20話 門出の日①
ついに大貴兄たちがあちらのお国に行ってしまう。
日曜日の朝は、皆でささやかなお別れ会をして、学園都市の国際空港まで大貴兄の運転でドライブ。
「そういえば、ロビン=クリストファーとの契約したの?」
「した。内容は言えないが大きな契約だった!真琴、すぐ借りてるお金を返すからな」
「わかってる。しんぱいしてない。こうざにふりこんでね。たっくん、まだおかねいるから」
「任せろ!あちらのお国に着いたらすぐ、振り込む!」
国際空港で駐車場に車を停め、スーツケースを転がしてお土産売り場に移動。
手ぬぐいや扇子をまとめ買いしている大貴兄に真琴がふりかけとお菓子のグミと抹茶味のチョコレートの菓子を進めている。全部買う大貴兄。
僕とジェルミさんは、有名パティスリーの瓶詰めプリンを6つ買う。
デカいスーツケースに買い物を収めると搭乗手続きに大貴兄たちが向かう。
「「これ、たっくんにあげる!」」
寧々と凜々が、それぞれ手紙を自分のリュックから出して僕に差し出す。
「ありがとう。寧々、凜々。たくさん手紙書くね!」
二人をギュッと抱きしめると涙が出そうになった。大貴兄も目を潤ませて真琴から手紙を受け取っている。
大貴兄たちが乗る便の搭乗アナウンスが流れる。僕たちは急いで広い空港内を大人一人、子供を一人抱えて走った。
何とか間に合い、本当に3年間のお別れ。
真琴が泣き、僕が泣き、ジェルミさんが慰める。
「夏休みに会いに行けばいいネ!」
「ダメ、ぼくは、にほんからでられないの。でられたら、しんじゃうときだって、けいちゃんがいってた」
ちい兄が言ってたなら、ほんまもんだろう。
「お手紙いっぱい書いて送ろうね!」
「ん!いっぱい、かく!」
飛行機が飛び立つのを展望室から見て、帰宅。
奈良さんちにお土産のプリンを3つ、持って行くと、お孫さんの飛鳥ちゃんと遭遇。
「キャアアア!ガチでイケメン!!おじいちゃん!紹介して!紹介!!」
匡史さんは襟首を掴まれて揺さぶられている。由美さんはそれを見て苦笑しながら、飛鳥ちゃんを僕に紹介した。
僕は名前を知ってたが、この反応の女の子にちい兄そっくりのこの顔で下手な対応は出来ない。
ちい兄の黒歴史を踏襲しないぞ!
愛想なく受け答えして、すぐ自宅に帰った。
泣き疲れた真琴がリビングで大の字になって寝ている。枕元に座って寧々の手紙を読む。
「おてがみいっぱいかいてね?、……一行で終わりかよ!」
ちなみに凜々の手紙も一緒だった。僕の感動を返せ!
大貴兄が置いて行ったノートパソコンで大貴兄の新しいパソコンへとメールを送る。
到着後、連絡下さい。真琴も待ってるよ!
真琴の手紙は、いろいろ書いてあるはず。……多分。
初めて寧々と凜々と離れた真琴は、ぐずって何だかご機嫌斜め。
夕飯に天ぷらそばを作ると、やっとのことで機嫌がなおった。ちなみにジェルミさんは今日は休日なので、昼からお出かけして帰ってない。
洗濯物を片付けて、明日のお弁当に入れるプレーンマフィンを焼いていると、ジェルミさんが帰って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま、たっくん」
「もう夕飯食べた?また、天ぷらそばで悪いんだけど、作るよ!」
「お願いします。実は腹ペコだったんです」
「ちょっと待ってて!」
蕎麦を2束湯がいていると、真琴が近づいてきた。
「たっくん、ぼくもたべる!」
マジか。
「さっき食べたのに、お腹減ってるの?」
「うん!ちょっとでいいからたべたい!」
「わかった」
驚いたことに一束分、食べてしまった真琴をお風呂に入れて、プレーンマフィンを何とか200個分焼き終えると今日一日がやっと終わりを迎える。
僕の仕事が終わるまで待っていた真琴と一緒に布団に入り、やけに広々としたベッドで眠る。
2時間後、目覚まし時計のブザー音に起こされて慌てて目覚まし時計の音を止めた。
真琴は眠っている。
ホッとして部屋から出て着替えると、業務用台所に急いで向かう。
鍵は開いていて由美さんが先に来て副菜を作っていた。
