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消えた木箱

 テーブルが突然振動し始めた!?


 ……え?

 あぁ……

 なんだ……

 電話がかかってきたのか……

 テーブルに置いてあるノドカのスマホの画面に、お義母さんの名前が表示されている。

 あぁ……

 ビクッとした姿をノドカに見られたかな?

 恥ずかしい……

 

「あ、お母さん? ……え? 木箱? さっきの? 送ってないよ? え? 送り状がないのに置き配されてるの?」


 あぁ……

 怖かった……

 タイミングが悪過ぎる……


「お義母さん、どうしたんだ?」


「あ……うん。お母さんが家に着いたら玄関前に木箱が置いてあったって」


「……え? 木箱? 隣の部屋の?」


 慌ててサンダルを履くと隣の部屋の扉を開ける。

 部屋の中に入るのは怖過ぎる……

 一歩も入らずに見……


 ……え?


「木箱が……ない……?」


 嘘だろ?

 二、三分前まではあったのに……

 それに壁が薄いから隣に誰かが入れば音がするはず……

 ってそうじゃないだろ!?

 お義母さんの家は二つ隣の駅にあるんだぞ?

 誰がどうやって運べるっていうんだ……

 あり得ないだろ……


「あの……何してるんですか?」


 二部屋隣の長谷川さん!?

 あ……

 しまった……

 勝手に隣の部屋の扉を開けたのを見られた……

 説明しないと!

 でも、何て……?


「あの……木箱が……」


「……え? 木箱?」


「お隣さんが木箱を……荷物があるのに鍵を開けっ放しで出掛けて……」


 しまった……

 泥棒みたいに聞こえたかな?


「……木箱」


 ……?

 長谷川さんが真顔になった?

 この感じ……

 木箱の存在を知ってるのか?


「……あの……長谷川さん?」


「あ……いや……」


 何かをごまかそうとしてるように見える……


「知ってる事があるなら教えてください! 変に思われるかもしれないですけど……妻には見えない木箱が俺と義母にだけ見えて……二、三分前までこの部屋にあった木箱が義母の家に置き配されてるって電話が!」


「……それで? 今、木箱はお隣の室内に?」


 信じてくれてるみたいに見えるけど……

 こんな話、普通は信じないよな……?

 

「……え? あ……ない……です。あの……こんな話……信じてくれるんですか?」


「……都市伝説……知らないんですね」


「都市伝説?」


「血が乾いたようなシミがある木箱の話……ですよ」


「血が乾いたような? それです! 俺が見たのは! 隣の女が『前任者が』とか『あなたは救世主だ』とか言って押し付けようとして!」


「その木箱が義理の母親の家に?」


「……はい」


「お義母さんに今すぐ電話してください! 絶対に家に入れてはダメだと!」


「……え?」


「木箱を自ら家に入れると災いが起こると言われているんです!」


「……え? 災いって?」


「いいから早く!」


「あ……はい。妻がまだ電話してるはずですから……」



「あはは! 都市伝説だって! 木箱を家に入れたら災いが起こるらしいよ?」


 家に戻ると外での話が聞こえていたノドカがバカにしたように笑いながら電話している。


 さっきの長谷川さん……

 様子がおかしかったよな……


「……え? もう家に入れちゃった? すごく重かった? あはは! タカちゃん、もう家に入れちゃったって」


「……え? ……あぁ……」


 確かに……

 長谷川さんには悪いけど、都市伝説とか言われるとな……


「田村さん……すみません。玄関前にいるんですけど、全部聞こえて……」


 え!?

 扉の外から長谷川さんが気まずそうな声で話しかけてきた!?


「あ……すみません……すみません……」


 扉を開けると何度も頭を下げる。

 はぁ……

 夜の音を聞かれただけでも気まずいのに……


「あぁ……いえ。それより絶対に木箱を開けたらダメだと伝えてください」


「……え?」


 ……?

 木箱をよく知ってるみたいに感じる……?


「あはは! お母さん。都市伝説でね、絶対に木箱を開けたらダメだって」


 うわ……

 ノドカ……

 全部長谷川さんに聞こえてるのに……


「……おい。ノドカ! 失礼だからそれ以上笑うなよ……」


「だって都市伝説なんて……あはは!」


「ノドカ……」


「……はぁ。親切で教えたのに……」


 長谷川さんが怒ったようにため息をついている。


「あの……すみません……他にも何かあれば教えて欲しいんですけど……」


「……すみません。嫌ですね」


 うわ……

 完全に怒らせた……

 引っ越し決定だな……

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