第67話 強さとは負けることを、
───次の日。
俺は自分専用のベッドから降りる。
「今日は...試験監督の場所に行くのか...」
そんなことを呟きながらリビングへと小さな足で少しずつ歩みを進める。向かう途中で、ユウヤの手に乗せてもらった。
***
「それじゃ、誰が行く?」
ショウガがそんなことを提案してくる。
「まず、リーダーの俺と、ユウヤは当然だろ?それに、頭脳のカゲユキは必須だよな?」
「あぁ...そうだな!」
「ねぇ?俺は?俺は?」
トモキは連れて行って欲しいアピールをする。
「トモキは...お留守番だ!」
ユウヤは笑顔をトモキに向ける。
「え?」
「「トモキは、お留守番だ!」」
俺とショウガもトモキに笑顔を向ける。
「なんでだよぉぉぉぉ!」
こうして、トモキが家に残ることに決まった。
***
俺たちは試験監督が多くいるところに向かう。
「なぁ、リューガ?本当にあるのか?」
「あぁ...あると思うぜ?」
俺はショウガの質問に答える。今日は、リカの手の上に乗っている。流石にショウガの胸の中でいるのはリーダーとしてあるまじき態度なので、今日だけ自重する。今日だけだが。
「ないならないで...振り出しに戻るだけだ...まぁ、見つけるか見つからないかの1か10のどちらかなんだけどな...」
カゲユキが言っていることは正しい。
***
「うん...やっぱり、肉体がある方が『千里眼』は使いやすい...」
フミヤは『千里眼』を使っている。
フミヤは、『破壊』と『精神浮遊』の他にも、『千里眼』・『硬化』・『柔軟』・『酸化』を保有していた。おっと、今使っている肉体が持っていた能力も忘れてはならない。
「キュラスシタを殺したのは...あの巨乳のお姉ちゃんか...」
フミヤに流れた情報は少し語弊があった。ヒヨコのリューガが倒したとは到底思えない。なので、ショウガがキュラスシタを殺したことになっていた。
「この新しい能力を使ってみたい気持ちもあるけど...実際に会ってみたいから少しお手合わせをしてみるかぁ...強さとは負けることを恐れないこと だからね!」
強さとは負けることを恐れないこと。 は伊達公子の言葉だ。
フミヤは、リューガ達のところへ向かう。
***
「あの...すいません...」
「どうされましたか?」
試験監督をニコニコしながら、答える。
「ここに、アイキーはありますか?」
試験監督の笑顔は消える。
「あります...ここに...」
「やっぱりな!」
「少し待っていてくださいね...」
試験監督はどこかに行ってしまった。
「あったな!やっぱり!」
「流石カゲユキ!カッコいい!」
「ただ仮説が当たっただけだ...」
カゲユキはマユミに褒められても仮説が当たっただけと通していた。
「これです」
俺たちは、アイキーを渡される。
「ありがとうございます!」
「はい。それでは、それを持って時空の結界まで移動してください。他のチームに盗られても文句は言えませんので」
「あぁ!わかった!」
俺たちは一礼してその場を離れる。
「そんじゃ、トモキのところに戻るか!」
「あぁ!そうだな!」
「こんにちは!少年少女たちよ!」
俺らの目の前に一人の少年が現れる。
「誰だ!」
「まだ...名乗る時では無いと思うんだ!俺はね!」
「何が...したい?」
「キュラスシタの仇が取りたい...かな?」
「キュラスシタ?誰だ?」
ユウヤは何も知らない。当たり前だ。
「お前は...」
俺は言葉を失った。こいつは、「月光徒」だった。
「お前はぁぁぁぁぁぁ!」
「リューガ?キュラスシタが誰か知っているのか?」
「あぁ!キュラスシタは月光徒だ!」
ショウガが怒りで狂う俺の代わりに説明する。
「お前も...虐殺をしているのか!若い芽であるここの人たちに!」
「何を言っているんだ?第2の試練でお前らも殺しているだろう?」
「殺してなんかない!レントーもブルもグーグもエイロも生きている!バトラズとモンガも生きている!」
「へぇ...そう?でも、君の仲間は殺しただろう?」
「殺してなんか...」
「いや...殺したよ...我は...」
「なっ...リューガ?」
「我はニークを殺した...これは紛れもない事実なんだ...」
「そう!お前らはキュラスシタだって殺している!君たちだって殺してるなら...殺されても文句は言えないよね?」
「うるせぇ!月光徒の野郎が...何を言ってるんだぁぁぁ!」
俺は浮き始める。俺は少年の方へ飛んでいった。
「ヒヨコが飛ぶのか...努力すれば何もできるのかな?」
「うるせぇ!」
”バキバキッ”
「なっ...『破壊』?」
「あぁ!『破壊』だ...『破壊』でお前を殺す...」
「なんだ、弟だったのか...」
少年はよくわからないことを言い出す。
「何言ってるんだ!俺には兄弟も姉妹もいないんだよ!」
「違う違う!直接的な家族構成の話をしている訳じゃない!俺も『破壊』を使えるんだよ!」
「なっ!そんなの嘘に...」
「嘘じゃないよ!」
”バキバキバキッ”
少年の言葉のその直後、地面が割れる。俺でもできないような『破壊』だ。
「なっ...」
俺らは言葉を失う。ユウヤ達は足が竦んで動けていない。沈黙を破壊する言葉をその少年は放つ。
「俺の名前はフミヤ!エイジンの弟子...すなわちお前の兄弟子だよ!」
強さとは負けることを恐れないこと。
伊達公子の言葉です。




