031
~~デモニース・クラ・ホール~~
グラ・ホール、そこは亜人オーガの集落だ。
オーガとは人間と敵対する種族で、言ってしまえば敵だ。
その敵の住む村に、僕は潜入していた。
騎士クエストは、いなくなった男の子を探しに途中のオーガの部屋に駆け込む。
だけどゴモリが用意したこのクエストは違う。
そこで僕は、一人援軍を呼んでいた。
「ふむふむ、騎士クエをクリアしたいと?」
「ああ、騎士クエというか、ドレイクの先まで行くからな」
「ドレイクか、またすごいことするんだね。倒すの?」
「あたしがいれば、負けることないわ」
ロゼが自慢げに胸を張った。それを見て、ロートは目を輝かせていた。
呼んだのはロートだ。小さい体の盗賊。
通常『射手』で遠距離攻撃を担当するロートだけど、今回はレベルの高い盗賊だ。
茶色いチョッキは、盗賊装備としてかなり優秀な装備だ。
「やっぱりすごいね、ロゼさんは本当に伝説の戦士だね」
「まあ、英雄よりは廃人よ」
「そこは否定しないんだな。さて、ロート」
「なに、リーダー?」
「ロートには鍵開けを頼みたいがいいか?」
「うん、お安い御用だよ。ちゃんとピッキングツールも持っていた」
ロートは無邪気に笑っていた。
「よろしくね、ロートちゃん」
「はーい、任せて。みんな盗賊だよね?」
「ああ、『透明化』は必須だからね」
かくして僕たち三人でグラ・ホールを探索していた。
そこは、原始時代にタイムスリップしたかのような場所。
草原と藁の家らしきものが見えた。
中にもオーガが住んでいるのかもしれない。
そんなオーガの村を、僕たち三人は透明になって進む。
敵のオーガがうろついていた。先頭ロートで、しんがりがロゼだ。
「ここのはまだ弱いよね」
「最初のエリアにも、たまに強い奴はいるからな。
徐々にエリアや扉が進むにつれて敵も進化するし、強くなる」
「あたしは全部やってもいいわよ」
ロゼが相変わらず的外れな事を言う。
周りにいるのは全部敵で、数が多い。
そんなものをいちいち相手にしては、体力も魔力も持たない。
「全滅が目的じゃないだろ」
「どんなんだっけ、クエスト?」
「騎士の弟を探すクエスト」
「ああ、あれをやりに来たんだっけ?」
なんとなく上の空だ。一応ロゼのためのクエストだろ。
透明な僕は横に居るオーガを避けて先を進む。
「騎士の弟は強くなるために、ここに来た。だけどオーガに捕まってしまった。
それを冒険者が助ける、今回も同じなんだな」
「なるほど、でも捕まるってことは結局弱いからじゃない」
「確かに間違いじゃないようだ、強くなりたいからここに来た。
自分を磨き、強くなるために力を求めるために……それが騎士道ってわけだが無謀だよな」
「あら、そうじゃないわ」
「ロゼ?」
「少なくともあなたと違ってその弟さんはあがこうとしているわけだし」
ロゼの言葉に、透明の僕は言葉を濁す。
相変わらず痛いところを突いてくるな。
そんな僕たちは透明で先を進む。
オーガの特性上目で見えたもの以外は、反応しないのだ。
つまり襲われずに安心して先に進める。
「ロートはリーダーが弱くないと思う」
「ロート?」
「みんなのために戦おって、いつもリーダーは率先してくれる」
「……ロート」
だけど、背後の方で一匹のオーガが急に動き出した。
「ただエリアが違う、騎士クエのさらに先にある最深部だ。
そこにはウルトラモンスターもいるからっ……て」
「からまれちゃった」
姿を顕にしたロゼが可愛く舌を出しながら、オーガに追いかけられていた。
ロゼが『透明』の魔法をかけ忘れたようだ。
「しょうがないね」
「かわいくねえよ」ロートの同意に、僕はすぐさま否定した。
ロゼを追いかけるオーガの集団は三体見えた。
「こっちに引っ張って、数が多いと面倒だ」
「あたし一人なら……殲滅できるけど!」
「こっちに引っ張れ!」
ロゼは少し不満そうな顔を見せて、僕の言うとおり広場から離れたエリアに敵を誘導した。
オーガという種族は、幸い知能が低いのか仲間を呼ぶことなくまっすぐ追いかけてくる。
それを利用して、絡んだ敵だけを各個撃破すればいい。
僕の得意魔法『眠り霧』で敵を眠らせれば、後は難なくロゼが倒した。
敵の強さもそこまで強くはない。
「なんとか倒したけど……」
「う~、残念!鍵を落とさないわね」
「ロゼ、そのまえに言うことあるだろ」
「な、なによ。さあ行くわよ!このクエも、時間制限あるんだから」
ロゼがなぜか急ぐように先に進もうとした。
「ロゼ、『透明』!」
「わかっているわよ」
ロゼがレヴェラッソで盗賊になっていた。




