36話 初舞台の日②
35話書き直しました。
あれだと皆さんやなヤツだったので。
もう一度よく考えました。
申し訳ありませんでした。
「僕たちにはいい経験になったと思う。謝ったりしなくていいからね!悪気は無いんだけどプロデュースが初めてだから、許して下さい!」
「はい、わざわざ曲を作ってくださったのに申し訳無かったです!」
「いいの、いいの。たまには、思い上がりを知ることも必要!実は朝方のステージでの練習を見てたジンさんがお二人を一組としてレクタングルミュージックエンタテインメントに招きたいと打診して来いと言われまして今来たんだけど、どうかな?」
「私も、ですか?」
驚く吉川さんに、彩さんが微笑む。
「うん。恋くんも。見た目ヨシ!技能ヨシ!編曲も出来る、尚更ヨシ!で一発O.K.だったの!……たっくんは、見た目ヨシ!で、意外と根性あったから取ってやる、くらいだけど、どうする?2人で話し合って見て」
僕はありがたいけど、吉川さんは医大に行ってるし、芸能活動なんかしないよね?
吉川さんは意外にも悩んでいるみたいで、1週間時間を下さいと彩さんに告げた。
「じゃ!2人でよく話し合って決めてね!」
彩さんが去った後の控え室で吉川さんが静かに口火を切った。
「私はもともと大勢の人の前で自分のピアノを披露するのが夢だった。……昨日は夢が叶って嬉しくって仕方なかった!私はこのまたとないチャンスに乗るよ!君はどうする?」
「僕は最初から決まってます!吉川さんよろしくお願いします」
僕らは握手を交わしたが、何でこんなにスンナリ決まるなら、何故、1週間時間を貰ったのだろう?
「吉川さん、何で1週間も時間貰ったんですか?」
吉川さんは、筆談で説明した。
兄と実家の事を話し合って収めてみる。それから大学も休学して来年までに身の振り方を考える。カメラがあるから口に出せない。
あ!そうだった!隠しカメラがあったんだっけ!
吉川さんは筆談した紙を自分のカバンに入れると口を開いた。
「何曲か作っておかないと根性あったから取ってやる、くらいだけど、なんて言わせないようにしないとね?編曲は手伝うから、書けるだけ作詞作曲して作曲はウオーキングマンに録音機能があるからソレ使って」
使い方をレクチャーしてもらって、早速作詞作曲作業を進める。
【凱歌】【勇気を下さい】【誕生日】【大切なこと】の4曲を作曲していると、途中で吉川さんが本番に呼ばれて行った。
何故か僕も一緒にゴー!
吉川さんは舞台袖に行くまでに銀のスパンコールのジャケットを着せられて舞台袖で待ってたオネエさんのスタイリストさんにササッとメイクされてそのまま、ステージへ。
僕は舞台袖で呼ばれるまで待つよう言われてボーッと、待ってたらピンマイクを取り付けられた。
ステージでは今朝出来たてのあの曲が演奏されて彩さんが僕を呼ぶ。
「たっくん作詞作曲、【泣いてなんかいられない】カモン!!たっくん!」
眩しいばかりのステージライトに焼かれながら、360度に展開する客席に向かって簡単なステップを踏みながら歌う。
【僕が開けた夢の扉は 開いたり閉じたり忙しいけど、あの子達と交わした未来への約束はちゃんとこの胸に残ってるから、僕は大丈夫♬さあ、扉を開けて一歩づつ前に進むよ!いつもの僕が好きと言ってくれたその言葉がガソリンになる♬泣いてなんかいられない!今日はきっと昨日よりいい日だから♬】
ピアノの演奏が終わると降るような拍手の雨。僕はお客様とアズール・クラーロの3人に一礼して袖に捌けた。
急にドキドキしてきて、床に座り込んだら、スタッフさんが肩を貸してくれて、控え室に戻れた。ペットボトルの水を渡されてありがたく受け取る。
「ありがとうございます」
「いえ!これからも頑張って下さい、たっくん!」
♢♢♢♢♢半日前のレクタングルミュージックエンタテインメント事務所
