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第1話 序章

燃え盛る村・夜(過去)


深夜。赤々と燃え上がる村。 黒煙の向こうには、深いフードで顔を覆った謎の組織が立ち並んでいる。 炎の爆発音と村民の悲鳴が交錯する。


組織の男「一人も逃がすな! 完全に消し去れ!」


狭く暗い岩の隙間。 幼いミオが、煤と涙で汚れた顔を歪め、全身を震わせて身を縮めている。


ミオ(心声)「誰か……誰か助けて……」


岩の小穴から外を覗き込むミオ。 魔法の光が闇夜を切り裂き、村人たちが次々と倒れていく。 その凄惨な光景に、ミオの瞳から光が消えていく。


口元を噛み締め、指先が血に滲むほど強く拳を握りしめるミオ。


ミオ(心声)「魔法……絶対に滅ぼす。」


極度の絶望と疲労により、ミオの意識はそのまま深い闇へと落ちていく。


洞窟の入口・朝


洞窟の入口に眩しい光が差し込む。 鋼の鎧に身を包んだ王國軍の兵士たちが覗き込んでいる。


兵士「おい!! ここにまだ生き残りがいるぞ!」


王國軍の駐屯地


ボロボロの服を着ながらも、背筋をピンと伸ばして駐屯地に立つ幼いミオ。

その目の前には、重厚な鎧を着た部隊長が立っている。


ミオ「私……王國軍に入りたいです。」


部隊長は冷徹な眼光でミオを見下ろす。


部隊長「君は誰だ? クス王國軍の目標が何なのか、分かっているのか?」


ミオ「クス王國軍の目的は……魔法使いの討伐。魔法は大陸中に溢れ、犯罪にも利用されている。……すべての魔法使いを捕らえる」


涙をぐっと堪え、直視し返して言い切るミオ。

部隊長はその強い眼光と覚悟を確かめると、静かに頷く。


部隊長「……よろしい。名を名乗りなさい。」


ミオ「……ミオです。」


王國軍・訓練場(数年後)


青空の下。 成長したミオが、重厚な特製鋼剣を鋭く振り下ろしている。 金属の打撃音が響き、汗が飛び散る。


周りでは兵士たちが慌ただしく走り回り、号笛が響き渡っている。 ミオは剣を鞘に納め、額の汗を拭いながら同僚の男兵士を見る。


ミオ「今日、なんだか軍内が騒がしいけど……何かあったの?」


男兵士「知らないのか? 王國最強の四天王が遠征から帰還されたんだよ! 」


ミオは手に握られた対魔法用の特殊鋼剣の紋様を見つめる。


ミオ(心声)「クス王國がここまで強いのは、魔法を断ち切るこの武器と、魔法を防ぐ特殊な防具があるからだ……でも、これにも限界はある。」


そこに、遠くからルーク隊長が歩み寄ってくる。


ルーク「おい、ミオ。ちょっといいか。」


ミオは即座に直立不動で敬礼する。


ミオ「ルーク隊長! ご指示でしょうか?」


ルークはポケットから一枚の写真を取り出し、ミオに手渡す。 そこには20歳前後の冷徹な目をした女魔術師が写っている。


ルーク「今回の極秘調査任務だ。相手は伝説の魔導士ウィリアムの娘、マレン。」


王國軍・資料館


薄暗い資料館。 ミオが分厚い個人ファイルをめくっている。


【マレン / 伝説の魔導士の娘 / 年齢:20代前半 / 行使魔法:未知 / 詳細:隠蔽処理】


ミオ「情報が少なすぎます……私のような経験の浅い兵士を向かわせて、本当に大丈夫なのですか?」


背後からルーク隊長が苦笑しながら歩いてきて、ミオの肩を軽く叩く。


ルーク「相変わらず慎重だな。自分に自信を持て。お前はうちの隊でも戦闘・偵察ともにズバ抜けて優秀だ。」


ミオはジト目でルークを見つめる。


ミオ「隊長……本音は、人が余っていないだけですよね?」


ルーク「コホン……! 今回は俺も同行する。上官からの命令は極秘調査、可能なら生け捕りだ。」


ルークは周囲を警戒するように見回すと、誰もいない廊下の隅へとミオを連れて行き、声をひそめる。


ルーク「本当は他言無用なのだが……前回の遠征で、前回の遠征で、四天王様がある『予言』を持ち帰った。」


ミオは驚きつつも、即座にメモ帳を取り出す。


ミオ「預言……ですか?」


ルーク「『勇者が現れ……虐げられた魔法使いたちを救済する』と。」


ミオの筆が止まる。 手帳の紙に『勇者』と強い力で書きつけるミオ。


ミオ(心声)「勇者……救済……? 」


ルークはミオの肩を優しく叩く。


ルーク「気持ちは分かるが、焦るなよ。一朝一夕で終わる戦いではない。」


エルの街・城門(翌日)


