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神眼の鍛冶師は素材の魂(こえ)が聞こえる ~俺は素材をプロデュースする~  作者: サンキュー@よろしく


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第25話:試作品とチームの化学反応

「帝国の武器は、魂を『支配』することに重点が置かれている。だが、そのやり方じゃ、魂本来のポテンシャルは引き出せない」


第零工房の作戦会議で、俺は熱っぽく語り始めた。


「俺たちが目指すのは、過去の成功例の、さらなる進化だ。『共鳴』と『一体化』を、意図的に、かつ最大限に引き出すシステムを構築する!」


俺がゴブリン戦や農具革命で目の当たりにした現象を、より高度な技術として昇華させる。それが俺が示した最初の目標だった。


「そのためには、武具側にも、使い手の意志を理解し、補佐するだけの『知性』が必要になる!」


(武具に…知性を…?)


ベアトリスは、俺の言葉に戦慄した。


(あの男、ついに正体を現したわ…! 無機物に新たな生命を吹き込み、意のままに操る『創造主』になろうというのか!?)


「そこでだ、セバスチャン。腕利きの、しかしあまり素行の良くない兵士を一人、テストパイロットとして用意してもらえますか?」


「てすと…ぱいろっと…でございますか?」


セバスチャンは、聞き慣れない言葉に片眉を上げた。


「ふむ…試すための操縦者、というような意味合いでしょうか。承知いたしました。工房長のお眼鏡にかなうかは分かりませんが、一人、心当たりがございます」



翌日、工房に連れてこられたのは、札付きのワルとして知られる若い騎士、アルドだった。


「ちっ…なんで俺が、こんな工房に…」


アルドは、不満そうに悪態をついている。


俺は、彼の前に一本の長剣を差し出した。それは、俺が打ち上げた、試作品第一号だ。製作にはバルバロッサ顧問にも協力してもらい、ドワーフに伝わる秘伝の鍛造技術で、魂が活性化しやすい最高の素地ボディに仕上がっている。そして、最後の仕上げに、俺は懐からあの『呪いの破片』の微細なかけらを、誰にも気づかれぬよう、柄頭つかがしらにそっと埋め込んでおいた。これが自我の発現を促す触媒になるはずだ。


「君に、この子の最初の『パートナー』になってもらいたい」


俺は剣を掲げ、その魂に語りかけた。


「よし、お前のその荒々しい魂の叫びにふさわしい名前をくれてやる。今日からお前は『レイジ・ブリンガー(怒りをもたらす者)』だ!」


「はあ? ぱーとなー? なんだそりゃ、相棒とでも言いてえのか?」


アルドが、訝しげに俺を見る。


「まあ、そんなところだ。とりあえず、握ってみろよ」


「アルド! 工房長に対して、その口の利き方はなんだ!」


ベアトリスが思わず声を荒らげる。


(この男…札付きのワルで知られるアルドを、最初の実験台にするつもりか…! 見届けさせてもらうわ、その悪魔の所業を!)


「いいんですよ、ベアトリス団長」


俺は彼女を手で制し、アルドに向き直った。


「君のその腐った性根は、魂から叩き直してやる。このレイジ・ブリンガーが、君を導いてくれるはずだ」


俺は剣をアルドに無理やり握らせると、ハンナを手招きした。


「ハンナ。君のレザーアーマーを少し改造させてもらう。この試作品との『共鳴率』を、さらに高めるためだ」


俺が取り出したのは、特殊な金属繊維を編み込んだ、銀色の布地だった。持ち主の魔力の流れを感知し、剣の魂へとフィードバックする機能を持つ、超高性能な接続補助具(インターフェース)だ。


「この銀色の布に織り込まれているのは、魔力を電気信号のように変換・伝達する性質を持つ『魔導銀線』だ。まあ、俺のいた世界で言うところの『ウェアラブルデバイス』に使われる導電性テキスタイルみたいなもんだな。皮膚の微弱な電気信号、つまり筋肉の動きや心拍数なんかの生体情報を読み取って、外部デバイスに送信する技術なんだが、この世界では魔力の流れを読み取るのに応用できる。これを介することで、ハンナの動きの癖や次の行動予測が、リアルタイムで鍬にフィードバックされるってわけだ」


