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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第三章 人魔を渡る者
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3_18_魔具と魔武

こんにちは、お久しぶりです。

やっと投稿できました……相変わらずストックは無いので次の更新も遅くなりそうですけど。


そして、今回は詳細な説明をしていなかった魔具についての説明回的な扱いです。

ややこしい説明になってしまいましたが、ご了承ください。


あと、説明回として色々と魔具の設定を確定した流れで、属性変換から系統変換に呼称を変更しました。

他の話でも系統変換に切り替えたんですが、もし切り替え忘れている部分があれば教えて頂けると幸いです。




オリビアさんの店に到着した俺達は、金貨を出し合って買いに来たんだと説明した。


「……つまり、頑張って稼いだ金貨を握りしめて来たのね」

「そうなんだよ。だからさ、色々と見せてほしいんだけど」


すると、オリビアさんは自身の体を搔き抱く。

コルネさんほどではないが、それなりの胸部が強調されるようである。


「金貨12枚なんかで私の体は買えな」

「ここ魔・具・屋!! しっかりしろ店主!」



久々の来店だというのにネタから入ろうとしたオリビアさん。

そして、しっかりツッコミをしてしまう俺だった。


「とりあえず、どんな魔具が欲しいか聞かせてくれる?」

「おう」


なんだこいつ……って目を他の客が向けてくる中で、オリビアさんに詳しく説明する。


一般生徒でも入手しやすい値段で、戦闘に使える性能を持ち、色んな種類が欲しい、と。



「条件が広すぎ」

「ですよね~」

「それに私の店では安い魔具なんて碌に扱ってないの」

「てことは……」

「他の店に行きなさい」


そうなる予感はしてたんだよな。

以前に試用させてもらった魔具も金貨200枚だろ?


授業で魔具についても幾らか習ったけどさ、それこそ系統変換だけで恐るべき技術が利用されているんだ。


で、あの魔具は思い出してみても系統変換以外の性能は無さそうだった。

つまり、それだけで金貨200枚……高すぎる。


「でも折角だから選び方ぐらいなら教えてもいいわよ」

「へ?」

「要するに色々と試したいんでしょ?」

「おう」


すると、系統の強みと弱みを意識して、目的から選ぶべしってオリビアさんが教えてくれた。


系統で言えば攻撃が得意なのは火系統と風系統であり、防御であれば地系統だ。

補助には光系統、治癒が水系統、妨害が闇系統って具合になる。


あくまで基準であるため、魔法の行使者が得意な分野なども影響してくるけど。


俺は特に苦手な分野も無ければ、得意という分野も無いバランス型だな。

そうなると攻撃が得意な火系統であるからして、それを伸ばすか他を補うかを単純に考えればいい。


「ん~……やっぱり防御は必要かな」

「それなら一番扱いやすいのは、即時発動式の魔具ね」


詠唱不要の即時発動式がオススメであるらしい。

防御なんてのは相手の攻撃を見てから判断して詠唱すると、間に合わない場合も多いからである。


だから魔力を篭めるだけ、もしくはその上でキーワードを唱えるだけで発動するのが便利なんだ。


「そこから魔力量に応じて魔石充填か魔力充填かも選んでいくの」

「ほうほう」

「どっちにも切り替えられる設計もあるけど、そういうのは価格も高くなっていくわね」


やはり機能が複雑であるほど価格も高いらしい。

あとは魔具の大きさも影響するし、系統人口でも左右されるそうだ。


で、少し気になったので聞いてみる。


「あのさ、前に学校の生徒が使ってた魔具なんだけど……」


適応される魔力が光系統で、その一部を風・時空の2系統にも系統変換しつつ、対象の認識以外を補填して光系統初級攻撃魔法を行使出来る上に、キーワードで浮遊し続けるし、魔力残量が一定量を割ったら自動でホルダーに転送される機能まで併せ持ち、しかも8輪1セットで掌サイズ。


