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~~バイエル公国・魔映写室~~
――ロゼとここに来るのは、三度目だ。
そして見ている映像は、明らかに過去のものだ。
それは道路だ。道路が濡れていて、小雨が振っていた。
見慣れない道路で小さな男の子がいた。
隣には真っ黒な車らしきものが見えた。
「バイバイ、また遊ぼうね」
「でも……」こっちは女の子の声だ。
「きっと会えるさ。僕たちはいつも一緒なんだ」
「うん」視界の女の子の手が大きく映る。
目でもこすっているのだろうか。
「お別れよ、真衣」これは後ろの方から聞こえた女性の声。
「うん」
それから次に見えたのは車の中だ。
「真衣……またね」
背後から男の子の声が聞こえた。
車の後部座席から、男の子が元気良く手を振っていた。
「またね、蒼一……」
それは笑顔で、元気良く手を振っていた。
それは雨の日のできごと、懸命に手を振っている男の子は蒼一と呼ばれていた――
画像を見終わった映像室は、僕とロゼしかいない。
映像が終わると、静寂がこの部屋を支配した。
「あの、ブラウ?」
「まさか……そんな」
この画像を見て、僕は単純に驚くしかなった。
蒼一、その名を聞いて僕ははっとした。
「これは僕だ」
驚いた僕は、一言そう漏らした。




