3・再開(前編)
シミ一つ無い真っ白な床と輝く豪華なシャンデリアが吊るされた真っ白な天井
ただし壁ではなく鉄格子に囲まれ、その奥は暗闇にキラキラと瞬く最果ての見えぬ星空に囲まれた異質な空間の部屋である
そんな部屋の中には人間と思わしき者が2人
1人はこの真っ白な部屋にはとてもういて見える真っ黒いゴシック風の椅子に腰かけ、同じ色と雰囲気の丸テーブルに両ひじをつき組んだ両手の上に顔をのせている
まだ大人ともいえず子供にも見えぬ体格に、さりげなくフリルをあしらったシャツと金色の刺繍がシンプルに施された黒いベストを纏い、同じような金色の刺繍がされた膝丈程のショートパンツからのぞく足はその見た目に反して艶やかで魅惑的
美少女にも美少年ともとれる中性的な透き通る肌色の性別不明な顔立ちに、濡羽色の艶やかな髪は後ろを一房のみ残したそれはまるで尻尾のようにゆらゆらと揺れ、長い睫毛に縁取られた濃い紫色の瞳は宝石のように輝きを放ちもう1人の人物を微笑みながら見つめていた
もう1人の見つめられている者は椅子には座らずその背後に姿勢良く、柱のように微動だにせず立っていた
中肉中背よりも少し背は高いぐらいの体格に、シワ一つ無い白いワイシャツと黒いダブルスーツに同じく黒のスラックスをきっちりと着込み唯一の色味である朱殷色のネクタイを締めている
少しばかり神経質に見えなくもない切れ長の黒い瞳に銀色が鈍く光るノンフレームの眼鏡をかけ、ショート丈の長さの黒い髪を自然な感じで七三分けしておりいかにも仕事が出来るエリートのような風貌で無表情の顔の男
そんな男に性別不明の人物は声をかける
「そんな所に突っ立ってないで、せっかく何だから座ったらどうだい?名無し君?」
そう声をかけられた男は目の前の椅子にゆっくり腰かけた
「長話だし、何か摘まみながらでも話そうか。紅茶でイイかい?あと甘いものは平気かな?」
「……特に好き嫌いはありませんのでお任せいたします」
「そうか、そうか。それならとっておきを出してしまおう」
そう言って性別不明の人物がパチッと指を鳴らすと何もなかった机の上に数種類の焼き菓子がのった大皿が中央に、黒色に青い蔦の模様が描かれたソーサーにのった紅茶入りのカップが2人の目の前に現れる
男はそれを目の当たりにし、少しだけ目を見開いた
そんな表情をした男を見た性別不明の人物はクスリと笑みをこぼす
「名無し君の前の前にいた世界には無い技術だものね」
「魔法、とでも言うものですか」
「そんなところかなぁ、あんまり深く考えたことはないね。最初から使ってた力で便利だからラッキーぐらいにしか思ってなかったよ」
言いながら皿にのったお菓子に手を伸ばし、一つを口に放り込む
美味しそうな甘いバターの風味とチョコレートの味を楽しんでから紅茶を一口
それを見ていた男の方もそっとカップを持ち、香り高い匂いを楽しみながらこちらも一口飲んだ
その間にまた違うお菓子を手にとり食べていた性別不明の人物に男は問いかける
「貴方様は私が死に際に出会った方で合っていますか?」
「おおぅ、今さらだね。こんな愛くるしい僕を確認するだなんて」
「私に人と蛇の美醜はつきませんので。ただ髪の色と瞳の色で多分そうだろうと判断しました」
「あー……。だから何か最初の時の反応が微妙だったわけだ、蛇に見えてたのか僕は」
「ええ、蛇でしたね。色はそのままでしたが」
男はまた一口、紅茶を飲む
性別不明の人物は「まさかの蛇とは……」と何だか唸っていた
「ちなみに助けていただいたにも関わらず、お名前もおうかがいしておりません」
「あれ?そうだっけ??なら改めて自己紹介しとこうか」
そう言いながら人差し指で口端を押さえ、コテリと首を軽く傾けながら
「僕の名前はアンラ・アンユ。アンちゃんって気軽に呼んでもイイんだよ?」
性別不明の人物改め、アンラ・アンユは答えた
「……アンラ・アンユ様ですか」
「おーう、キレイに後半を聞かなかった事にしたね。名無し君」
「命の恩人をそんな気軽に呼べるような神経は、残念ながら持ち合わせていませんので」
「別に命の恩人って訳じゃないでしょ。名無し君は2回ともきっちりバッチリ死んでもらった訳だし」
こちらを見つめニッコリ微笑むアンラ・アンユ
ただし先程から一切、その目は笑ってはいない
「それに今回ので名無し君も無事に脱!人殺し処女&殺され処女を経験できた事だし、今後の事をちゃんと話しておこうと思ってね」
「何ででしょうね?こう、アンラ・アンユ様に言われると少しだけ憤りを感じるのは」
「それは仕様なんで慣れてくれると嬉しいかなぁ。僕はそうゆう存在で、残念ながらコレが役割だからさー」
仕方ないけどイヤになっちゃう。なんてボヤキながらも、さらに一つとお菓子を摘まむ
それなりに量を食べているように見えるのに皿のお菓子が減っているようには見えなかった
「努力はしてみます。それで私は今後どんな事をすれば良いのでしょうか?出来るならば最初の約束通り願いを叶えてくれると嬉しいのですが」
「それはもちろん。むしろ名無し君のその願いこそが必須条件だから絶対に叶えてあげるよ」
「……私が願っておいてアレですが、【悪役】が必須条件とは嬉しいような悲しいような複雑な心境ですね」
「残念ながらそうゆう職場ですからココは。諦めてね?」
いつも間にやらどこから出したのかも分からないポットを手に飲み干したのだろう紅茶を入れなおしていた
それなりに時間はたっているはずなのに注がれる紅茶はまだ湯気がたちのぼっていた