こんな魔具が存在するとしたら、どれほどの値段なのだろうか。

オリビアさんだけに聞こえるよう確認してみた。



「黄金貨600枚ね」

「うっわ……」


目玉が飛び出て蒸発するような値段である。


「たしか、その魔具はフォトンサテライトよね?」

「え……知ってんのか?」

「私の作品だもの」


なんとオリビアさんが作った魔具であるらしい。


「他にも機能があるのよ? 教えないけど」

「そっか……知りたいけど我慢しとく」


聞くとしてもシャロンからだな。

にしても黄金貨600枚とか、貴族でも手出し出来なさそうな値段である。さすが名門。



「あんな反則級の魔具なんて忘れなさい。もっと手の届く範囲に良い魔具があるんだから」

「いや忘れられねえよ。値段が」



とはいえ、あんな価格の魔具を買えるわけでもないため普通の魔具について聞いてみた。


まず、即時発動式。

これは魔具の回路で魔法の行使までが組み込まれているため、必要な魔力さえ充填出来れば誰でも同じ魔法を用いる事が出来る。

魔力を篭めれば勝手に起動するなら即時発動直通式、キーワードも必要なら即時発動解錠式って呼び方に変化するそうだ。


俺達がダストゼライムの掃討に用いた浄化用魔具は、即時発動直通式である。


で、使いたい魔法系統と利用魔力の系統が違っていた場合、系統変換を介さなくてはならないため複雑な機構になっていく。


さらに魔法の等級によっても複雑さと大きさが増していくから初級なら手に握る程度で済むが、上級までいくと市場に出回っているサイズは大人3人分ほどの重量になるんだ。


あとは自身の魔力を使う魔力充填か、魔石を使う魔石充填かでも違ってくる。

魔力充填なら個人の魔力を用いるため簡単な素材で済むが、魔石充填である場合は別の素材や機構を用意する必要があるんだ。


というのも魔石には種類があり、無系統というか誰にも属していない純魔力を蓄える純魔石が代表的である。これを砕けば純魔力が拡散されて魔力回復が促進される作用があるんだ。

医務室とかじゃ魔力の枯渇で運び込まれた生徒に対して頻繁に利用されているな。


そして他には系統別魔石。誰にも属していないという点では純魔力と同じだが、系統が備わっている。これが魔具に利用されているタイプだな。

だから蓄えられているのは系統魔力と呼ばれているのだ。ややこしい。


で、魔石充填で魔具を使用するとしたら、この系統別魔石を使うのである。


しかし……誰にも属していないが故に留まらない、という問題点がある。


系統別魔石から系統魔力を搾り取ったとしても、そのままでは拡散してしまうだけなんだ。

だから特殊な素材を使って回路から魔力が離れないようにする必要がある。

それだけで少し割高になってしまうし、機構も考えなければならない。


機構については更に難しくて……単純に言えば魔力充填であれば回路を全て繋げなくていい。


個人の魔力は基本的に体を離れず、身に纏うように留まっているからだ。

その身に纏う範囲は触れてさえいれば魔具にも広がっていく……というより魔具を利用すると意識すれば自然と伸びてくれるのである。触る必要はあるけどもな。


だから威力設定だったり速度設定だったりの回路が繋がっていなくても、魔力が全体に浸透しているため勝手に接続してしまうのだ。



一方、魔石充填である場合は事情が変わってくる。

さきほど説明したように個人の魔力ではないため拡散してしまうのだ。

だから魔力が離れない素材を用いて、回路全てに浸透するよう繋げる必要がある。



さて、他に有名なのは蓄魔石だ。これは個人の魔力を蓄積する特殊な魔石である。

魔力を練り上げ篭めるだけで吸収してくれ、用途としては予備魔力として使うのが主流だな。


砕くと魔力が拡散し、近くに魔力の持ち主が居れば体内に戻るんだ。

そうすれば魔力が枯渇していても一気に回復する事が出来る。かなり便利。


また、技術的には上級を扱えても魔力的に不足している人が使ったりする。

魔力が体に満ちていると体内に戻る事が出来ないため、周囲へ留まるだけになるからな。

それすら一緒に利用すれば魔力不足の問題が解決するのだ。


ただ、扱いが難しい。

蓄魔石は質によって蓄積量も違うし、砕かないと使用出来ないからタイミングを見極めるのが案外難しかったりする。


あとは”砕く”という方法が厄介だ。戦闘中に転がったりすれば砕けてしまう可能性もあるからな。

それこそ近接戦闘を主流にしている冒険者なんかは意図せず割れると丸損なため、所持しないようにしているとか。


更に言えば、数さえ揃っていれば個人行使が禁止されている魔法まで行使出来るほどの魔力が確保出来るため、所持には資格が必要だ。


法が整備され始めてから制定された規則なんだが、もし破れば軽くて懲役十数年。隠し持っていた数によっては国家反逆罪にまで届くのだから、気軽に持ち歩けない代物なのである。





