↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔契約に縛られた異世界生活 第2幕(異世界生活編)  作者: 雨宮 白虎
第3章 トキザミの国(生活編)
36/160

068 院の外に出る理由を

 夕食を片付けたら就寝までは自由時間。

 まぁ自由と言っても出かける所がある訳でもないので、殆どはルームメイトと話し合いで終わる。

 特に、仲良し3人組は賑やかだ。何時もガールズトークに花盛りで楽しそう。時々騒がしいと思うが、幸いにも彼女達の部屋が奥の部屋で良かったよ。部屋割りをしたシスター達の慧眼恐るべし。

 どうでもいいのだが、前の世界の時に出来た女友達(恋人ではない)のセリフを思い出した。「女3人寄ればかしましい。4人寄ればやかましい」と。確かに色々と一歩手前だなと思う。



 何時もなら、ノブナガが稽古で体験した武勇伝、と言えば格好いいけど、要は何して遊んだかという話しを聞いていた。会話の時に悩まされていた多重放送の様な現象が解決しているのは、私達が言葉を覚えてきたという証明になった。

 しかし今日は違った。アリアから手渡された本を一所懸命に読んでいる。

 と、いうのは建前で、今はどうやってノブナガを院の外へ連れ出したら良いのか考えている最中だ。

 同じ部屋で会話が無いという空気はとても重いし居心地が悪い。しかし、一所懸命に本を読む姿というのは、静かにしていても何もおかしくない、そういう声を掛けにくい雰囲気を作り出している。

 もちろん、本を読む姿ははったりでは無くて、パララってめくっている程度だが、知らない文字があるかの確認している。

 できれば大雑把にどの様な物語なのか知りたい所だが、考え事をしながら物語をなぞるのは流石に無理が有った。

 やはり物語を愉しむならゆっくりと、じっくりと、読み進めるべきなのだろう。


 さて、ノブナガを『お手伝い』で院の外へ連れ出す。という計画は決まったが、問題はその動機付けだ。

 ノブナガの場合は兵士達との稽古が楽しいらしくて、院の外へはまったく興味を示していない。

 私とクレハは、今は本が読めれば十分なので別に欲しいものが無かった。

 つまり、今の環境を享受(きょうじゅ)しているので小遣いを求める必要が無いのだ。

 将来を考えれば、お金は有るに越した事は無いのだが、目標も無く貯金をするというのを子供に勧めるのはちょっと難しいかもしれない。

 それならば目的を考えよう。例えば、3人組の様にオシャレをしたいとしよう。この場合は男の子は問題外で、女の子のクレハが対象となる。しかし、ロッカーに収めているエプロンドレスを考えると、一張羅が欲しいというのは少々動機が弱い。


 普段は談笑しているからだろう。この沈黙に耐えかねてノブナガが口を開いた。

「その本は始めて見かけるね。どうしたの、またシスター・レミアから借りてきたのかな。本当にリトって本が好きだよね」

 本が好きか? と問われれば答えはノーだ。ドキュメンタリーやエッセイ、図鑑なら大歓迎だが、童話や物語には興味が無い。これは言葉を覚える為に必要だからであって、別に本の虫というつもりは無い。まぁ否定しても面倒だから本好きに思われても構わないけどさ。

 こんなくだらない事を考えている私に代わってクレハが返事をした。

「あのね~。この本は、アリアが持ってきてくれたの。『レミア』の『お手伝い』で持ってきてくれたんだよ~」

「だめだよ、クレハ。ちゃんと『シスター』って呼ばないと」

「今日はお休みの日だから『シスター』じゃなくて良いんだって。だからクレハの言う通り『レミア』で正しいよ」

「そうなんだ。今日はお休みだったんだ」

「そうだよ。外へ用事があったんだって。何処に行ったんだろうね。興味あるよね」

「駄目だよリト。人のプライバシーを覗く様の事は失礼だよ」

 (まっと)うな正論が返ってきた。

 この後、「修道院の外はどんな景色だろうね?」と続けるつもりだったけど、見事に当てが外れてしまった。折角、(ひらめ)いたのに、また考え直しだよ。残念・・・。


 少しの沈黙の後、クレハがノブナガへ口火を切った。

「あのね、あたしね、アリアにおくりもの、したいの。ねぇいっしょにしようよ」

「突然、どうしたんだいクレハ。アリアに贈り物って、何をしたいんだい」

 嗚呼、成る程、そういうことか。

「クレハはアリアにお礼がしたいんだと思う。ノブナガもそうだけど、僕達は修道院着てからずっとアリアのお世話になりっぱなしだったよね。だから、言葉じゃ無くって、贈り物でお礼をしたいんだと思う。僕も賛成だよ。是非お礼をしようよ」

「贈り物か。そうだね、ずっとお世話になってるから良い案だと思うけど、何を贈れば良いかな」

「その前に、ノブナガは『お手伝い』っていうの知ってるかな?」

「『お手伝い』って何? 何時もの仕事じゃ無いのかな」


 ノブナガに『お手伝い』という依頼がある事を説明して、お小遣いを貯めて贈り物を買おう、という提案を伝えた。


「成る程な、そういう方法があるのか。それなら俺も一緒にクレハに協力するよ」

 ここは「一緒にお礼をしよう」じゃないのか? とツッコミたかったけど、子供の言い方に難癖付ける方が野暮だ。それよりも稽古から気持ちが逸れた事が何より大きい。



「それじゃ、ノブナガには2つお願いがあるんだけど・・・良いかな?」

「なんだい。お願いって、俺に出来る事なんてあるかな」

「うん。1つ目は、当分の間は稽古を休んで欲しいんだ。『お手伝い』で貰えるお小遣いが分からないし、アリアへの贈り物が、いくらで買えるのかも分からない。それに何を贈れば喜んでくれるのか考えなくっちゃならないんだ。だから、いっぱい時間が掛かっちゃうと思うんだ」

