39話 Prometerデビューへ。
夏休みに入って2週間目で麻人さんが復帰した。
僕はダンスとモデルの仕事を片付けて、吉川さん改め、RENと曲作りに追われた!
何せ、ファーストアルバムをファーストライブで売るために後3日で最低8曲作らなければならないのだ!6曲は何とかウオーキングマンに録音してあるから、後はRENにお任せ!
後2曲は盛り上がる曲がいいと、RENに意見されて、【DanceAgain】と【恋々と】を書いたらRENが作曲してくれた。
【DanceAgain】は激しいダンスナンバーで、カッコいい!
【恋々と】は歌い上げるのが難しいバラードになったが僕はとても好きになった。
ジンさんに聞かせるとその日の夜遅く東京郊外の音無市という山の中のレコーディングスタジオに連れて行かれ貫徹でレコーディング。RENは一発O.K.だったのに、僕は1曲につき17テイクとか、鬼か!? ジンさんは!
ちゃんと色気乗せて歌え!って、どういうこと?!疲れ切って息も絶え絶えに歌ったら「できるじゃねぇか!」とやっとO.K.が出た。
【DanceAgain】と【泣いてなんかいられない】はプロモーションビデオ撮影された。
【泣いてなんかいられない】は更に編曲されて、バラードになり、ノリさんが2曲とも、振り付けしてくれた。バックダンサーは、もともと所属してるお仕事が回ってこないレクタングルミュージックエンタテインメントのアイドルを引き抜いた。もちろんやったのはジンさんだ。
ネットでデビューライブの日を告知したら、音楽系の雑誌やらアイドル系の雑誌やら、ファッション誌、情報誌、女性週刊誌まで取材の依頼が目白押しでジンさんは、全部引き受けた。僕らは軽い地獄を見た。
特に2人で写真を撮影されるのが2人とも、照れくさくてジンさんに何度ゲンコツを喰らったかわからない。
ジンさんは、現場に出て来ることが無いらしく、TV局やラジオ局、雑誌の取材にまで着いてきたのは、僕等が初めてらしい。
あちこちでTVで観たことのある芸能人たちにサイン攻めに遭っていた。
「……ジンさんって有名人?」
「拓真は、知らないかぁ。【無限】のリーダーでリードボーカルだったんだよ。伝説だぜ!」
カンさんが僕が作った麻婆なすと青椒肉絲を食べながら言う。
ちなみに拓真は、僕の芸名。
「へえ、さぞかし美声だったんでしょうね」
「凄かった!…でもな、声帯に悪性のポリープが出来て、手術したから、もう二度とあの美声は聞けないんだよな」
思ってたより、ヘビーな過去に僕が聞いてしまって良かったのか、悩んでいると、カンさんは、僕の頭を撫でた。
「知らない人はいないくらい有名な話だから。むしろ知らなくて『歌って下さい』とか言われたら最悪だからな。いいんだよ」
確かに、そんなやらかしするなら、知っといた方がマシ!
「ありがとう!カンさん」
「んで?作詞10個出来たか?」
「はい!先生!」
差し出すとパラパラと目を通してカンさんが唸る。
「……うわぁ、拓真の作詞が大人っぽい件について」
「ジンさんからその路線で行けって、指示がありました」
「ふーん。これと、これは内容が被るから、ダメだな。あと、これは、ちゃんとしたサビが欲しい。ビビッと来ない。あと・・・」
リテイクの山が出来た。が、カンさんが付きっきりでダメな時は教えてくれたので、何とか3日で冬休みに発売するアルバムの作詞は出来た。問題は作曲。
【クリスマスツリー】は何となく、決まっていて教会の鐘の音をイントロ部分に入れた。
その他の曲はサビだけ出来てたり、最後の盛り上がりに欠けたり、いろいろだ。
RENと話し合って盛ったり、無くしたり、長くしたり、5日かかって出来た12曲をジンさんに提出して、僕らはその日、初ステージへ。
ステージに上がると、左手の階段上のベンチに派手なウチワを持った老夫婦と幼児2人が座っている。
「「たっくん、れんちゃん!がんばってー!」」
やる気がたぎる!真琴、たっくん頑張る!
