20話 新たな始まり
朝の教室は、いつも通りのざわめきに包まれていた。
「昨日の演習さー」
「戦えるのかよアレ」
「先生ガチ焦りしてたよな」
話題はすでに軽い。
昨日の出来事は、“ちょっとした珍事”として処理されつつあった。
教室の扉が開く。
「おはよう」
ユウリが、いつも通りに入ってくる。
――その瞬間は、誰も気づかなかった。
「……ん?」
前の席の生徒が、首を傾げる。
「なあ、今……」
次の瞬間、教室の空気が止まった。
「――え?」
ユウリの肩。
そこに、小さな影がある。
ふさふさの尻尾が、ゆらりと揺れた。
「……ピ」
欠伸。
完全にくつろいでいる。
「ちょ、待て待て待て!!」
「それ、昨日のやつ!?」
「連れてきていいの!?」
一斉に声が上がる。
リナは、目を丸くしてユウリを見た。
「えっ……えっ!?」
「昨日の子……だよね!? 可愛い……!」
その言葉に反応したのか、
小動物――ピクルはゆっくりと顔を上げ、リナを見る。
「ピ?」
そして、また丸くなった。
「……何この子」
リナは呆然と呟く。
「昨日より、安定してる気がするんだけど……」
ユウリは少し困ったように笑った。
「……どうやって解除するんだっけ?」
それが一番、異常だった――
ざわついていた教室は、担任の入室と同時に静まった。
「では、朝のホームルームを始める」
いつもと変わらない声音。
だが、教師の視線は――一瞬だけ、ユウリの肩で止まった。
ピクルは気にせず、丸くなっている。
(……連れてきた、か)
内心で息を整える。
規則上、顕現体の常時帯同は推奨されていない。
だが――この場合、注意の仕方を間違えれば、場が壊れる。
「昨日の演習についてだが」
教師は黒板に視線を向けたまま、続ける。
「不用意な魔力出力の増大は、危険を伴う。
結果がどうであれ、手順と安全意識を――」
言葉を選んでいるのが、誰の目にも分かった。
教室の空気が、少しだけ張り詰める。
その時。
「先生」
ユウリが、手を挙げた。
「……なんだ、カミナギ」
「この子、連れてきちゃダメでしたか?」
教室中の視線が、一斉に集まる。
ピクルは、ちょうどそのタイミングで顔を上げた。
「ピ?」
教師は、一拍、言葉を失った。
(“この子”……)
それは、昨日あれほどの魔力を引き出した存在に向ける呼び方ではない。
だが、ユウリの声音には、微塵の迷いもなかった。
「……規則上は、顕現体は管理下に置くことが望ましい」
慎重に言葉を選ぶ。
「だが、今回は――」
そこまで言って、教師は口を閉ざした。
何をもって“管理”と呼ぶのか。
この顕現体に、それが通じるのか。
ユウリは、少し首を傾げる。
「大丈夫です」
即答だった。
「この子は、危ないことしません」
教室が静まり返る。
「それに――」
ユウリは、肩の上のピクルをちらりと見て、微笑んだ。
「一緒に戦うって、約束したので」
その瞬間。
ピクルが、小さく尻尾を振った。
「……ピ」
教師は、何も言えなくなった。
魔力解析も。
理論も。
危険性評価も。
そのどれよりも先に――
この顕現体は、ユウリを信じている。
そして、何より厄介なのは。
(……この生徒も、疑っていない)
(――だからこそ、最も危険だ)
全力で。
迷いなく。
当たり前のように。
「……分かった」
教師は、ようやくそう告げた。
「今回は、黙認する。ただし――」
「暴走したら、手段は選ばない」
「はい!」
ユウリの返事は、やけに明るかった。
ピクルは、満足そうに目を閉じる。
教室の空気は、完全に日常へと戻っていった。
――教師一人を、置き去りにして。
ホームルームが終わると同時に、教室は一気にざわめいた。
「なあなあ、ユウリ」
「それ、昨日のやつだよな?」
机を寄せる音。
覗き込む顔。
「うん。ピクル」
「ピ!」
呼ばれた瞬間、ピクルは尻尾をぴんと立てた。
「名前ついてんの!?」
「ペットじゃん!」
「ペットじゃないよ」
ユウリは即座に否定する。
その声には、少しだけ強さがあった。
「相棒」
一瞬、間が空いた。