……と、ここまでオリビアさんに説明された。


学校で習った範囲も出てたけど、一気に聞くと頭が痛くなりそうである。



「ちょっと休憩させてくれ」

「あら、まだ即時発動式の説明すら終わってないのよ?」

「どんだけ脱線してんだよ」

「他の説明も必要になってくるのよね」



ん〜……どうすっか。


すると、このまま聞き続けるべきか悩むそぶりが出たのかオリビアさんが溜息を吐く。


「はぁ……仕方ないわね、他は簡単に説明してあげるわよ」

「お願いします」


とことで説明を続行。



魔具には即時発動式の他に、部分制御式と介入制御式などが存在する。


部分制御式というのは、威力だったり速度だったりの制御回路が特定の部分だけ無効になっている魔具である。


例えば火系統の”バーンボール”を対象とする場合に威力制御だけ無効化していれば、そこだけは魔法の行使者が制御する権限を持てるのだ。

つまり全て制御する必要がなく、威力だけ底上げした魔法の行使が容易になる。


特徴としては価格が高い。なぜなら無効対象の回路を組み込まないわけではなく、無効対象の回路を組み込んだ上で、それを無効化する回路を更に組み込まなければならないからだ。


そして無効にした制御の権限を行使者に明け渡す機能まで組み込まなくてはならないので複雑になっていく。即時発動式より値段が高くなるのも道理である。




で、介入制御式は行使者の魔法構築に介入する魔具である。

つまり詠唱が必要であり、そこで勝手に魔法を弄くられると解釈したらいい。


例としては”バーンボール”を大爆発させるぐらい威力を上げようとしても、平均的な威力に固定されるような機能がある。


特徴として、対象の魔法が等級単位で対応出来るために汎用性が高い。

しかし介入する制御の数が1つだけなら指輪サイズで大丈夫だけど、複数であるなら複雑になるためサイズも比例して大きくなる。


そのため1つの制御だけに介入する指輪タイプが主流であり、励起制限の指輪なんかも介入制御式と言えるな。


しかし、励起制限の指輪は等級など関係なく魔力を励起させないのだから、少し例外的に扱われているようだ。



「こんなところね。一般層は即時発動式、富裕層には部分制御式が人気よ」

「介入制御式は?」

「平均的な人気よ。苦手な制御だけを魔具に任せる用途が多いわね」

「けっこう便利に思えるけどな」

「案外不便な場面もあるのよ。介入されるんだから、自由が無いのと一緒だもの」


そういうもんか。



てなわけで……



「とりあえずよ、自分達の魔具から用意しようぜ」


そうラグが提案し、皆が頷く。


「だね。まずは自分達の魔具を選んでから、こんな風に選んだって題目で掲載して……」

「その前に選び方の掲載でしょう。そこから自分達を例にすればいいと思います」

「そっから他にどんな種類があるかを載せればいいか」

「よっしゃ、あとは価格も調べて……使用感とかはどうする?」

「それも自分達を例にすれば良いでしょうね」


というわけで、オリビアさんに礼をして店を出よう。


「ありがとなオリビアさん」

「買うのはいいけど、ちゃんと学校の職員から許可を貰って使うのよ?」

「了解! んじゃまたな!」


てことで店を飛び出して、他の魔具屋を探し始める。


何も考えず探しても時間が浪費されるため、仕方なく地図を買う事となった。



「地図を見ずに散策するのが楽しいんだけどな……」

「ドリポートがあるじゃねえか」

「そっちは地図必須だろ! 迷うって!」


そんなこんなで南区の魔具屋から重点的に回り始める。


最初に辿り着いたのは木造の建物であり、広さは一世帯用の借家ってぐらいだな。


店内は明るく、客の数も多い。誰もが手に持ってみたり店員に詳しく聞いてみたりと商品を吟味していた。



「系統別で陳列されてますね」

「だな。ここは二手に分かれるか?」