馬車がガタゴトと音を立てて走っていく。 目の前にはクス王國の軍旗が掲げられた巨大な石造りの城門。


ミオは馬車の窓から外の風景を見つめている。


ミオ「城門……ここが、クス王國の占領下にある『エル城』……。」


馬車が城門の前で止まる。

待ち構えていた見張り兵が、小走りでルーク隊長とミオのもとへ駆け寄ってくる。


見張り兵「隊長! 街の封鎖、完了いたしました!!現在、何人たりとも出入りを許可しておりません」


ルーク隊長「ご苦労。」


ルーク隊長は頷き、ミオを連れて封鎖された街へと足を踏み入れる。


エル街・大通り


街の中は、ミオの想像とは大きく異なっていた。

通りの至る所に王國軍の軍旗が掲げられ、街全体に冷たく重苦しい緊張感が漂っている。

行き交う住民たちは皆俯き、兵士たちの姿を避けるように足早に通り過ぎていく。


ミオ「隊長……どこから手を付けるべきでしょうか?」


ルーク隊長「まずは手分けして聞き込みだ。何か掴んだら合流しよう。」


ミオ「了解しました。」


ミオは深く一礼し、路地奥の民家へ向かって歩き出す。


民家の玄関前

コン、コン、コン——。

ミオが木製の扉を叩く。


扉がわずかに開き、怯えた様子の住民が顔を覗かせる。


住民「な、なんのご用でしょうか……?」


ミオはマレンの写真を取り出し、住民に見せる。


ミオ「この人物に見覚えはありますか?」


写真を見た瞬間、住民の顔色が激変する。


住民「し、知りません! 何も知りません!」


バタンッ! と激しい音を立てて扉が閉ざされる。

ミオはその後も何軒かの民家を訪ねて回るが、誰もが怯え、拒絶の言葉を繰り返すばかりだった。


暗い路地裏


聞き込みが思うように進まず、ミオが次の家へ向かおうとしたその時、路地裏からかすかな抗議の声が届く。


少女の声「話して……離してよっ!」

母親の声「お願いです! その子を離してください!」


ミオが鋭い眼光で路地裏へ駆けつけると、そこでは二人の王國兵が幼い少女とその母親を追い詰めていた。

一人の兵士が少女の腕を強引に掴み上げ、もう一人がそれを冷笑しながら見下ろしている。母親は石畳に膝をつき、泣きながら乞うている。


ミオ「……何をしているんですか?」


激怒を押し殺した低い声で割り込むミオ。

少女の手を握りつぶさんばかりに力を込める兵士。


兵士A「あ? 見りゃ分かるだろ! このガキ、絶対にマレンを知ってやがる!」


ミオ「手を離しなさい。彼女たちはただの一般市民です。」


兵士B「あんだと? お前、どこの隊の兵士だ?邪魔すんじゃねえ!」

ドサッ!

兵士Bが苛立ちまぎれにミオの肩を強く突きのける。

地面に倒れ込むミオ。

兵士Aはさらに強く少女を締め上げる。


兵士A「吐け! 奴がどこに隠れているか知っているんだろう!?」


少女「……言わない……絶対に言わない!!」


涙を流しながらも、強い意志で言い返す少女。

地面から立ち上がり、剣の柄に手を伸ばすミオ。


ミオ「やめなさ——」


「氷の暴風アイス・ストーム!!」


叫び声を遮るように、上空の空気があっという間に凍りつく。

無数の鋭い氷柱が生成され、凄まじい速度で三人に向かって降り注ぐ!


ミオ「くっ……!」


ミオは瞬時に特製鋼剣を抜き放ち、眼前に迫る無数の氷柱を疾風のごとく一閃、粉砕する。

しかし、状況を理解できていない二人の王國兵は逃げ遅れ、氷の衝撃に吹き飛ばされる。


混乱に乗じて、母親が泣き叫びながら少女の手を引いて路地裏の闇へと逃げていく。


ミオは剣を構えたまま、魔法が放たれた屋根の上へと視線を走らせる。


一陣の風が吹き抜け、黒い裾が激しく翻る。


フードの影から覗く冷たい視線。


ミオは息を呑み、瞳孔をわずかに収縮させる。


屋根の上の人物は、ただじっと下におるミオを見下ろしている。


次の瞬間——。


その姿は掻き消えるように、屋根の向こう側へと消失する。

ミオ「……っ!....魔法....」

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