ピクルはユウリの肩から机の上へ跳び、筆記用具をじっと見つめる。
「……あ、それはダメ」
指で軽く制すると、ピクルは素直に座り直した。
「言うこと聞くんだ……」
「昨日のアレからは想像つかないな」
リナがくすっと笑う。
「でも、かわいいよね」
「だろ?」
ユウリは、ちょっとだけ誇らしげだった。
ピクルは机の上で丸くなり、ユウリの手振りや動きに合わせて首を傾げる。
「ピ?」
「あとで遊んでやるからな」
そのやり取りが、あまりにも自然で。
誰かがぽつりと漏らした。
「……ほんとに降霊術?」
ユウリは、少し考えてから答えた。
「降霊術だと思う」
「思う、ってなんだよ」
「でも」
ユウリは、ピクルをそっと撫でる。
「間違いなく、ここに存在してる」
ピクルは、喉を鳴らすような音を立てた。
「私にも触らせてよ」
「はーい、順番です!一列に並んで!」「ガルド勝手に仕切るな」
「ねえねえ、ユウリくん……私もよければ触りたいのだけど」
「あーっ、ずるいぞアイリス!私も触る!」
――
教室の喧騒の中で、
その小さな顕現体は、完全に“居場所”を得ていた。
◇
午後の演習場は、授業ほど張り詰めてはいない。
各自が自由に基礎術式を流し、顕現の安定を見る時間だ。
「今日は各自、規格アバターの出力確認だ」
担当教員が軽く手を叩いた。
「無理に最大出力を狙うな。まずは維持を優先しろ」
生徒たちは、それぞれ散っていく。
すでに何人かは術式を展開し始めていた。
兵装付きの規格アバター。
――だが。
どれも出力は絞られている。
外殻は薄く、光もやや淡い。
フルスペックには程遠い。
それが、この学年の“現実”だった。
「くそ……また崩れた」
半透明のアサルトが、途中で霧散する。
「マナ足りねぇ……!」
別の生徒は、顕現した瞬間に膝をついた。
維持だけで、息が上がっている。
必死だ。
誰もが、まだ“扱われている側”だった。
その中で――
「……ふぅ……」
一人だけ、呼吸が乱れていない生徒がいた。
リナ・ミツルギ。
淡い髪を揺らしながら、静かに霊触媒を構える。
魔法陣が、迷いなく展開された。
次の瞬間。
柔らかな光が満ちる。
支援型
――濃い。
外殻の密度が、明らかに周囲と違う。
結界層は均一。
魔力の脈動も乱れない。
出力、ほぼ最大域。
「……またミツルギかよ」
「安定率バグってるだろ……」
小さなざわめき。
一年。
列島仕込みの降霊技術。
このクラスで、明確に一段上にいる。
リナが軽く指を動かす。
ガーディアンが、誤差なく結界を展開。
遅延なし。
揺れなし。
教科書通りの理想挙動。
(……悪くない)
内心で小さく頷く。
その少し離れた場所。
「っ……まだ重いな……!」
ラグナが歯を食いしばる。
強襲型
外殻は十分な厚み。
だが――
維持に明確な負荷がかかっている。
踏み込むたび、わずかに魔力が乱れる。
実戦投入は可能。
しかし、余裕はない。
“優秀な学生”の上限値。
ガルドのアバターは、さらに顕著だった。
外殻が、時折ぶれる。
「おい、また揺れてるぞ!」
「分かってるっての……!」
出力は出ている。
だが、安定が追いついていない。
これが、クラス上位と中位の差。
その時。
空気が、わずかに引き締まった。
演習場の奥。
エルヴィンが、静かに霊触媒を掲げる。
収束。
圧縮。
解放。
砲撃型
――重い。
増幅輪の密度が、明らかに違う。
出力制限なし。
最大維持。
「……うそだろ」
誰かが、小さく呟いた。
この学年で。
フルスペックを常時維持できる者は――
二人しかいない。
リナと、エルヴィン。
その一方で。
少し外れた位置。
ユウリは、静かに立っていた。
肩の上。
小さな体が、のんびりと尻尾を揺らす。
「出る?」
「ピ」
いつも通りの調子。
ユウリは魔力を流す。
ゆっくりと。
自然に。
ピクルの魂と重ねる。
——イメージする。
術師と顕現体が並んで戦う光景を。
軽く、駆け出す。
後ろをついてくる。
――ぴたり、と。
まるで影のように。
加速。
急停止。
完全同期。
(……え?)