「おはよう。たっくん。ご飯とりあえず2升炊いたわ。あと、鮭もグリルで焼いてるわ!それからジャガイモゆでといたわよ!」
「助かります!由美さん、ありがとうございます」
僕は衛生帽を被ってからコロコロを自分の服にかけて仕事を始めた。
まず、揚げ物から作る。揚げ物用の鍋に油を張り温める。トンカツと白身魚のフライとエビフライの衣を一息に付ける。由美さんが肉じゃがをガスコンロで煮ながら、揚げ物をしてくれる。50個づつ作ると竹輪の磯辺揚げの準備をして、コロッケとハンバーグを25個づつ作って揚げたり焼いたりする。
揚げ物は由美さんに任せて、サンドイッチを作る。ゆで卵を作って、殻を剥き包丁で縦半分に切り、ボウルに黄身だけを入れる。
黄身はヘラで粉々になるまで潰す。白身はみじん切りにして潰した黄身のボウルへ入れる。塩コショウをして全体を混ぜ、更にマヨネーズを滑らかになるまで混ぜる。
マヨネーズの量に注意する。混ぜすぎたらベチャベチャするのでサンドイッチに挟むと見映えが悪いし、食べ汚す。
だから、僕はちょっと固めのフィリングにする。マヨラーの大貴兄には不評だった。
キュウリは食パンの長さに合わせて縦に厚めにスライスする。
食パンはパンの耳を切り落としてサンドイッチ用にあらかじめスライスしておく。
片面にマーガリンを塗り、粒マスタードを薄く塗る。粒マスタードを塗った方にはキュウリとハムを載せ、マーガリンだけ塗ったもう片方の1枚には、卵のフィリングをパンを潰さないように塗る。合わせたら出来上がり。
お弁当に入る高さに切り分ける。
コンビニおにぎりは、作るのに慣れたがご飯が熱いのには慣れない。
「痛っ!あちち!熱いっ!熱いよ!」
「どれどれ、おばさんも手伝うわよ!」
ちなみに由美さんは熱さなど存在しないかのように、僕が1つ握る間に3つ握ってらっしゃいました。……負けた。
「経験の差よ!落ち込むな、たっくん!ご飯詰めてくわね!」
「お願いします!」
調理台と冷凍庫のふたを利用した台で並べられるお弁当の数は最大30個。
さっさと詰めてさっさと蓋をしてコンテナに入れなきゃいけない!…のだが、ご飯を冷まさないとお弁当が悪くなってしまう。
炊いてからおにぎり握って炊飯器のふたを開けっ放しだったから、ご飯は程よく冷めていた。
「冷めてると、ご飯詰めるのが大変、なのよね!」
そこは由美さんのスキルで頑張ってもらった。のり弁が1番大変だったらしい。文句言いながら詰めてた。
ご飯は温かいうちに詰めて冷めたら蓋をする。
きょうの副菜は、油あげと小松菜のお浸しと、ポテトサラダ、エノキとキュウリのナムルだ。ん?ここの空き地は何が入るの?
「あ、たっくん!おやつは?!」
忘れてた!
慌てて母屋のキッチンに取りに行くと真琴とジェルミさんが包装してた。
「おはよう!二人ともありがとう!おかずは何が良い?持って来るよ!」
「オー、トンカツがいいです!」
「真琴は?」
「ぼく、サンドイッチがいい!」
包装したプレーンマフィンを受け取って仕事場に行き、トンカツにレタスとキュウリとミニトマトを皿盛りして、サンドイッチも皿盛りして母屋に帰った。
真琴は荷物して、お着替えしていて、後はご飯を食べて車に乗るだけになってる。
「お利口さん」
頰に口づけると、真琴がきゃあきゃあ言ってハイテンションになった。
サンドイッチをテーブルの上に置くと、真琴はお腹が減ってるのか、パクパク食べ始める。
ジェルミさんが「任せて!」という。
ソッと、仕事場へと走った。
トンカツを切ったり、アルミカップに副菜を詰めるのが結構手間だ。キャベツをスライサーでおろして千切りにしたものを水に浸けてたのだが、ザルに上げてよく水切りして、盛り付け。そんなに盛らないが、野菜を食べさせたい親心(?)である。ミニトマトを1個づつ添えてメインを乗せる。後は副菜を入れて包装済みのおやつを入れたら完璧だ!
モノによってトンカツソースやタルタルソースの小袋を添えて蓋をする。ご飯の上に熨斗紙を掛けて割り箸をお弁当箱の横に添えて輪ゴムで留める。
熨斗紙もお弁当の種類ごとにメッセージを変えた。由美さんはこの趣向が、いたく気に入ったみたいで、写メを撮っていた。