「悩ましいね。他系統の魔具を知るってのも大事だと思うし」

「けどあんまし時間が無いだろうな」

「ここは後で情報共有する事にしましょう」


そうと決まれば吟味開始だ。早速ラグと一緒に火系統の陳列スペースに移動する。


「まずは攻撃用から見るか」

「んだんだ」



最初に見つけたのは小さい立方体の魔具だった。


どうやら即時発動解錠式の魔力充填であるらしく、キーワードも魔法名っていう基本的な性能だ。


行使できるのは初級攻撃魔法……”バーンボール”だな。


かなり安い。銀貨1枚って値段だった。


すぐ隣には魔石充填で置いてあり、こっちは銅貨2枚分だけ高いな。


「ただの固有か……しかも初級」

「ちょっと驚かせるくらいか?」

「握っとかないと使えないってのも欠点だな」


てことでパス。次に見つけたのは介入制御式の指輪タイプ魔具だった。


幾つも種類があり、それぞれ射出速度・威力・維持待機・操作・解放などの制御用途別であるらしい。


ただ注意点として、必要がない制御に対しては効果がありません、と記載されていた。


つまり動かせない魔法だったりで操作制御介入の指輪を使っても意味が無いんだな。



「これは苦手分野の補填に使えそうだな」

「んでもさ、けっこう限定されるよな」


威力に関しても固定だったり増幅だったりで分類されているし、限定的であるようだった。


「たしかに邪魔な場面も出てくるか」

「その度に脱着すんのも面倒だし」


少し悩んだが、保留。指定された等級内なら複数の魔法に適用するので、そこらへんは汎用性もあるんだけどな。


けど値段も比例して高く、銀貨2枚だ。中級用となれば銀貨5枚……平均的な人気というのも頷ける。



「利点と欠点はメモしとこうぜ」

「おう」


てなわけで情報だけ書き留めてから物色再開である。




・・

・・・



「どうでした?」

「それなりに情報は集まったけどよ、まだ買ってない」

「こちらもです。それなりに有用なんですが、買うとなれば躊躇いますね」

「まあ次の店に行ってみようよ」



てことで次の店へ。こちらは石材で作られた建造物であり、前の店より2倍ほど広い。


かなり商品が多いのかなと期待して入ってみると、半分が試用スペースだったため規模としては前の店と同じであった。



しかし試用できるのは助かる。使用感なんかを確認するには必要だからな。


品揃えも殆ど同じようであり、初めて見る魔具だけ探してから、気になる数点を試用させてもらった。



まずは最安値の火系統初級攻撃魔法・即時発動解錠式・魔力充填・単発型の魔具である。


性能で呼ぶと長ったらしいが、魔具名は”火遊び”というらしい。他の系統で同性能なら”水遊び”だったりだな。


ちなみに、”型”というのも種類がある。

単純に一発の魔法を撃つだけなら単発型だな。

シャロンが使っていたのは展開型、掃討で使用した浄化用魔具は持続型という分け方である。


まあ、展開型は充填した魔力が尽きるまで起動しっぱなしだから持続型にも思えるんだが、そこは魔具の特徴を表すような呼び方で採用されるらしい。ややこしいけど。



ともあれ、俺は初歩的魔具を左手に握り締め、右手を突き出して使ってみる。


魔力を練り上げるように意識し、キーワードを唱えた。



「”バーンボール”!」


ボヒュッ、と実用的な規模で魔法が飛び出し、的へ当って爆発を生じさせる。



「……便利だな」


素直に思った。詠唱不要で実用的な魔法が行使できるのだから。


さっきのだって俺が普段から構築してるのと同程度であり、特に不満も無い。


「案外これ使えるんじゃね?」


そう言いつつラグのほうを見ると、的へ向かって詠唱を始めていた。


「おおおぉぉぉぉっ!! ”燃やし焦がすぅぅ! 火神の戯れええぇぇぇっ・・・バーーーーーンボオォォーーール”!!」



凄まじい気迫と共に魔法が構築され、ついにラグの突き出した手の先から火球が飛び出す。

