第8話
地下水道・通路
三人はマンホールから下へ飛び降り。しかし、目の前に広がる光景に、三人は思わず息をのんだ
陽太:「ここ、地下水道のはずだよな……なんで明かりがあるんだ?それに、道も綺麗に整備されてる……」
アストラ:「疑問は後だ。今はとにかく、マリーを見つけることが最優先だ!」
澪は二人の後ろを静かに追いかけながら、冷ややかな視線で周囲の構造を観察していた。
澪(心の声):「(マリーを探すことより……『王国の破壊』という陰謀を阻止することが最優先よ。この地下に何が隠されているのか、しっかりと調査しないと……)」
三人は広い通路をさらに奥へと進んでいく。しばらく歩いたところで、陽太がふと澪の方を振り向いた。
陽太:「なあ、エミナ……あんた、王国軍のことどう思う?」
澪は思いがけない質問に少し驚き、聞き返した。
澪:「え?急にどうして王国軍のことなんて聞くの?」
陽太は拳を強く握りしめ、悔しそうに歯を食いしばった。
陽太:「もしかして……マリーを連れ去ったのは、王国軍の奴らなんじゃないかって……」
澪は深く溜め息をつき、呆れたような視線を陽太に向けた。
澪:「はぁ……ねえ、あなたさっきあの廃屋で人の話を聞いていなかったの?」
陽太:「え……?」
澪:「あの冒険者は復讐のために王国を攻撃するって言っていたでしょ?王国軍が自分たち自身を攻撃するわけがないじゃない。」
陽太:「言……言われてみれば、そうだな……」
陽太は言葉に詰まり、決まり悪そうに頭をかいた。
アストラも振り返り、陽太に言った。
アストラ:「陽太、君は王国への敵意に囚われすぎだよ。それでは正しい判断が……」
——ズズズズズ……ッ!
話の途中で、突然地下通路全体が激しく揺れ始めた!
陽太:「な……なんだ!?地震か!?」
激しい揺れは数秒間続いた後、ピタリと収まった。
澪の胸に強い虫の知らせが走る。
澪(心の声):「(違う……何かの巨大な装置が起動したんだわ!)」
澪は鋭い眼光で叫んだ。
澪:「急いで!」
澪はすぐさま足を速め、前方へと駆け出した。
陽太:「えっ、待ってよエミナ!」
アストラと陽太も慌てて後を追った。
地下実験室
重厚な鉄扉の前まで走ってきた三人。アストラが力任せに扉を押し開けると、その室内の光景に全員がその場で凍りついた。
そこはまるで工場のようになった巨大な地下実験室だった。両側には無数の巨大なガラス製培養カプセルが立ち並び、怪しい液体の中に様々な人間や異形の生物が液体に浸されている。
アストラ:「ここは……一体何なんだ……!?」
澪は培養カプセルの間を通り抜けながら、中の生物や記録を注意深く観察した。
澪(心の声):「(このカプセルの中にいるもの……人というより、まるで魔物のような兵器だわ。自我を持たず、与えられた命令に従って動くだけ……でも、どうしてこんなものがここに……?)」
その時、部屋の奥へと走っていった陽太が大声で叫んだ。
陽太:「アストラ!早く来てくれ!」
アストラと澪が急いで駆けつけると、部屋の奥の手術台に大勢の人間が縛り付けられていた。無数のケーブルやチューブが彼らの身体から伸び、後ろの巨大な機械へと接続されている。
澪は一目でそれを見抜いた。それらの管は人間に魔力を送り込んでいるのではなく、彼らから魔力を吸い上げているのだと。
アストラ:「マリー!」
アストラはすぐさま駆け寄り、マリーの身体から電線をすべて取り外した。
マリーは弱々しいうめき声を上げ、ゆっくりと目を開けた。
マリー(かすれ声):「ここ……ここはどこ……?アストラ……」
アストラ:「もう大丈夫だ。」
アストラが優しく声をかけたその時、頭上から低くしゃがれた声が響き渡った。
???:「誰だ……私の邪魔をする奴は?だが、もう遅い!」
——ガシャン!バリバリッ!
周囲の培養カプセルが数個同時に破裂した!中の「人型魔物」たちが咆哮を上げ、アストラと陽太に向かって一直線に襲いかかってくる!
澪は素早く培養カプセルの陰に身を隠し、静かに戦況を見守った。
陽太:「来やがれ、この化け物ども!」
陽太は両手に濃密な魔力を集め、拳を叩きつけた。インパクトの瞬間に魔力が爆発し、魔物を力任せに吹き飛ばす!
同時に、アストラが腰の剣を抜き放ち、高らかに詠唱した。
アストラ:「——炎の舞!」
赤熱する烈火が剣身を包み込む。アストラは赤い光の筋と化し、疾風のような速さで魔物たちの攻撃をかわしながら、次々と正確に切り裂いていく!
陰から観察していた澪の瞳が、いっそう険しさを増した。
澪(心の声):「(息が合っている……それに魔法の威力もかなり高い。この者たちが成長すれば、将来必ず王国にとって巨大な脅威になる……でも、今の私は軽率には動けない……)」
短い戦闘が終わり、魔物たちが崩れ落ちたその時——
——グラグラグラッ!
