035
~~デモニース・デモニルク街~~
僕たちはオーガの巣から戻ってきていた。
クリスタルになった僕は、一時間経過してエリアから離脱した。
戻った先は、クエストで受けた一軒家のとなりだ。
来る前に祈りを捧げた天使像の前に、戻ってこられたのだ。
その天使像前には、ロゼが仁王立ちだ。
「備えもたまには役に立つわけね」
「そういうことだ」
僕はクエストを受けた一軒家に、ロゼと一緒に来ていた。
さっきまで泣いていたロゼと違い、不機嫌な顔になっていた。
いろいろ聞きたいことはあるけど、まずはこれを聞くことにした。
「ロートは?」
「栽培を見に行くって帰ったわよ」
「そうか、転送魔法で帰ったんだな。あとでお礼を言っておこう。
もちろん、ロゼはクリアしたよな」
「当たり前じゃない」
ロゼは堂々と胸を張っていた。
こうして話しているとロゼは、ほぼ元に戻っているようにも見える。
「にしてもあんた、かなり無茶なことをするわね」
「ああでもしなければ、無理だろうな。ドラゴン族って寝ないし、足止めもきついから」
「最深部には通常なら行くことないからね」
「ロゼ、それよりもあいつは?」
「ズイーバー」
「ズイーバー?」いきなり聞きなれない単語が出てきた。
「あいつの名前よ」
ロゼの言葉に、僕は首をかしげた。
「うーん、どこかで聞いたことがあるな」
「あたしも名前と灰色のフードしか思い出せないわ。
ただね、かなり優秀な錬金術師よ。あたしの廃人だから」
「錬金術師か……強化魔法とハンマー使いの魔法使い」
『錬金術師』というキャスパルがある。
強化魔法を使えるが、ハンマーが主要武器の魔法使い。
弱体魔法を得意とする妖術師とは、真反対の性質を持つ魔法使いだ。
「あっ、ズイーバーってもしかして四大廃人の一人?」
「なにそれ?」
「このサーバーで有名な四人の廃人」
「なにそれ、へんなの」
「ロゼも、入っているよ」
「当然じゃない」ロゼは堂々と胸を張った。
「そんなことより、映像を見ましょ」
ロゼはクエストをクリアして、魔映盤を手に入れていた。