それは目を見張るような速度で直進し、狙いたがわず的へ到達。



そして、ボンッ……と普通の爆発が起きた。


「なんで威力だけ抑えてんだよ」


どんな大爆発が起こるか期待してたのに、これは酷い。


するとラグが俺へと向き直り、左手の指を見せてきた。


そこにあったのは指輪だ。ラグも試用していたようである。



「威力固定の指輪を試したんだけどよ、すげえなコレ」


なんでも全力で規模を底上げするつもりだったようで、もちろん威力も店を吹き飛ばすぐらいの意気込みで構築したらしい。


しかし指輪の効力で威力だけは平均的な程度に固定されてしまい、あんな拍子抜けする魔法が出来上がったそうだ。



「ってか叫ぶ必要は無かっただろ」

「そうしたほうが効くじゃねえか」


たしかに気持ちを込めたほうが威力とか上げやすい気はするけどさ、叫ぶまではしなくていいだろ。


すると今度はハイクが隣で詠唱を始める。


「”飛翔し切り裂く風神の戯れ・・・ウインドカッター”……!」


しかし前方へ飛び出すはずだった風の刃は、後方……ハイクの顔目掛けて飛翔した。


寸前で避けようとしたものの、さすがに避けきれず頬を薄く切り裂かれる。


大怪我ってわけでもないから焦りはしなかったけど、少し信じられない気分だった。



「まさかハイク……反動か?」


その問いに、ハイクは笑って答える。


「っははは。失敗しちゃったよ」



ハイクが反動起こすなんて珍しいもんだ。しかも初級だぞ?


「どんな魔具を使ってたんだ?」

「この2つ」


渡されたのを見てみると、威力固定の指輪と威力増幅の指輪だった。


「この組み合わせって……」

「もしかしたら増幅した威力を固定するかと思ったんだけど、違うようだね」

「まず店員に聞けよ!」


とりあえず撃ってんじゃねえし!


どうやら結果としては威力の固定と増幅が共存できなかったようで、矛盾となったそうだ。そして威力の構築が不完全なまま魔法を行使してしまい、反動が起こったと。


そんな結果に、なぜかハイクは残念がる様子も無かった。



「他にも組み合わせてみるから、離れてて」

「危ねえ事すんなよ?」

「分かってるって」



・・

・・・



それぞれ気になった魔具の試用が済み、俺達は店の外に出た。


いったん情報交換を行うためであり、近くの喫茶店に入って語り合いだす。


「やはり価格が懸念ですね」

「だな。最低価格で銀貨1枚ってのが一般生徒には重い」


ソマリの意見に賛同しつつ、ラグがテーブルの上に何かを転がす。

見てみると指輪だった。これ買ったのか?


「この指輪だけで銀貨2枚だ。大人の日当と同じだぜ?」

「それで効果は限定的だからね。幾つかの魔法に適用されるけどさ」


う~ん……と4人で唸りながら考え込む。


装備で一気に強くなるのは難しそうだ。

あくまでも道具であるため、補助的な意味合いに収まってしまうのである。


もちろん価格に糸目をつけないならば話は別だろうけども。



シャロンの魔具とかは魔力を込めてキーワードを唱えれば、尽きるまで”フォトン”を撃ち続けられる。

対象の認識さえ制御すればいいし、改めて考えると反則じみた性能だ。


手も塞がらないよな……しかも本来は8輪なんだろ? 手数も多いし回収は自動で行われるし。



「あ……」

「どした?」


俺が挙げた声に、ラグが反応する。指輪をくるくる回して遊んでいたんだが、俺は気になった事を伝えてみた。


「シャロンの魔具ってさ、あの鉄輪は同じ場所に留まってたよな?」

「あの交渉試合で使ってた?」

「それそれ」

「……たしか、留まってましたね」


やっぱ、そうだよな。


ハイクの上級魔法から走って逃げてたときも鉄輪は置き去りだった。


撃ち尽くして回収されたから無事だったけどさ、もしかして浮かすだけで動かせないのか?