最初に気づいたのは――
リナだった。
(……今の……)
ほんの一瞬。
ピクルの動きが、ユウリより“先”に出た。
誤差未満。
だが――
見逃せないズレ。
視線を落とす。
ピクルは、ただ主を見上げている。
いつもの、のんびりした顔。
——なのに。
少し離れた場所で。
成功していたはずの生徒が、教員に止められる。
「出力過多だ。安定率が落ちている」
「……はい」
悔しそうに歯を噛みしめる。
その横で。
ユウリは、ただ静かに立っていた。
教員が、ゆっくり歩み寄る。
端末を一瞥し。
眉が、わずかに動いた。
「……ユウリ・カミナギ」
「はい」
「制御値、昨日より安定しているな」
「え?」
「自覚はないか」
「……はい」
即答だった。
教員は、ピクルを見る。
次に、ユウリを見る。
「その顕現体……制御できているか?」
「ピクルです」
「ああ、そうだったな」
「この子は、ちゃんと聞いてくれますよ」
嘘ではない。
少なくとも、ユウリの感覚では。
教員は一拍置き、端末に記録を打ち込む。
「評価、上げておく」
「……え?」
「数値上は、お前が一番安定している」
淡々とした声。
だが――
わずかな違和感が残る
教員が去った瞬間。
周囲がざわついた。
「なにそれ……」
「でも戦えるのか?」
「ズルくね?」
不満と困惑。
混ざった空気。
ユウリは、困ったように笑う。
「俺も、よく分からない」
ピクルは、くるりと体勢を変え、
ユウリの首元に顔を埋めた。
「ピ」
――安心しろ。
そんな声が、聞こえた気がした。
演習場では、今も誰かが必死にアバターを維持している。
汗を流し、
歯を食いしばり、
何度も失敗しながら。
その中で。
ユウリとピクルの周囲だけが、
奇妙なほど――
穏やかだった。
◇
放課後の演習場は、ひどく静かだった。
昼間の喧騒が嘘みたいに消え、
砂地には、夕陽だけが長い影を落としている。
遠くで鐘が鳴る。
乾いた音が、空気の奥に溶けていった。
ユウリは、フェンスのそばに腰を下ろしていた。
背中を金網にもたせ、
ぼんやりと空を見上げている。
隣では、ピクルが丸くなって欠伸をしていた。
「……なあ、ピクル」
小さく呼びかける。
「ピ?」
首をかしげる仕草。
ユウリは、流れる雲を目で追いながら言った。
「今日さ……みんな、必死だったよな」
脳裏に浮かぶ、仲間たちの姿。
汗に濡れた顔。
荒い呼吸。
何度も立ち上がる背中。
自然と、胸の奥が熱くなる。
「なのにさ……」
言葉が、途中で止まる。
視線が、足元に落ちた。
指先で、砂をすくい上げては、零す。
「……みんな頑張ってるのに、俺だけズルしてるみたいで」
ぽつり。
吐く息と一緒に、こぼれた。
ピクルは、じっとユウリを見つめていた。
「ピ……」
「俺、何もしてないのにさ」
苦笑する。
だが、すぐに消えた。
「ただ……一緒にいるだけで」
「それで“凄い”って言われるの……正直、怖いんだ」
風が吹く。
草が揺れ、砂がさらりと流れる。
しばらく、誰も何も言わなかった。
その沈黙を破ったのは、ピクルだった。
のそのそと立ち上がり、
ユウリの膝を踏み台にして登ってくる。
「……お、おい」
小さな体が、胸元にぶつかる。
こつん、と鈍い音。
「ピ」
短く、はっきり。
ユウリは、思わず息を止めた。
「……慰めてるのか?」
