俺たちの結婚式
ユキムラが下段で合わせていた剣に込めた力を絶妙のタイミングで抜き、バランスを崩しかけた武神忠勝の上に銀光が弧を描く。
カタリと床に落ちるプレートメイルの上半身。
「ミシックグレードか、馬鹿なやつ」と呟きながらユキムラが拾い上げる。
復活魔法のエフェクトがきらめき、すぐに武神忠勝がリスポーンする。
「やってしま」
ガッ カタン。
再び倒れる武神忠勝とその横にころがる一本の剣。
「卑怯者め~」
死んだ状態でもしゃべることが出来るのがゲームのいいところ。
「おれたちじゃないぞ」
「私よ」
神聖魔法で撃ち抜いたのは神官のロロさんだった。
「今のを中継してクランメンバーが全員で見てたんだけど、あなたの追放に全員がOK出したのよ。あなたいつも言ってたわよね。弱いやつに装備はいらないって。剣はクランのものだから回収させてもらいます」
倒れていた武神忠勝の姿はエフェクトを残して消えてしまった。
「ごめんね、見苦しいところを見せちゃって。さっきのメイルは慰謝料だからとっておいてね」
「臭いそうだからいらん、クラン財産だろ、返す」
メイルを床においてユキムラが戻ってきた。
「かっこ良かっただろ」
「黙ってればな」
俺が代表して言ってやるとユキムラは肩を落とした。
順調にレベル上げは続き、夏休みに入って第2週の日曜日には俺たちは全員レベル50になった。
トモはまだ上に上がることが出来ない。
なんという鬼仕様。
「それではここにヤマト、トモ、サクラ、イモの婚姻を認めます」
大神官になったロロの司会で俺たちの結婚式は大勢の見守る中無事に終わった。
スロットマシンのようなものを抱えてユキムラが前へ出てくる。
「それでは新郎新婦の共同作業第一回を記念いたしまして、恒例のモンスター召喚スロットを回します」
スロットが回り左から止まって行く、悪魔、悪魔、悪魔、悪魔。
そ上の三桁の数字も止まって行く、6、6、6。
何かいやな予感が、すぐにでかい声にかき消される。
「が~はははは、我は大悪魔サタンなり」
次の瞬間、前列にいた俺たち4人と出席者の1/5は死に戻りすることになった。
床から生えていた大悪魔を倒せたのは、全員でレギオンを組んで体制を整えてから一時間後のことだった。
ドロップは参加者全員にレジェンドアイテムの宝箱、俺はたぶんサタンの中に入っていた細川さんに感謝した。
大騒ぎが収まって俺たちはクランハウスである俺の屋敷に戻ってきた。
「大切な話があるから聞いてください」
サクラの緊張した声に俺たち4人は押し黙った。
「明日から暫くアメリカで遺伝子治療をすることになりました。一月ほどだと思いますがお別れです。」
俺たちはそれをあらかじめ聞いて知っていた。
成功の確率は5割以下、それでもうけなければ100%未来は無い。
こんなときゲームのアバターは便利だ。
泣き顔を見せなくていいから。
「後一つだけヤマトに謝らなければならないことがあります」
何だよ、その言い方は。
「私の血液型はA型です。最初のアレルギー発作はヤマトの血を輸血したからではありません。」
サクラが俺にしがみ付いた。
「ごめんね、私ヤマトが勘違いをして悩んでいるのを知らなかったの。最初から抗生物質のアレルギーだって分かっていたから」
俺が中学生のあのとき、道路は車にはねられた佐倉さんの血で染まっていた。
近くにいた俺は知り合いだということで一緒に救急車に乗り病院に付いて行った。
たまたま工業団地で大きな事故があり、その病院は人でごった返していた。
「先生、輸血用の血液が足りません」
それを聞いたとき俺は叫んでいた。
「俺O型です、良ければ使ってください」
その時はまだ自分はOだと信じ込んでいた。
特殊なAだと分かったのはその後のことだ。
佐倉さんの手術は無事に済んだ、しかし輸血と献血のすぐ後に全身を腫らしまるで化け物になった佐倉さんはICUに運ばれていった。
そのとき以来佐倉さんの素顔を俺は見ていない。
「ごめん。あの時は何も分からなかった。分かってからも言い出せなかった。」
俺は昨日初めて先生に打ち明けた。
原因が分かったら少しでも治療の参考になるんじゃないかなと思って。
先生はすぐに調べてみるとおっしゃっていた。
「じゃぁ元気になって戻ってくるね。さようなら」
サクラは俺の腕の中からログアウトした。
そして月日が過ぎて、俺と陽菜の卒業式の日、俺は巴さんの胸に顔をうずめて大声で泣き叫んでいた。
次回が最終回【私の結婚式】です。
長く引っ張りましたが、落とし話です。
ですのでバッドエンドにはなりません。
だがしかし
つまらないおちを想像してしまったあなた、そのとおりです、ごめんなさい。
ここで帰っていただいて結構です。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。




