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第48話 一夜漬けなんてこんなもんよな

前回のあら寿司

 武田軍の美濃侵攻に伴い、先に侵攻開始していた織田軍を足止めさせるべく木曽川を挟んで対峙する形となった浜・武田連合軍。霧雨の中で着陣し、一晩明けたそこに待っていたものとは?

 翌朝、日の出と共に目覚めると味方の陣営は騒然としていた。


「な、なんじゃこりゃあ!? 」


 泊まるために借りた民家から外へ出ると昨夜の雨と霧は晴れていてその先、距離にして一里(4キロ)あるか無いかの先に巨大な城が姿を現していた。

 城としては昨日見た稲葉山城には遠く及ばない小さな城だが、それでも現代の感覚なら何もなかった川沿いの原っぱに突然二階建てのイオンモールが出来ていた! ぐらいの感覚だ。その周りには織田木瓜の記された軍旗が立ち並び、織田の軍勢が警戒の為に周囲をうろついている。


 なんで!? 昨日来た時はあんなの無かったじゃん!?


 当然、俺以外にもここに居る全ての武田側の将兵は皆騒然としていて、蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。武田兵の誰かが俺を見るや、参陣した武将の集まる場所へと連れていかれる。そこにはすでに義信・勝頼を中心とした武田家のメンツが勢揃いしていた。


「さすがにこのような場所に城を構えられては攻めるのは厳しいかと」


 そう言って顎髭をさするのは武田の重臣・秋山虎繁(あきやまとらしげ)。いかにも猛将と言った雰囲気だけど「突撃あるのみ! 」とか根性論でアホな事言わないのは年の功もあるのかな。



「あの程度の城、我らが武田が総掛かりで攻めればどうという事は無い! 突撃あるのみだ!! 」


 うわぁ、居たよそんなテンプレ的なヤツが。勝頼、ホントにお前ってばある意味期待を裏切らないよな。


「そんな事をすれば味方にどれ程の被害が出るか考えておいでですか!? ここは策を練り……」

「五月蠅い! ジジイどもは黙っておけ!! これは父上より我ら兄弟が任された戦場ぞ! 」


 止めようとしたのにジジイは黙っとけで一蹴された重臣・高坂昌信(こうさかまさのぶ)は怒りを抑えて下唇を千切れんばかりに噛みしめる。さすがにこんなクソガキにあんな言われ方すりゃ、ムカつかない方がおかしいってもんだ。


「稲葉山の斎藤どのは『こんな目と鼻の先に城を作られては美濃はもう終わりだ』と喚いておられるそうです。勝手に織田に降伏などされる前に手を打たねば」


 と報告するのは先程、稲葉山城からの知らせを持ってきた信玄の側近・山県昌景(やまがたまさかげ)。それを聞いて「ホレ見た事か突撃しかないだろう」とドヤ顔で喚き散らす勝頼。イヤもうホントこれどうすんのさ……


「ふむ……この状況、寿四郎殿はどう見るか?」


 そう意見を俺に求めるのは腕を組んでずっと考えこんでいた総大将の義信。その場にいた全員の視線が俺に集まる。

 攻めるか様子見か、って判断よりもまずはあんな城が何で一夜にして現れたのかの方が疑問なんだよなぁ。映画のセットじゃあるまいし……ってうん?



『ワシゃあな、コイツを使っていつか大掛かりな城を作っちゃろうと考えとるんじゃ! 』


 何年か前に堺の街でそんな大きな事を言っていた、ネズミ顔の男が頭に浮かぶ。それと前世(現代)で聞いた覚えのある【墨俣の一夜城】というワード。だとすると、もしかしたら。



「あれは敵の策である可能性があります。火矢を撃ち込んでみてはどうでしょうか?」


 俺の言葉にその場にいる一同がポカーンとする。そのあとに一人の男の豪快な笑い声。


「貴様は何を寝ぼけた事を! 石垣や壁に火矢など放っても効くわけが無いわ馬鹿め」


 突撃あるのみ、って言ってたクセにそこは反対するんだなコイツ。最後の馬鹿めがムカついたが務めて冷静に応える。


「策でないとしたらそうでしょう。もしそうだったら他の攻め手をまた考えればいい!