「ん~、良く分からないけど、時間がかかるというのは分かった」


「それじゃ2つ目。これも大切な事なんだよ。稽古で使っている道具を、ハン・セルに()げて欲しいんだ。知ってると思うけど、あの2人は国を守った両親を誇りに思ってるし、親と同じ兵士になろうとがんぱっているんだよ。だから僕達も2人の力になってやりたいんだ」

「いやだよ! 俺の物は俺のだし、ハン・セルも道具持ってるから邪魔になるんじゃないかい!!」

 予想はしていたがノブナガは即答で拒否してきた。大事なおもちゃを人に明け渡すなんて出来るはずが無い。子供なら尚さらそういう気持ちになるだろう。それに突然に渡されたって邪魔になるというのも当然考えられる。

 しかしこの2つ目の願いの趣旨は、ハン・セルを応援する事じゃ無い。

 残念な事にノブナガは気付いていないが、彼らは兵士になる目標を邪魔されていると考えて(うと)んじている。狭い孤児院でギクシャクした人間関係は避けたいし、何か起これば子供の方が容赦ない事件となりかねない。それを危惧しているのだ。

 だからこそ、ここで「今まで迷惑かけてごめん」というイベントが欲しい。嫌われている自覚がないから、謝って、とお願いしても無理だし、余計に話しがこじれる。

 それに、言葉より物を渡した方がずっと「これからは稽古の邪魔をしない」という気持ちとして伝わるだろう。

 そういう小賢しい打算(ださん)がある。


「道具を部屋の隅っこでほったらかすのは可哀想だと思うんだ。道具だって使って欲しいって思うかもしれないよ。本当は使ってあげたいけど、僕はクレハの気持ちと同じで、早くアリアにお礼がしたいんだ。だから、しばらくは道具を使う事はできなくなると思う。ノブナガには悪いなって思ってる。でも道具も部屋の隅っこじゃ可哀想だから・・・それと、アリアの事が済んだら、次はノブナガに合った道具を手に入れよう。その分『お手伝い』が大変かもしれないかど、みんなでがんばろうよ」



「う~んと・・・そうだね。道具の気持ちになると、やっぱり使って欲しいって思ううだろうなぁ。分かったよ。もったいないけどリトの言う通りにするよ。だけどリトって難しい事を知ってるんだね」

「難しいかな? 難しいのかなぁ? お父さんが「道具は使って貰った方が喜ぶ」って聞いた事があったからかな」

「そうだ、リト達の親は凄腕の商人なんだった。それで物知りなのか」

 暫く考え込んだ後に、快いかどうかは分からないか、納得したと返事を貰えてホッとした。拒否された時はどうなるかと思ったけど、これで気まずい雰囲気名無くなれば万々歳だ。

「それで、クレハの為に協力する訳だけど、先ず何からした方がいいかな?」

 ・・・「クレハの為」?

 違うだろ。ここでは「アリアにお礼をする為に、みんなで力を合わせてがんばろう」と一致団結する場面じゃないのか?

 会話の流れでは別に変ではないけど、なんか他人任せな言い回しが気になる。それとも只の照れ隠しなのだろうか。たしかに私だったら「クレハの為に力を貸すんだ。俺の気持ちは関係ない」って誤魔化すだろうな。

 きっと考え過ぎなのだろう。もしそうだとしたら、どれだけ人を疑う癖が残ってるんだよ。と、罪悪感が重くのし掛かっている気分になった。自分が嫌いになる。



「アリアには内緒にしたいから、当然『お手伝い』についてはシスター・レミアへ相談しに行こう。ついでに贈り物についても相談しよう」

「良いのかい、話しちゃって。秘密にするんだろ」

「シスター・レミアならきっと分かってくれるよ。下手に隠し事するよりも「お礼したいけど、その日まで秘密にしてね」といえば、こういったサプライズ企画に協力してくれると思うんだ。だって乙女心に一番関心がありそうだもん」

「サブ・プライズ? なにそれ」

 ぶはっ。思わずふきそうになった。おいおい、聞き取りにくい言葉だと思うけど、世界経済を破綻しかけた物騒な言葉が出てくるとは想定だった。そんな物騒な言葉は勘弁してくれとツッコミをしたい気持ちをこらえて返答する。

「あ・・・、うん・・・。『突然に喜ばせる事』だったかな・・・。お客さんがそういう話ししてたの聞いたから・・・」

「そっか、ビックリさせて喜ばせる事なんだね。本当にリトって物知りだね」

 ・・・はぁ~危なかった。とっさにメフィスト設定の『商人の子供』で言い訳したけど、誤魔化せたみたいで良かった。

 子供の身の振り方ってかなり難しいなぁ。商人の手伝いをしてたから『ませた子供』という設定にした方が良いのかもしれないな。とか考える。


 それよりもシスター・レミアへの相談の仕方だ。どうしたら自然に振る舞えるのだろうか。

 少し早いが、藁布団に潜り込んで考える事にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。