第66話 タイガー
***
カゲユキは一人探索を続ける。
”ガサガサ”
茂みの中で動く音が聞こえる。
「誰かいるのか?」
「だ...誰ですか?あなたは...」
そこにいたのは魔法使いの女性だった。
「驚かせてしまってすまない...ここはあなたの土地だったか?それなら出ていこう...」
「あ、いや...そういう訳じゃ...ない...です...」
「そうか、本当に驚かせてしまってすまなかったよ」
「は、はい...」
「あなたはこの世界にどのくらいいるんだ?」
「約4ヶ月ほど...」
「4ヶ月か...ありがとう、もう1つ質問をいいか?」
「それで...逃してくれる?」
「あぁ...別に手出しをする気はないが...」
「で、質問は何?」
「前回の試験合格者が出たのは何ヶ月前だ?」
「えっと...私たちが来てすぐだから...3ヶ月と2週間ほど前...かしら?」
「そうか...ありがとう...では...」
「待って!あの...名前は?」
「名前か?名前はカゲユキだ...あなたは?」
「私は...マリアよ...」
「そうか...質問に答えてくれてありがとう...」
カゲユキは魔法使いの女性に一例して、その場を去っていく。
「仲間を...探さなきゃ...」
マリアは一人でそう呟いた。
***
「あぁ...一人で暇だなぁ...」
ユウヤはリビングで寛いでいる。だが、何も暇を潰すものはない。ただ、寛いでいる。
「眠れないってのが、苦痛だよなぁ...」
そう。監視だから眠ってはならないのだ。
「ん...なんだ?」
外が随分騒がしい。誰かがいる。
「なんだ?」
ユウヤは木の上から見下ろした。
「おい!ツルがあるから、登ってみようぜ!」
「あぁ!もしかしたら、アイキーがあるかもしれない!」
3人の男がツリーハウスに侵入してきている。
「おい!ここは俺らの住居だ!出ていって欲しい!」
「嫌だな!出ていくわけ無いだろ!ここでは武力が物を制するのさ!」
「そうか...なら、俺も頑張らないと駄目なのか...」
ユウヤは剣を抜く。そして、ツルを登っていて無抵抗で無防備な相手の頭の上に剣を下に向けたまま落下する。
「うっ...」
”ブシャッ”
侵入者の頭のてっぺんで何かが零れ出る音がする。脳漿が零れ落ちたのだ。
”バタッ”
「後2人...か...」
「お!おい!お前!ただじゃおかないからな!」
「うるさいなぁ...侵入者なのに、偉そうにするなよ?」
”キィィン”
”キィィン”
ユウヤの刀と侵入者の刀がぶつかる。
「こっちはよ...2人いるんだぜ!」
”バキッ”
ユウヤの剣が折れる。その剣は、侵入者の横腹に刺さる。
「なっ...『酸化』...だと?」
”ドサァ”
「さて、あと一人だね...」
「おいおい!武器を無くして何を言ってるんだよ!」
「武器?武器なんかいらないよ...やるのは俺じゃない...タイガー!」
”ウガー”
木の中から虎が飛び出してくる。そして、侵入者の頭を丸かじりした。そのまま、侵入者は食われる。
この虎は、昨日トモキが連れてきた兎の一匹を虎に変えていたのであった。「美味しい飯(人の肉)にありつけるからそれまでいい子にしてろ」というトモキの命令によって虎はいい子にしていた。
「ありがとうな!タイガー!」
虎はユウヤなど無視して、さっきまで隠れていたところに戻っていった。
***
「さぁて...アイキーはどこにあるかなぁ!」
俺とショウガは共に探索をする。
「ショウガ...やけにテンション高いな...」
「そうか?そんな高くないとは思うが...」
「いや、高いぞ!超嬉しそう!」
「マジか...我、なんでテンション高いんだ?うぅん...リューガと2人きりだから?」
「え?」
「え?なんか変なこと言った?」
「いや、何でも無いよ...」
あんなことを言われては、俺の方が困ってしまう。
***
「ただいまぁ...」
「あ、おかえり!」
俺らが帰る頃にはもうみんな帰ってきていた。
「見つかったか?」
「いや、全然...」
「そうか...」
「あれ、マユミとリカは?」
「今、飯を作ってるぞ!」
「そうか」
「なぁ...アイキーのある場所の推測ができた...」
カゲユキが俺らに言う。まだ、ここに来て2日しか経ってないのに。
「本当か?」
「あぁ...まだ推測なだけだがな...」
「聞かせてくれ!その推測を!」
「わかった...まず、前回の試験合格者が出たのは3ヶ月ほど前だ...」
「へぇ...そうなんだ...」
「なら、3ヶ月間も何故アイキーが見つからないのか...わかるか?」
「見つけにくいところにあるから?」
「それもあるかもしれない...だが、血眼になってみんな探しているんだぞ?1か月やそこらで見つかってもいいはずだ...」
俺はカゲユキの話を聞いて、1つの仮説を生み出す。そして、脳裏にキュラスシタの顔がよぎった。
「もしかして...」
「リューガはわかったか、そのもしかしてだ...」
「じゃあ...一体!」
「待てよ!俺たちがわからないところで会話を進めるな!」
「あ、すまない...」
「で、推論と言うのは?」
「「誰かが隠し持っているかもしれない...」」
俺とカゲユキはハモる。
「じゃあ...一体...誰が?」
「わからない...が、試験監督が怪しい...」
「じゃあ...明日は試験監督のいる場所へ?」
「あぁ...そうしよう...」
明日はどこに行くかがこれで決定した。




