わたしは料理上手
ついでということで、3人でゴブリン洞窟に入ったが、ボスはゴブリンロードがいただけだった。
ボスドロップはレアの木綿のベスト。
ありがたく俺が頂戴いたしました。
ここまで終わって俺LV23、がんばりました。
「昼飯落ちします」
「おつかれさま。マホ君ミシックドロップは公式ページに載るからPKに気をつけてね」
「はい」
「おつ」
マルスさんもダイアナさんも目立つレジェンド装備から最初につけていた装備に着替えている。
この辺が一瞬にできるのがVRのいいところだ。
めったに出ないレジェンドクラスの装備は、クエストをこなすことによって、10上のレベルのレジェンド装備と交換できるのでずっと使い続けることができるし、ミシックはそのものが成長する。
このような貴重なアイテムを得るにはドロップする、または買うのが一般的だが、持っている者をPKして奪い取ることもできる。
特に容易にPKできる低レベル者は狙われやすい。
俺の場合チビ狼の首輪や箱から出たレジェンドの剣にはロックが掛かっているし、エロ下着にそれほど未練はないし、かといって揉め事を起こす気も無い。
家の台所でさてお昼は何にしようかと冷蔵庫をあさっていたら玄関のブザーが鳴った。
「大和君、カレーだけどいっぱいあるからお昼一緒に食べようよ。今日は土曜だけどお父さんたちいないからゆっくり食べてってよ」
俺は冷凍庫にあったシャーベットを3つ持って隣の家にお邪魔した。
エプロン姿の女の子が二人でカウンターの向こうの台所できびきびと動き回っている。
俺がカレーを食べるならチンして掛けていただきますだけなんだが、なにをしてるんだろう。
「これもしかして、インドのコース料理ですか?」
ご飯を中心にして、何種類かのカレーの入った器が並んでいる。
「ちょっと気合入れてみました」
「けっこう仕込みに時間掛けたんだから。おいしいと思うよ。自信作。どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
至福の時間が流れる中、話はどうしてもVRRFになる。
「今二十ちょっとかぁ、40になるのは明日くらいね」
「お嬢様、それは少し、いやとても無理だと思われますがいかがなものなんでしょうか。それとも死ねと」
「死ぬのはわたし達の孫やひ孫にいっぱい囲まれてにしてほしいわね」
ワタシタチデゴザイマスカ。
「ところでミシックグレードの何か出したみたいだけどどこで出したの?」
「レベル20の狼洞窟。キングがいてペットの首輪が出た」
「えっ!ペットの装備ってあるの?知らなかった」
「私も」
「ペット管理人の後ろに座っているNPCが店売りしてるだろ」
「あのNPCは『忙しい忙しい』って言ってるだけよ」
「それきっとペットを出していないからだと思う。レベルが低すぎるペットのためにお金払えば調教ってレベル上げをしてくれるよ。自分とのレベル差が10以内でないと経験値の分配が出来ないだろう」
「つまり、ペットが戦闘に使えなかったのってレベルが低かったからだけってこと?」
「そう」
「ところで狼洞窟のキングってどうやって倒したの?一回見たことが有るけどとても一人や二人で倒せると思わなかったわ」
「マルスさんとダアナさんってペアと一緒になったんだ」
「それ家の両親」
「えっ」
世の中は狭くゲームの世界はもっと狭い。
二人は佐倉さんの両親がゲームし始めたのを聞いて、昔してた3D時代のMMORPGが懐かしくなってログインすることにしたらしい。
二人とも今日、レッドテンペストに合流する。
巴さんと陽菜はこれから習い事があるってことなので、夜にゲーム内で会う約束をした。
そして俺はまたログインする。
待ち合わせ場所で待っていたサクラが自分の猫を両手で差し出した。
「猫のレベル上げ手伝って」
猫の調教には二人の手持ちのお金ほぼ全てを使ってしまった。