返事はない。
ただ、ぴったりと寄り添ってくる。
その瞬間。
胸元の御守りが、かすかに熱を帯びた。
ほんの一瞬。
だが、確かに。
「……変だよな」
ユウリは、小さく笑った。
指で、ピクルの頭をなぞる。
「慰められてるの、俺のほうなのに」
その時――
「なに一人で黄昏れてんの?」
背後から、軽い声。
「うわっ!?」
思わず振り向く。
そこにいたのは、夕焼けを背負ったリナだった。
腕を組み、にやりと笑っている。
「……で?」
一歩、近づく。
「何、悩んでたの?」
ユウリは、少し迷ってから、
視線を逸らしつつ答えた。
「……ズルしてる気がして」
リナは、すぐには返さなかった。
しばらく、二人と一匹を見比べる。
リナは、少し迷ったように視線を泳がせてから、
意を決したように口を開いた。
「……ねえ」
「ひとつ、聞いていい?」
「うん」
「その子――」
顎で、ピクルを示す。
「どうやって作ったの?」
「作った、っていうか……」
ユウリは少し考えてから、言葉を探した。
「たぶんさ」
「ピクルの魂って、そんなに強くないんだと思う」
「……強くない?」
「うん」
リナは、思わず眉をひそめる。
降霊術において、“魂の強度”は絶対指標では無い。
魂の強弱もなければ、個性も無い。
――少なくとも、学院ではそう教えられている。
「学院で習う降霊術ってさ」
ユウリは、続ける。
「規格アバターに、魂を降ろすだろ?」
「器を先に作って、そこに当てはめる感じ」
「……うん」
それは常識だった。
「でも、ピクルは――逆なんだ」
「逆?」
「先に、声が聞こえた」
ユウリは、胸元に手を当てる。
「……私は、こうありたいって」
リナは、息を呑んだ。
「魂の……声?」
「たぶんね」
「昔から、聞こえるんだ」
苦笑する。
「でも……すごく、はっきりしててさ」
「だから、その形にしただけ」
「……この姿に?」
「うん」
ピクルは、何も知らずに欠伸している。
「もちろん」
ユウリは、視線を落とす。
「それだけじゃないんだけど」
「説明すると、長くなる」
「……でも、そういう感じ」
沈黙。
リナは、完全に思考モードに入っていた。
「……待って」
「じゃあさ」
「制御術式は?」
「まるで生きてるみたいじゃない?」
制御・安定・遮断。
基本中の基本だ。
「……入ってない」
「は?」
一拍。
「……え?」
理解が追いつかない。
「……らしい。アンディがそう言ってた」
あまりにもさらっと言う。
「え、ちょっと待って」
「じゃあどうやって……」
「自律してるのかな」
「ぇえ!?」
思わず声が裏返る。
「かなって何よ!」
「だって、俺、ピクル以外顕現した事ないし……」
「まあ……確かに?」
「逆に、みんなはどうやって動かしてるんだ?」
リナは、頭を抱えた。
「習った通りよ、命令するの。普通はね」
「ノエルさんや、アシュトレイ様は命令だけじゃ無いのは確かだけど」
「暴走するよ普通!」
「だよね」
ユウリは頷く。
「だから、先生たち怖がってるんだと思う」
「……自覚あるんだ」
「まあな」
しばし、沈黙。
風が吹く。
夕焼けが、二人の影を伸ばす。
やがて、リナがぽつりと言った。
「……でもさ」
「――わかったんだ」
「え?」
「あの人も同じだった」
「子供の頃に見た降霊術師……」
「なに、それ」
