第37話:タイタンの『暴走』とプロデューサーの決断(挿絵あり)
生成AIで画像を作ってみました。
この話数から自動で作っただけなので、本文や他の画像との矛盾はご容赦ください。
「いいぞ、アルド! ハンナ! セレスティーナ! そのまま押し切れ! このライブのクライマックスだ!」
俺の檄に応えるように、三人の連携はさらに鋭さを増していく。セレスティーナの多属性魔法がタイタンの魔導障壁を削り、ハンナが作り出した絶好の足場から、アルドが金属疲労を起こした右膝の関節部へと、渾身の一撃を叩き込む!
ズシャァァァン!
ついに、タイタンの巨体がバランスを崩し、片膝をついて大地に轟音を響かせた。
「やった!」
「へっ、見たかデクノボウ!」
ハンナとアルドが、歓喜の声を上げる。
だが、その瞬間だった。
「「「グギアアアアアアアアアッッ!!!」」」
タイタンの内部から、それまでとは比較にならないほど、凄まじい苦痛と憎悪に満ちた絶叫が響き渡った。
無理やり融合させられていた複数の魂が、機体の損傷による制御系の不調をきっかけに、ついに牙を剥き始めたのだ。動力炉が、真っ赤な臨界光を放ち始める。
(まずい! 奴め、暴走しやがった!)
レイジ・ブリンガーの焦った声が、アルドの脳内に響く。
片膝をついた姿勢から、タイタンは予測不能な動きで暴れ始めた。その巨腕が、敵味方の区別なく、周囲の地形ごと薙ぎ払う。
「工房長、危険です! 帝国軍も制御不能と見て、撤退を開始しました!」
セバスチャンが、冷静に報告する。
「くそっ! せっかくのライブが、むちゃくちゃじゃないか!」
暴走したタイタンの腕が、後方で魔法の再装填をしていたセレスティーナへと迫る。
「きゃっ!?」
「危ない、セレスティーナちゃん!」
ハンナが、咄嗟に彼女を突き飛ばし、自らが盾となった。土壁を瞬時に作り出すが、暴走したタイタンのパワーは規格外だった。壁は紙のように砕かれ、ハンナはその衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「ハンナさんっ!」
「ハンナ!」
セレスティーナとアルドの悲鳴が上がる。幸い、致命傷ではないようだが、ハンナは肩を押さえて苦痛に顔を歪めていた。
「ダメだ…! パフォーマンスが乱れてる! このままじゃ、ステージが台無しだ!」
俺は指揮所で拳を強く握りしめた。アイドルの一人が負傷し、ユニットの連携は崩壊。ステージは、制御不能のモンスターによって破壊され尽くしている。こんなエンディング、プロデューサーとして断じて認められるか!
「フィン君、どうするんだ!? このままでは全滅だぞ!」
バルバロッサの焦った声。
「…決まってるだろ」
俺は、静かに立ち上がった。
「俺が、直接ステージに上がる!」
俺の宣言に、その場にいた全員が凍り付いた。
「なっ、正気ですか工房長!」
「フィンよ、無茶じゃ!」
セバスチャンとバルバロッサが止めに入るが、俺の決意は変わらない。
「ベアトリス団長! 聞こえるか! 今から、俺のスペシャルな『演出』の解説をしてやる!」
俺は、魔導通信機を手に、ベアトリスへと語りかけた。彼女の騎士団は、万一の事態に備え、少し離れた場所で待機している。
「はっ!? 私に…何を…!?」
「いいか、全ての物体には、固有の振動数ってものがある! 水を入れたワイングラスの縁を指でこすると特定の音が出るのと同じだ! 外部から、その物体が持つ固有振動数と同じ周期で力を加え続けると、揺れはどんどん増幅していく! これが『共振』だ! かの有名なタコマナローズ橋の崩壊は、橋の構造が持つ固有振動数と、強風によって発生したカルマン渦の振動数が偶然一致したことで引き起こされたらしい。小さな力でも、タイミングさえ合えば、橋だって落とせる、とんでもない現象なんだぜ!」
俺の前世の物理学の知識を、ベアトリスは全く別の解釈で受け取っていた。
(こ、固有振動数…? 共振…!? まさか、あの巨大兵器の魂の核を、外部からの魔力波長の同調によって、内部から破壊する古代の禁呪!? そんなものが、本当に存在するの…!?)
「ハンナたちの役目は、俺が『共振点』を見つけるまでの時間稼ぎだ! 俺があの巨人の懐に飛び込み、その魂の核に直接アクセスして、最高のフィナーレを演出してやる! だから、全力で俺を援護しろ!」
「…了解した」
通信機の向こうで、ベアトリスが、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。
(魔人が…ついに降臨する。そして、我々騎士団に、その儀式のための『生贄』となれと…! …いいでしょう。この身がどうなろうと、それが王国を守ることに繋がるのなら!)
彼女の中で、悲壮な決意が固まる。
「工房長!」
俺は、指揮所にあった予備の装備を手に取り、戦場へと駆け出した。
その背中に、セバスチャンの声が飛ぶ。
「どうか、ご無事で…! あなたという将を失うことは、この国の未来にとって、計り知れない損失にございますぞ!」
将、ねえ。俺はただのプロデューサーなんだがな。
今は、そんなツッコミを入れている暇はない。目の前のぶっ壊れたステージを、最高の形で立て直す。それだけが、俺の頭を支配していた。




