だ。

ちょっとだけ、僕は目をそらしたらすぐに先生が給油していた。


「打墨はここでバイトしているのか」

「仕事しないと、高校だって……」

「決まったのか?進路」

「わかっていますよ……」

バイトにまで進路のことを持ち出されて、僕は言葉を濁していた。


「先生は今日も進路指導ですか?」

「そうだ、来週から普通に授業も行う。ほかの生徒は推薦入試も始めているからな」

「ですね」

「もったいないな、あまり勉強していないのに成績は悪くない」

「すいません」

「あら、ソウちゃんの知り合い?」

そんな言い方をするのは、おそらく一人だけだろう。

ここ(ガソリンスタンド)の制服を着た大人の女性がやってきた。

長いカールかかった髪に、おっとりした目の主婦パート、生実さんだ。


「生実さん、なにしているんですか?」

「休憩明けですよぉ」

「レジは行かなくて……」

「あんたは……まさか」

一瞬にして佐藤先生の顔が青ざめた。

さっきまでの僕に対して、眉間にしわを寄せて不満をぶつけていた顔とは明らかに違う。

それを見て、生実はにっこりしたまま佐藤先生を見ていた。


「あら、佐藤さんじゃないですか。いや、ストーンヘンジ・オンラインのバッツさん」

「ううっ、その名前だけは……」

生実さんに言われて、佐藤先生は一気に顔を赤くした。


ストーンヘンジ・オンラインとはマジック・クロニクルと同じ会社が運営しているゲームだ。

こちらも同じようなMMOだけどかなり硬派なRPGだ。

PK(プレイヤーキラー)なんかもある。

そんな佐藤先生は、妙に焦っているように見えた。


「どうなんです?新しいゲーム?」

「あなたがまさか……」

「ふふっ、今回はプレイヤー側として楽しんでいますよぉ」

「そうでしたか、助かります」

「でも、ダメですよぉ。あまりいじめちゃ」

「いじめていないです、むしろ保護していますから」

生実の言葉に、佐藤先生は体を小刻みに震わせた。


「あの子ですか?」

「ええ、あの子です。全く困った子ですよ」

「そうですね、でもよろしくお願いですよぉ」

「ええ」佐藤先生はそれでも給油口にレバーを抜いた。

会計を済ませ、いそいそと車に逃げるように入っていく。


「打墨……またな」

最後にそう言い残して、銀色の車を佐藤先生が出していった。

それを僕と生実さんと一緒に頭を下げた。「ありがとうございました」と。


残った僕は、にこやかな顔を見せた生実さんを見ていた。

相変わらずおっとりとしたまま、僕を見ていた。


「生実さんも、まさかネットゲームをしていたとは……」

「ええ、やっていますよ。ストーンヘンジも、マジクロも」

「マジクロって、マジック・クロニクルも?」

「もちろんですよぉ」

そんな時、ガソリンスタンドへ一つの車……じゃなく自転車が来ていた。


「おい、蒼一はいるか?」

それは、塾通いの猿楽場が姿を見せた。

それと同時に、猿楽場は顔をわかりやすいほどに赤くしていた。



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