033
このレッドドレイクは、クエストボスではない。
よって必ず倒す必要はない。
ただ、グラ・ホール内最強のモンスターであることは間違いない。
なにせ世界に三体しかいない『ウルトラモンスター』の一つだ。
周囲を睨んでいて威嚇しているさまは、ボスオーラ全開だ。
威嚇する赤いドラゴンの周りにはオーガもいるし。
攻撃力も防御力も高く、HPはほかのモンスターの10倍はあるだろう。
後ろにいるオーガの下僕に見えてしまう。
「さてと、ドレイクの前を突っ切らないと先に進めそうにないな」
「見破りがあったっけ?」
「ある」とロート。険しい表情でドレイクの動きを見ていた。
見破りとは、透明を見破ることだ。
ドレイクの前では(透明化)は通用しない。
攻撃されれば透明の魔法は切れて、オーガにも見つかってしまう。
そうなれば集中攻撃を食らってしまう。
「流石に、ドレイクを倒すのは難しいわね」
「ああ、バイエルで二十四人の討伐パーティ募集みたいなのがあったけど。
やり方が上手くないと熟練の冒険者でも負ける相手だ」
「やばいね、それ」
「あたしが入れば楽勝だけどね」
ロゼが胸を張っていうが、オーガの斥候らしきが一体こっちに近づいてきた。
「とりあえず透明になろう」
すぐさま透明になってオーガの視線を逸らす。
知能が低いオーガは、透明になれば僕らは全く気づかない。
触れようが襲ってきたりはしないようだ。
「で、どうするの?ドレイクやる?」
「それは無理だよ」透明なロートが弱気に言う。
「ああ、当たり前だ。いくらロゼが倒したことがあるとはいえ、人数が足りないし」
「じゃあどうするの?」
「ロゼ、一個いいか?」
「どうしたの?」
「このクエストって、僕はクリアしなくてもロゼがクリアすればいいんだよな?」
「ええ、前もその前もクリアしたのは一人でしょ」
「だったら簡単だよ。僕以外は女の子だし」
「へ?」
ロゼがなぜかきょとんとした顔を見せた。
だけど、僕はドレイクの方に向けて走り出した。
「まさか、リーダー?」
「僕が囮になるから、二人は先を目指して」
「ちょっとまって、ブラウ!何カッコつけているのよ!」
ロゼが騒いだが、僕はドレイクの近くを歩くなり見つかった。
それと当時に、ドレイクが透明の僕の方に巨体を動かす。
「行け!」
僕は叫びながら、ドレイクたちの視線を逸らしていた。
「バカじゃない……あたしがやるわよ!」
透明のロゼが向かおうとした瞬間、ロートはロゼを制した。
「リーダーに任せよ」
ロートがロゼにそう言って、二人もまた走り出した。