夢道館コンサートの一日目が無事終了したアズール・クラーロの3人は蛇に睨まれたカエルの如く応接室のソファーに緊張して座っていた。
「確かに、好きに活動しろとは、言ったが、【弟子をとるオーディション番組】って言うのは誰が考えた企画だ?ああん?!」
それなりのお値段のするローテーブルが平手で叩かれ一瞬浮く。
アズール・クラーロの3人は自分たちが叩かれたかの如く青くなって震えている。
観念したかのように、包帯を巻いた左手を挙手した麻人の襟首を俺は締め上げる。
「お偉くなったもんだな?!麻人。しかも作詞した物が良かったから、アズ・クラの楽曲にするだぁ?その作詞を出してみろ!」
「先日、MHKの【せかいのうた】に提供した【Blackstar】と今日発売した新曲【なみだ星】がそれです」
麻人を離してやるとヤツは咳き込んでいる。
「その企画はお蔵入りにしろ!あと、あの小僧には、それなりの礼はしたんだよな?曲作ってやるとか!」
カンが涙ぐみながら、震える声で報告した。
「ジンさんの言う通りにアップテンポのラップが入った曲を歌わせてみたんですが、なんかイメージと違ってて、ゲスト出演を断念しました」
「酷いことしやがって!何だかうまく行かなかったら俺のせいか。調子に乗りすぎだろう!矢田部!その企画の映像は?!」
「これです。あと、Mチューブで【たっくんモデル中】でいろんなアーティストの曲を歌ってます。ぜひ、目を通して差し上げて下さい。お願いします。社長」
朝までに、Mチューブの動画配信に目を通してカンの言う違和感の理由がわかった。
あんなに元気な小僧なのに歌うと色香漂うのだ。これではいくら歌が上手くても曲を選ぶだろう。
「商材としては、難しい、か。確かにモデル向きだな。本人に自覚が促されば。…歌が上手いだけの色気小僧をどうしてやろうか?」
矢田部は推してるみたいだから、商機アリ何だろうな。
実際、見てみるか。
「木元、出かけるぞ。夢道館だ!」
まだ、朝早いが練習したいなら、早めにステージに来るだろうと、今までの経験から見物に行けば、新人ピアニストの恋と練習している。伸びやかな歌声が自分へのエールを歌っている。声と歌だけ聞いたら青春って感じなんだが、小僧を目にして聞くと違和感がある。……無自覚のフェロモン恐るべし。
そこにカンと麻人が来た。
「済まなかったな。迂闊なこと言って」
「「いえいえ!ジンさんのせいじゃ無いです!俺(僕)達の技量が足りないせいです!」」
「あの小僧は、しばらく様子見だ。ヘンなフェロモン発しながら歌うような化け物はちゃんと考えたプロモーションしないと、歌が喰われる。お前らは手出しするな!叩かれないと成長しないだろうからな」
「「アドバイスありがとうございます!」」
「もう、ヘンなもん拾ってくんな!」
始末に負えないから。
♢♢♢♢♢ライブ2日目、終了後
今日は麻人さんの家にお泊まりです。
家庭料理が食べたいとのアズ・クラのお願いで、麻婆豆腐とホウレンソウの白和え、豚汁、そう、彩さんが豆腐をバカみたいに買ったからこのメニューなのだ。食べさせながら豆腐と鶏肉のミンチのつくねを焼いて甘辛いタレを絡めている僕。
食べ終わった吉川さんはお風呂に入っている。
麻婆豆腐が無くなったみたいだから、また作る。あんまり辛いとノドに悪いだろうから、甘めに作ってニラをドバッと入れる。
これで8皿目だよ?
ようやくお腹いっぱいになったのは食べ始めて2時間後の11:00だった。
慌てて真琴に電話をすると、寝ぼけてたが、喜んでくれた。
「今日はステージでお歌歌えたよ。ありがとう真琴が応援してくれたからだよ。待たせてごめんね、おやすみ」
『たっくん…だいす…き…』
寝息が聞こえて来たので通話を切る。
今日は前向きな一日だった!