その日のダンスはキレッキレで踊れたし、真琴がいるかと思うと緊張も吹っ飛んで行った。コンサートが終わった後の握手会にも来た真琴をハグして囁く。
「9月に帰るからね」
嬉しそうな真琴に手を振り、次に並んでるリンゴくんと握手頭を撫でたら首をすくめてた。
その日は夜中から、ポル ジーアのレコーディングスタジオで缶詰めになり、朝まで帰らせてもらえなかった。
それから9月までの数日間、寝るヒマ無いほど真っ黒のスケジュール帳の予定を何とか無事にこなした。渡会さん、ありがとう!神!
9月、やっとこさ、家に帰ると早速お弁当を作る。なんか、ホッとした。
由美さんにサインを求められ照れながら書けば、おひねりを貰った。500円だったから受け取った。
さあ、今日はお給料日。
由美さんに30万両(円)支払う。
由美さんは嬉しそうに受け取り、今日は焼き肉だー!と叫びながら帰った。
ちなみに、梶さんとジェルミさんには契約で1年分前払いしてるのでホントはあげなくていいのだが、お菓子作りも手伝ってくれてるし、夏休み中は真琴とリンゴくんのお世話も任せたし、ボーナスという形で50万両(円)渡した。
2人は、喜んでお昼の仕入れの時間にいろんな嗜好品を買って来てた。
主に酒とお摘まみ。
真琴が寝てからリビングで酒盛りしてた。
翌朝、リビングをファブって換気し、酒の匂いを追い出した。ジェルミさんは超絶酒臭くて保育園には僕が着いていきミミ先生に真琴を引き渡した。
大学への配達も梶さんに運転してもらって行き、帰りに仕入れして家に帰るとジェルミさんが洗濯物を干してくれてた。ありがたい!
お昼は2人とも、食べたくないと言ったので梅干しを乗せたとろろ昆布のお茶漬けにしたら張り切って食べていた。アッサリが良かったみたい。好みで醤油を掛けて召し上がれ。
父さんが飲み過ぎた日の翌朝、母さんに食べさせられてたお茶漬け。手抜き料理だけど割と美味しかった!
保育園から帰って来た真琴は、僕に引っ付いて離れない。
寂しかったんだな。好きにさせていると、ジェルミさんが真琴に英語で何か言ったら真琴は渋々と僕から離れた。
RENから借りてる英語の聞き流しCDは聞いているがサッパリわからない。まだ、そんなに聞いてないからだと自分に言い聞かせポータブルCDラジカセを買い、仕事場でも流す。
すると翌日、洋楽が流れていた。梶さんの仕業らしい。歌詞を渡されて覚えて歌う。
アルバム1枚分覚えたら、違うアーティストの洋楽に。1週間でCD3枚分覚えた!発音がおかしかったら、梶さんが教えてくれた。
そして金曜日の昼からRENと東京で合流して歌番組の収録をハシゴ。【泣いてなんかいられない】がランキング系歌番組で7位になっててたまげていたら、渡会さんに「まだまだです」と喝をいれられた。
ステージ衣装は今の所キヨちゃんから借りてる。RENは自前のお出かけ着だそうな。
ひな壇でのんびり話していたら、司会のナモリさんに呼ばれていた。
慌ててひな壇を降りる。
『今週の1位DanceAgainのPrometerの2人です!』
え!?
「マジで?ドッキリとかじゃなくて!?」
『何だ?知らなかったの?拓真、RENも?』
「緊張するから、教えるな!ってマネージャーに言われたんです。私は知ってました」
ナニソレ?!ずるいよ!
『ところで何話してたの?』
「あー、衣装はどうしてるのかをRENに聞いてたら全部私服だって言うから、日常的にジャージの僕と違うな、って」
『そ、その顔にジャージは似合わなくない?!アハハハ』
ウケられた。