この俺の説明を、ベアトリスがどんな顔で聞いていたか。


(うぇあらぶる…でばいす…? 導電性てきすたいる…? またしても未知の呪文を! 皮膚の電気信号…つまり、生命力そのものを読み取り、外部の呪具に送信する…!? なんてこと、あの娘はもはや、ただの人間ではない! 魔人が操る生体端末バイオターミナルにされてしまったのよ!)


「さあ、ハンナ。鎧を脱いでくれ。フィッティングを始める」


「え…!?こ、ここで!? ふぃってぃんぐ…?」


ハンナが聞き慣れない言葉に戸惑う。


「ああ、お前の体の寸法に合わせて、この布を調整するんだ」


俺がハンナの鎧を調整し、銀色の布を彼女の柔らかな肌に直接触れさせながらサイズを合わせていると、ハンナはくすぐったそうに身をよじらせる。この一連の流れが、ベアトリスには「魔人が、生体端末に外部機器を接続している」ようにしか見えていなかった。



全ての準備が整った。

俺は、新品の剣を握ったアルドと、最新鋭のインナーを装着したハンナを、中庭の訓練場に立たせた。


「よし、アルド。かかってこい。相手は、この工房が誇るエース、ハンナだ」


セバスチャンの合図で、模擬戦が始まった。

アルドが荒々しく剣を振り下ろすが、ハンナはそれをひらりとかわす。実力差は歴然で、アルドはすぐに追い詰められた。


「くそっ! ちょこまかと!」


アルドの焦りが最高潮に達した、その瞬間だった。アルドの手の中のレイジ・ブリンガーが、淡い光を放った。


(おい、馬鹿!そんな大振りじゃ、当たるもんも当たらねえだろ!)


剣の魂が、『呪いの破片』を介して、アルドの脳内に直接、ダメ出しの声を響かせた。


「なっ!?なんだ、今の声は…!」


(いいか、相手の肩の動きをよく見ろ!次に奴が狙うのは、お前の右足だ!)


その声の通り、ハンナの攻撃がアルドの右足を襲う。アルドは、剣の声に導かれるまま、咄嗟にそれをかわした。


「す、すげえ…!こいつ、喋るだけじゃねえ…未来予知までしやがる…!」


アルドの顔が、驚愕と興奮に変わっていく。


「どうだ、アルド。最高の『パートナー』だろ?」


俺が訓練場の脇から声をかける。


「ふ…ふはは…!面白い…!面白いじゃねえか、この剣! おい相棒、次はどこを狙う!?」


(まずは落ち着け、脳筋!もっと腰を落として、どっしり構えろ!)


反抗的だったアルドは、すっかり剣との対話に夢中になっていた。

その光景を、ベアトリスは呆然と見つめていた。


(喋る剣…! やはり、何かを仕込んでいた! 仕上げの際に、彼が懐から取り出したあの黒いカケラ…! あれは間違いなく、呪われた遺物カースドアーティファクト! あの呪物を使って、ただの鉄塊に、邪悪な知性を宿らせたというの!?)


(そして、ハンナの鎧…。あのインナーを通して、彼女の動きが鍬と連動することで、最適解を導き出している…! なんと恐ろしい戦闘の仕組み(からくり)だ!)


「どうやら、試作品第一号は大成功のようですね、工房長」


セバスチャンが、満足そうに頷く。


「はい。最高のアイドルユニットの、第一期生が誕生しました」


俺の言葉に、ハンナだけが「私もアイドルなのかな…?」と、嬉そうに頬を染めていた。


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― 新着の感想 ―
人具一体の、プロデュース軍団。 全員がインテリジェンス・ウェポン持ちとか、かなりの上級兵種になりそう。うまく行けば戦力差をひっくり返す切り札だな。 フィン個人が帝国に狙われて、洗脳を施されそう…。 …
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