 でも、もし私の予想が当たればそのまま攻め落とせるかもしれない。試してみませんか?」


 俺の必死の説得に「んな無茶苦茶な」って顔をしていた一同の顔つきが変わる。約一名を除いてだが。そしてそんな場の雰囲気を義信がスパッと締めくくった。


「確かに、寿四郎殿の案、試してみる価値はある。出陣の支度だ!! 」



 軍議が終わるや否や、すでに準備をしていた兵たちに指示を飛ばして陣形を組む。敵に向かって正面が武田義信率いる本隊4千、左右に勝頼と俺の率いる部隊が3千ずつ、合わせて1万の軍勢だ。それに対して織田軍は8千を率いてやって来ているらしい。兵力的にはこちらが上回るが、城攻めとなれば厳しい数字、果たしてどうなるか。


「殿ー!! 殿ー!! 」


 叫ぶ声と共に二人の男が荷車を引いてガラガラとこちらへやってくる。その荷車に積まれたのは城で(みつ)が蹴飛ばしていた、西洋の甲冑。その時に付いたものか、頭部の一部がボコっと凹んでいる。なんだ?この期に及んでコレを着ろとかいう奴が居るのか?


「竹中半兵衛(はんべえ)殿より先程、書状を賜りましたゆえ。こち、こちらに」


 甲冑の中から声がするとその主は自分の懐に手を伸ばそうとするが、腕の部分も重いのか手が届かずにガクッと力を失う。

 ってか、その声は中に入ってんの軍監じゃん! お前自分で着るのかよ!! しかも重すぎて結局動けないとかアホの子なの??


 呆れた顔で荷車を引いてきた者が手紙を受け取り、俺に手渡した。


『申の刻(午後3時~5時頃)東より大蛇来たり。織田方、川沿いに追い込むべし』


 どういう意味だか分からないが、少なくともそれまでにこの出城は落とす必要があるのか。さて。


「軍監、用意してた例の物は準備できているか?」

「数は揃えられておりませんが、20丁ばかりなら」

「構わん、火矢と共にあれも使う。スズキにそう伝えてくれ」


 2年前の戦いで南蛮製の見様見真似か大砲を作ってみたものの、重くて運びづらいのと1発辺りでアホみたいに消費する火薬と鉄球の量産が足りずに実用できなかった経験から、鉄砲と大砲の間くらいの中筒『石火矢(いしびや)』を2年かけて開発していたのだ。現代で言うところの携帯型のバズーカと言ったところか。もし火矢が効果が無くて無駄に終わっても、この石火矢なら石垣や城壁にも多少はダメージを与えられるだろう。


 準備が整い矢の届く距離まで全軍前進すると、ウチの弓隊と義信本隊の弓隊が前に出て火矢をつがえる。勝頼の部隊は元より効果が無いと馬鹿にして、矢を放ったらすぐに突撃できるように前線を騎馬隊で固めているが。


「全軍、放てえぇぇぇ!! 」


 義信の掛け声と共に数百に及ぶ火矢が放たれ、目の前の城にドスドスと命中する。「ちゃんとした」石垣と城壁なら矢は地面に落ちて辺りの草を燃やすだけのハズだが、刺さった矢は石垣を燃やして濛々と黒煙を上げている。


「いいぞ! 石火矢隊、放て!! 」


 そして俺の掛け声と共にスズキ率いる鉄砲部隊が石火矢と鉄砲を同時に放つ。こちらも普通の石で出来た城壁ならここまでは崩れないだろうってレベルでボロボロに崩れ、辺りを守っていた足軽もバタバタと倒れていく。


「見たか! 浜殿の読み通り敵の城は偽りの策ぞ!! 全軍で押しつぶせ!! 騎馬隊に続けぇ!! 」


 味方部隊全体に響き渡るほどの音量で義信が叫ぶと、火が付いてボロボロになったハリボテ城目指して味方の兵が押し寄せる。一方で策を読まれる形になった織田方は対処に大慌てで対応できないままに押しつぶされる形だ。

 ウチのはま騎馬隊もコレが待ちに待った初仕事とばかりに嬉々として先陣を切って敵陣に雪崩れ込んでいる。特に磐田さんは味方の騎馬兵すら勢いで押しのけて敵に斬りかかるぐらいの働きっぷりだ。これはもう、勝負あったな。


 やっぱ所詮、一夜漬けのハリボテなんてこんなモンよ。

ご観覧ありがとうございます。

是非とも面白い作品に仕上げていきたいと

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