「豹のようなアバターと、連携しながら魔獣を圧倒してたんだ」
「命令してる感じ、しなかった……」
「まるで、会話してるみたいで」
ピクルを見る。
「どういうこと?」
ユウリは、少し考えこむ。
その時――
「もう来ないと思ってたよ」
アンディが、フェンスにもたれて言った。
少し驚いたような顔。
それから、すぐにいつもの表情に戻る。
「……どうして……」
フェンス越しに、夕焼けが滲んでいた。
風に揺れる草の音が、かすかに耳に届く。
アンディは、腕を組んだまま、視線を逸らして言った。
「もう、ここでやる理由ないだろ」
「顕現も成功したし」
「評価もいいし」
「俺と違ってさ」
最後は、わざと軽く笑ってみせる。
だが、その声は、少しだけ乾いていた。
ユウリは、瞬きをする。
「……え?」
「いや」
アンディは肩をすくめる。
フェンスに寄りかかりながら、空を仰ぐ。
「だからさ」
「来なくなっても、不思議じゃない」
「目的、達成したんだから」
一瞬、沈黙。
風が吹き抜け、制服の裾を揺らした。
遠くで、鐘の音が鳴る。
「……違う」
ユウリが、ぽつりと呟いた。
視線は、まだ地面に落ちたまま。
「え?」
アンディが振り向く。
ユウリは、一度、息を吸ってから言った。
「一緒にやろうって――」
一拍、置く。
拳を、ぎゅっと握る。
「……言ったじゃないか」
アンディの表情が、固まる。
「最弱コンビで、って」
リナが、思わず息を呑んだ。
小さく、「……あ」と声が漏れる。
アンディは、しばらく黙り込んでいた。
視線を落とし、地面の小石をつま先で転がす。
やがて、苦笑した。
「……まだ覚えてたのかよ」
「当たり前だろ」
「それに、俺はまだ強くなったわけじゃない」
「……改めて聞くと、恥ずかしいや」
アンディは照れ隠しのように、頬をかく。
その肩に、ピクルが小さく鳴いた。
「ピィー」
ふわりと尻尾が揺れる。
まるで、背中を押すみたいに。
「それにさ」
ユウリは、顔を上げて続けた。
「目立たない方法、考えてくれるって言っただろ」
「……あ」
アンディは、一瞬、言葉に詰まる。
「うん……」
小さく呟く。
その瞳は、わずかに潤んでいた。
「……泣いてんのか?」
「ち、違うし!」
慌てて顔を背ける。
袖で、目元を乱暴に拭った。
「うるさい!」
「……それじゃあ、今日も始めるぞ!」
そう言って、アンディは大きく手を叩いた。
無理やり明るい声で。
「まずは演習場ダッシュから!」
「三セットな!」
「えぇ……」
ユウリが苦笑する。
その時――
「はいはい、青春ごっこはそこまで」
横から、呆れた声が飛んできた。
「……え?」
二人が振り向く。
そこにいたのは、腕を組んだリナだった。
「……最弱コンビ再結成、感動的でしたけど」
ちらりとアンディを見る。
「泣きそうになってた人が言うと、説得力あるわね」
「なっ!? なんで知ってるんだよ!」
「そりゃ横で見てたからね」
即答。
「全部」
アンディは、顔を真っ赤にする。
「最悪だ……」
リナはくすっと笑った。
それから、真面目な顔になる。
「でも」
「……良かった」
二人を見る。
「ユウリも」
「アンディも」
「これからも一緒だね」
夕焼けが、三人の影を長く伸ばしていた。
ピクルは、その真ん中で、満足そうに目を閉じていた。
「ピ……」




