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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
一話:とある少女がいきなり現れた時の件
14/122

014

リアルに戻った僕は、映像で見た場所に来ているわけだ。

その映像を見て、僕は叫びたくなった。


「海かよっ!」

学校帰りに、僕は工場が立ち並ぶ海の港に来ていた。

遠くで工業用のクレーンがせわしなく動いていた。

僕の隣には、アバター幽霊のロゼがとなりで海を眺めていた。


映像の中身はずっと海だった。画像的にはゲームよりもリアルの海だ。

青い海がどこまでも広がっていた。

だけど、ここは夕日だ。おまけに港で対岸には工場らしきものが見える。

近くのベンチに座っては、僕は頭を抱えていた。


「ううん、こんな汚い海じゃないわ」

「悪かったね、千葉の海が汚くて」

不満そうな顔で、東京湾の海を眺めていた。


昨日の夜中、採集をやっていてかなり眠い。

連夜の寝不足で、目の下にクマも出来ていた。

その眠さが、夕日が沈む海岸を見てさらに眠気が増していた。


「じゃあ、あの画像を見てどうすればいいんだよ!」

「知らないわよ。知らないけど、こんな海に来たことはないの」

「へいへい、そうですか」

傍から見ると、独り言を言っているだけなんだよな。

夕日の海を見ながら、僕は何をしているんだろう。

秋の風が少し冷たく感じた。


「まあ、あの画像に出ていた海は、かなり綺麗だよな」

「うん、なんだか大きな海を思い出すの」

「曖昧だな……ほぼ収穫はなしか。あの海は、九十九里の方なのだろうか?」

「知らないわよ、そんなところ」半分投げやりにロゼが答えた。

「だあっ、お前のためだろ。これ!お前も少しは考えろ、思い出せよ!」

「わかっているわよ」

「じゃあ、後は海でなにか思い出すことって……」

「思い出せたら……まって」

「どうした?」

「なにか見落としていることがあるような気がするの」

「何かって、なんだよ?」

「わかるわけないじゃない!」

開き直るのが早すぎだろ、ロゼ。

幽霊のロゼも、僕の隣でじっと海を眺めていた。


「ねえ、他にもクエストあるのかな?」

「あるんじゃないのか?

海のヒントだけで探していたらそれこそ日本一周……いや海外って可能性もあるか。

いったい何年かかることやら、日本の海岸だって数百はあるだろう」

「そうね、それもそうね」

そんな時、僕はスマホの時間を見てベンチから立ち上がった。


「じゃあ、また頑張りましょ。それまであたしは、あんたに厄介になるから」

「おいおい……そろそろ家に帰ってバイトに行かないと」

「あたしもついていくんだから」

なぜかそこで僕に抱きついてきた、幽霊アバターのロゼだった。

だけど彼女のぬくもりも、手も感じられない。

それでも不意に見せる彼女の笑顔が、夕日と重なって可愛らしく見えたのだ。



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