第513話 3階・屋上・最上階
「それじゃ、俺達は進もう」
Mrs.ブーロンの相手をマユミとカルガンの2人に任せることにした俺達。俺を含めた残りのショウガ・モンガ・クロエ・セイジ・アハトの5人と1匹は先に進むことを選択した。
「あら、行かせると思っているのですか?」
「お前が2人目の刺客ってことは、他にも数人いるってことだろ?なら、先に行ってもすぐにブーロン2世とぶつかる───みたいなことはないだろうしよ」
「バレていましたか...自分のキャパシティだって理解しているつもりですし、ここは相手2人で満足しておきましょうか」
俺達とMrs.ブーロンは階段ですれ違った。Mrs.ブーロンは、奇襲も騙しもしてこなかったので、根が淑女なのだろう。
───そして、俺達はブーロン2世側にも正義があるのだと知る。
16の世界の正義と、17の世界の正義が戦っているのだ。少し罪悪感を持ってしまうが、戦争というものは大体そんなもの。ならば、そこを追及してもいいことはないだろう。
そして、俺達は2階3階と階段を登っていく。理由としては、ブーロン2世及びポーラン・ハイランドは、最上階にいると見抜いたからだ。
ブーロン1世の時のように地下にいる───という説は薄いだろう。
理由としては、地下にいることを見破られて敗北したブーロン1世の反省を息子であるブーロン2世が活かそうとしないわけがないのだ。
「お、来た来た。歓迎、歓迎、大歓迎ッ!」
俺達が、4階に行こうとすると不意にそんな声が聞こえてきた。そこにいたのは、俺にとっては2度目の邂逅となる赤髪の、着物を着た人物───アレクであった。
「タンドンを殺した...」
アレクを目の前に、俺はそんな言葉を呟いてしまう。目の前にいるのは、タンドンを殺害した男───アレク。
「強いな、素通りしよう」
俺達は、何も見なかったことにしてその場を過ぎ去りそのまま4階に進もうとする。すると───
「行かせないよ」
一刀両断。その言葉が、この状況より相応しいものはあるだろうか。
アレクは、屋敷の中心にあるであろう大階段を一刀両断したのだ。
「僕の『血の門』の前からは、誰も逃げられない」
「───ッ!」
油断ができるわけがなかった。だから、『チーム一鶴』の最高戦力を投入することを即決した。
「モンガ」
「了解した」
俺がモンガの名前を呼ぶと、モンガはすぐに返事をした。彼女自身、戦いたいと思っていたところがあったのだろう。
「私が、此奴の相手をする」
「では、僕も微力ながら手伝いましょう」
そして、立ち上がったのはクロエであった。彼は、胸ポケットにしまってあった眼鏡を取り出してそれをかける。
「眼鏡、付けるのか?」
「えぇ、戦う時には必要なんですよ。足手纏いにならないようにするなら、尚更」
クロエはそう言うとハサミを取り出して相手に向ける。
今思えば、こんなら巨大な武器を持っているのによく検閲で引っ掛からなかったな。17の世界の関所は何をしているんだ、と突っ込みたくなるがアハトの『謝罪』あたりでどうにか許されたのだろう。
「ここは2人任せて先に行く───って言っても、階段は一刀両断されてしまったから...」
「外を飛んでいけばいいんじゃないか?」
「そんなことを簡単に言ったってよ...って、行けるじゃん。『生物変化』使えるじゃん」
───と、言うことで俺達は近くの窓を破って『生物変化』でショウガ・セイジ・アハトの3人を鳥に変えた。
そして、そのまま屋上にまで向かった。
「あれれ〜?おじさん達、屋上に来ちゃったんですか〜?ざ〜こざ〜こ」
「───」
屋上にいたのは、会いたくなかった人物の一人───隕石を降らす能力を持つメスガキのダヴィであった。
なんだか、この半年でウザさが倍増したような気がする。
その茶髪の少女ダヴィの相手を、正直俺はしたくなかった。
「アイツ、なんかムカつくわね」
アハトが、そんな感想を残した。
「あれ、『切り札の制裁』なのに面識はないのか?」
「『死に札の制裁』はアタシ達よりも上位だったから、アタシ達が会おうと思って会えるような人物じゃないのよ。その一員にアイツがいると考えると、嫌ね」
「何々?嫉妬しっちゃったんですか?陰険雌豚さーん♡」
「このガキの相手はアタシがするわ。ちょ、大人しく大人を知って頂戴。ガキ」
「それじゃ、ぼくもコイツの相手をしておくでちゅ。リューガと2人きりは正直気まずいでちゅ」
「そうか...じゃあ、ここは2人に任せるけどいいな?」
「もちろんよ!」
「わかったでちゅ」
「それじゃ...『破壊』ッ!」
俺とショウガは、天井を破壊してそこから王城の最上階に侵入した。俺の予想では、この階のどこかにブーロン2世はいるはずだ。
3階から4階の階段を無くしたアレクのおかげで、大階段からの逃亡は避けられる。それに、ダヴィが屋上にいたことからも、上からの侵入を拒んでいるのだろう。
もちろん、彼女の能力が屋内で使用できるものではないとわかっているのだが。
「行くぞ、ショウガ」
「もちろんだ!にしても、リューガとの共闘は久々だな!」
ショウガは、そう言って俺に微笑みかける。その笑顔は、随分と可愛らしかった。




