初日
そして次の日から。
『塾』の活動は開始された。
ふたりの前に、木剣を一本肩に担いだ状態のプリムティスが立ち、声を張る。
「まず、ちゃんと依頼を受けるために、二人にはGランク……つまり鉄等級を目指してもらうわ。そのためには、同等ランクの技能資格を取る必要があるのだけど……」
プリムティスは、ドレスの襟元に何枚も付けられていた勲章のようなものを外し、二人にバラリと見せる。
【戦士技能資格・金等級:Ⅰ】
【賢者技能資格・金等級:Ⅲ】
【錬気士技能資格・銀等級:A】
【神官技能資格・銅等級:C】
【体術士技能資格・鉄等級:G】
【斥候技能資格・木等級:△】
【野伏技能資格・木等級:△】
「私の資格証だとこんな感じね」
その資格証の多さに2人は驚いた。
「こ、こんなに……?」
「でもこの中で、冒険者のランクとして基準になるのは一番高い戦士だけよ。2番目の賢者資格も、一応ほんの少しは留意される、って感じね」
それにシエナが理解を示す。
「じゃあ、わたしは戦士技能資格のGを取得すれば良いわけだね?」
「そう。そっちのあんたは……」
「魔術技能資格……ですよね、勇者様♪」
「ええ。……ちなみにだけど、アンタはどこでその資格取ったわけ? 若いわよね、まだ……? 人間族でしょ、だって?」
「魔法都市のシディル魔法図書館です」
「魔法都市、って北方地方のアランガル魔法国にある『王都ヴァルミリア』の事?」
「はい。そのヴァルミリアにある魔法図書館で技能試験をしていますから。木等級の△まででしたら、簡単な筆記問題と、実技で通ります」
「カンタン……?」
ハルハはさらりと言ったが、プリムティスには驚きでしかなかった。
プリムティスに魔法は使えない。だからあまり詳しくは無いのだけど、世間一般の認識として、魔法は魔力の一粒である魔力子を生成できるようになるまでに何十年もかかると言われている。
そもそも、精神エネルギーである魔気を扱えるようにするだけでも、相当な修練と研鑽が必要だ。
だって、肉体と違って精神は目に見えず触ることもできない。
そんなものを鍛えたり、動かしたりしようなんて、考えただけで難関なのは明白だ。
当のプリムティスだって、神官の技能を使うために魔気を制御できるようにするのに15年は要している。
だから冒険者の魔法使いで、かなりの才能があるだろうとするものでも25歳前後であることが多い。
普通はもっと、中年くらいの術師になる。
それでも、魔術を幾つか使える、という程度で2,3発も撃てば魔気が尽きてただの木偶の坊に成り下がる。
なのに、ハルハはどう見ても十代の少女なのだ。
プリムティスは気を取り直す。
そして、ハルハを咎める。
「――って、勇者様っていうのは辞めてよね」
「うーん、では、プリムさまで、良いですか?」
「そうね、そっちの方がまだ良いわ」
「所で、プリムティス様」
シエナが手をあげる。
「何、シエナ」
「プリムティス様が使っていた……あの光は? 魔術とは違うの?」
「光? 天恵のこと? それとも、コレ?」
プリムティスは、木剣を左手に持ち替え、右の拳に戦気と神力を宿す。
光り輝く拳。
それは、10年前に巨人を屠り、洞窟の中で食人鬼を亡き者にした力に他ならない。
ハルハが飽きれて口を挟む。
「――魔術なわけないでしょ。世界から選ばれた一部のものにしか使えない力よ。エルフには、神官が居ないんですか?」
「居るさ。でも、私の村にはいなかったからね……」
プリムティスは、作り出した力を解除しつつ。
「これは、練気技術の一つの『戦気』と、天恵という世界を願いによって改変する力――『神力』を合成して作った……まぁ、私の切り札よ」
つまり。
魔術は才能と努力の結晶。
天恵は幸運と修行の成果。
――というわけなのである。