先ほどよりもさらに激しい揺れが地下を襲った。
澪は陰から姿を現し、まだ手術台に縛られている意識不明の冒険者たちを見つめた。
澪:「アストラ、あなたたちは先にこの人たちを連れて脱出して。私は奥を調べてくるわ。」
アストラは焦って止めた。
アストラ:「危険すぎるよ!相手の実力も分かっていないんだ、今は全員で撤退するのが正解だ!」
澪はアストラを真っ直ぐ見つめ、静かな声で言った。
澪:「何かの機械がすでに起動したのよ。今放っておけば、取り返しのつかない危険が及ぶかもしれない。」
陽太が一歩前に出た。
陽太:「エミナ、ならせめて俺も一緒に行く!」
澪:「いいえ……」澪は首を振った。「アストラ一人じゃ、この倒れている人たちを全員連れ出すのは無理よ。」
アストラ:「でも……君一人で本当に大丈夫なのかい?」
澪は伏し目になり、床を見つめた。心の中では、すでに最悪の覚悟を決めている。
澪(心の声):「(大丈夫かなんて分からない……けれど、もし王国の存亡に関わる事態なら、たとえ死に向かう命令であっても、私は恐れず立ち向かわなければならない……!)」
澪は再び顔を上げ、アストラに向かって穏やかに微笑んだ。
澪:「平気よ。急いで。」
言い捨てるや否や、澪は背を向けて通路の奥へと疾走していった。
アストラと陽太は顔を見合わせ、深く頷くと、手術台の被害者たちの救出に取りかかった。
核心制御室
澪は通路を駆け抜け、突き当たりにある最後の巨大な扉の前へと辿り着いた。
鍵がかかっている……いや、扉全体に強力な防壁封印魔法が施されている!
時間がない。澪は腰の剣を抜き、鍵穴へと突き刺した。特殊な鞘と剣が、封印の魔力を一瞬で吸い尽くす。
——ドカンッ!
澪はそのまま重い鉄扉を蹴り破った!
部屋の中から、嘲るような感嘆の声が聞こえてくる。
???:「おや……そんなに乱暴にしなくてもいいじゃないか、冒険者のお嬢さん……」
澪は剣を鞘に収めながら、油断なく広大な室内を見渡した。
そこは蒸し暑く巨大な空洞だった。中央には小山ほどもある鋼鉄の機械が鎮座し、刺すような廃気を撒き散らしながら狂ったように稼働している。そして操作台の前には、高級な魔導服を身にまとった男
澪:「……そこで何をしているのか、教えてもらえるかしら?」
男は振り返り、両手を広げて狂信的な笑みを浮かべた。
男:「あの娘の仲間かい?あの娘の桁外れな魔力こそ、私がこの機械を起動させるための最高の鍵だったのだよ!」
男は大声で叫んだ。
男:「今日、歴史が変わる!大陸の誰もが、王国を討ち破った偉大な英雄——この私、アスワルドの名を刻むことになるのだ!」
アスワルドは自身の狂想に酔いしれ、ぶつぶつと独り言を呟き始めた。
澪は機械の中央で満たされ、禍々しい赤い光を放つエネルギーゲージを見つめ、脳内の情報を一瞬で繋ぎ合わせた。
澪(心の声・衝撃):「(中央区の地下水道……ここまでの距離と時間を計算すると……まさかこの機械は、あの噴水広場にあった『巨大砲台』の動力源……!?ゲージはすでに満タン……今まさに発射されようとしているの……!?)」
アスワルド:「これぞ私の完璧な計画だーーッ!」
高笑いが澪の思考を遮った。
澪は口元を少し引きつらせ、不快そうに男を睨みつけた。
澪:「はぁ?……。」
澪は柄に手をかけ、冷徹な視線を向けた。
澪:「あなたが何を企んでいようと、ここで阻止させてもらうわ!」
アスワルド:「阻止だと?王国が滅びることこそ、皆の望みではないのか!?」
アスワルドが激しく腕を振るった!
アスワルド:「——魔力深淵」
——シュバババッ!
黒い炎で形成された無数の刺が、澪を囲むように四方八方から襲いかかる!
澪は前方へ身を躍らせ、致命的な刺をギリギリでかわしていったが、羽織っていたマントが黒炎に切り刻まれてボロボロになっていく。その時、最後の黒刺が澪の影から前触れもなく飛び出した!
澪:「なにっ!?」
危機一髪の瞬間、生存本能により澪の身体が勝手に動いた。腰の『王国の剣』を一気に抜き放ち、下段へ一閃!
——フッ……!
襲いかかる魔法は、王国の剣に触れた瞬間に魔力を失い、霧消した。
それを見たアスワルドは一瞬呆気にとられたが、すぐに狂気的な大笑いを爆発させた!
アスワルド:「ハハハハハ!なるほど……そういうことか!すべて合点がいったぞ!」
アスワルドは邪悪な瞳で澪を睨みつけた。
アスワルド:「魔法を吸収する剣の話など眉唾だと思っていたが……まさか王国軍の密偵が、この中立地帯に潜り込んでいたとはな……!これが公になれば、大事だぞ……?」
身分が完全に露呈したのを受け、澪はボロボロになったマントをむしり取り、床へ投げ捨てた。
澪:「チッ……」
澪はもう変装を捨て、鷹のように鋭い眼光でアスワルドを射抜き、王国の剣を固く握りしめた。
アスワルドは嘲笑を浮かべ、その身に漆黒の魔力を狂暴に渦巻かせた。
アスワルド:「真のショーはここからだ……見せてやろう、
魔法の『真の力』というものをね!」




