第61話 茶色のフロン
フロン好きの方は、注意。
「それでは...小手調べは終わりだ...私も真剣になろう...」
一瞬にして、モンガのオーラが変わる。オーラと言っても視認できるものではない。体で感じる一種の波動のようなものである。その波動の波長が一瞬にして変わった。
「ショウガ!マズイ!逃げろ!」
「あ?あぁ!」
ショウガ一瞬後ろに下がる。
「逃げても無駄だ!もう遅い!」
モンガは刀を大きく一振りする。
”ビキビキッ”
モンガの持つ刀はえげつない割れる音を立てる。そんなことよりも、剣圧と斬撃がこちらに飛んでくる。『破壊』でも、完全には壊せ無さそうだ。
「その斬撃!どこまで避けられるかな!」
「しょうがない...生物変化!」
”ゴゴゴゴゴゴ”
地面が揺れて、土の中から大木がのし上がってくる。微生物だ。土の中にいる微生物を木に変えたのだ。
”ジョキィィン”
「なっ...」
その大木も一瞬にして斬られてしまう。
「なっ...なんとぉぉ!土の中から、木が!木が生えてきたぞぉぉ!これも...これも!”生物変化”の能力なのかぁぁ?」
ケイルはしっかり実況をしている。
「そんなひ弱な木の一本で...私の斬撃が止められると思っているのか?」
「あぁ...思ってるぜ...今もな!リカ!」
「はい!任せてくださぁぁい!!!」
”ドォォン”
リカは折れた大木を飛んでくる斬撃の方へ蹴る。大木と斬撃は接触する。蹴られた力と剣圧が相殺される。
───斬撃は、収まった。
「なっ...私の斬撃を...止めた...だと...」
モンガの手の刀は粉々に砕けていた。もう、戦うことはできない。
「しょうがない...私達の負けだ...負けを認めぬことは...剣士の恥...よって、負けを認めよう!」
モンガは降参のポーズを取る。
「おっっとぉぉぉ!ここで!降参の手が上がったぁぁぁぁ!{剣鬼と剣姫}が降参したので...トーナメント①...勝者は...優勝者は...{チーム一鶴}だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「「「ううううううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」」」
親の声より聞いた観客の叫び声が響く。これで、俺たちが聞くのは最後かもしれない。
***
「うっ...」
フロンは楽屋で腹を抑えている。
「腹が...でも...試合に...」
フロンの顔は青くなっていた。
***
「続きまして、これから第二準決勝を行います!{金色のフロン}vs{ユウヤチーム}です!今トーナメントの最終試合となります!彼らは最後の最後にどんな戦いを魅せてくれるのでしょうか!それでは、{金色のフロン}の方、登場ー!」
「「「ううううううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」」」
フロンは腹を抑えて、たどたどしい足取りで闘技場に出てくる。覚束ない足取りだ。何か合ったのだろうか。
「{金色のフロン}はフロンだけの男一人です!だが、一人にもかかわらず、予選・準決勝では、数々の相手をその鮮やかな剣舞で圧倒し、決勝にまで上り詰めました!さぁ!残るはあと一歩...だが、お腹を押さえているが...大丈夫か?期待は高まります!続いて、{ユウヤチーム}!登場ー!」
「「「ううううううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」」」
「フロン...トーナメント表②での最強候補だぞ...本当に勝てそうか?」
「勝てる勝てないじゃない...『勝つ』だろ?」
「そうだな...すまん...」
「{ユウヤチーム}はユウヤ・トモキ・マユミ・カゲユキの男女4人組です!予選・準決勝は運と実力の両方を兼ね備えてここまで勝ち進んで来ました!さぁ!今回は決勝戦!彼ら彼女らは勝つことはできるのか!期待が高まります!それでは...スタートォォ...」
最後の試合のスタートがケイルによって宣言される。
「僕は今...とてつもなく腹が痛いんだ...だから...早急に終わらせるよ...」
フロンは腹を押さえた手を、剣に携える。
「フロン剣舞...1の舞...華麗に咲き乱れるバラの花...」
「まずい!みんn...」
”ブチュチュブリュブリュリュリュリュ”
フロンは途轍もないほど汚い音を出して、刀を振るおうとしたとたん失禁する。
”ベチャァ”
ズボンから、その漏れた茶黒い物体が溢れ出る。
”ブチュチュブリュ”
「う...」
まだまだ失禁をし続ける。薬の力だ。闘技場は沈黙を貫き、失禁する音が、会場内に響き渡る。
”ブリュブリュブチュッ”
「う...う...うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
”ブリュリュリュリュリュ”
”スパァン”
”ベチャッ”
”ベチャッ”
失禁する音。フロンが自分の首を斬り落とす音。失禁し、溢れ出た物体が地面に落ちる音。その溢れ出た物体の上にフロンの切り落とされた頭が落ちる音。
「フロンが失禁し...自害してしまったぁぁぁぁぁ!勝者は...勝者はぁぁぁぁ!{ユウヤチーム}だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
会場は沈黙が未だに貫かれる。ケイル以外は喋らない。フロンの残された胴体は、地面に倒れた。
第二の試験、突破チーム。
チーム一鶴
ユウヤチーム
もうすぐ、第4の世界へ───