だとすれば決定的な弱点だな。魔具を狙われたら何も出来ず壊されるだろう。



……いや、あの弾幕を潜り抜けて破壊するのも骨が折れるよな。


けど魔具を守るために撃ち尽くしては意味が無い。相手も何かしら消耗するだろうけど、本来の用途じゃないだろう。


それに動かないなら”フォトン”の届かない障害物なんかを利用すれば安全地帯を確保できる。


まあ、隠れてる間にシャロンから別の一手が撃たれるだろうけどさ、一時凌ぎは出来るな。



「何を考えてるんですか?」


ふと、ソマリに声をかけられる。どうやら考え込んでしまっていたらしい。


「いや……あの魔具も欠点があるんだな、って」

「そりゃそうでしょうね。高性能ですが、いわば固定砲台ですから」

「動かせるようになったら更に厄介だけどね」



というわけで、脱線してしまったものの俺達は話し合いを続けた。


結果としては、魔具で一気に強くはなれないという結論である。



しかしそれだと夢も希望も無い話で終わってしまうため、別の方向で考えることにした。


それは魔具を知る事であり、自分達は強力な装備を持っていなくても、相手の装備を攻略できればいいのである。



対抗試合の出場者選抜で課題となるのは対戦相手の装備になるだろうからな。


選抜に申し込む生徒の多くが貴族のはずであり、申し込むからには装備だって充実させているだろう。



そんな相手に最安値の魔具だけで勝とうとするのは難しい。たしかに使い方次第だろうから勝機はあるのかもしれないけど、勝ちに行くなら不足している。


だからこそ、相手の装備を攻略してしまおうという考えである。



「ひとまず選抜も近いので、飛躍的に強くなるよりは傾向対策を練る方が現実的ですね」

「だな。それによ、魔具に頼りきりだと魔法の実力が成長しないもんな」

「あ、そうか」


たしかにラグの言うとおりだ。


魔具なんてのは人が魔法を構築する際の手順を自動で行うような役割だから、使っている内は自身の実力が伸びないだろう。


魔法の修練は武術と同じで反復練習が必要になるのだ。



便利な……いや、便利すぎるってのが欠点にもなり得るのか。



「んじゃ方針をまとめっか」


ラグの一言で俺達は追加の飲み物を注文しつつ、都歩きに掲載する情報の概要を相談し合った。


まず、魔具にも様々な機能があり、それら次第で値段が釣りあがってしまうという事。


その一例として幾つかの魔具を紹介し、こういう機能は少し高くなる……だったりの値段設定についても概要を記載しておこう。



続いては使用感の掲載だな。実際に試用させてもらった魔具の性能と使用感を掲載して、ハイクが起こした反動のような組み合わせも注意点として載せる。



続いては近日行われる選抜でのアドバイスとして、相手の魔具を攻略していこうと促す。


言われなくてもわかってるだろうけどさ、何が弱点なのか見極めるコツだったりを先輩達に教えてもらって載せればいいと思う。


出来れば貴族達が使ってる魔具を紹介して、攻略法の説明だったりを追記できれば具体的になると思うんだが・・・・・・難しいだろうな。



それこそ選抜も近いっていうのに手の内を曝け出してくれる者なんて存在するのだろうか。

選抜に出ない人なら大丈夫かもしれないけど、それでも確実かは分からない。なんにせよ交渉してみないとな。


「なあ、魔武は?」


そろそろ概要をまとめ終わりそうだった頃合でラグが声を上げる。


魔武……魔法武器の略称だな。武器としての扱いが主体だけど、魔法を使えたり構築を補助したりするような性能だ。


魔具と何が違うかといえば、簡潔に言えば道具か武器かの違いだな。


たいていの魔武は即時発動式の魔力充填が主流だと聞いている。複雑な性能を持たせるための回路スペースが容易に確保出来ないからな。


それこそ一部の制御補助だったりなら介入制御式の指輪で充分なわけだし、剣などで近接戦闘しながら不意に魔法を浴びせるって用途が人気である。



ただし回路を刀身に刻むわけにはいかない。すぐ駄目になってしまうからだ。


ほとんどは柄に刻み込んで、革などを貼って保護する。

だから単純な性能しか発揮できないのが関の山。



まあ、英雄が使っていた魔武なんかは刀身にまで回路が刻まれていて、上級魔法を即時発動していたなんて逸品もある。


しかも武器の素材が恐ろしく硬いらしく、どれだけ斬っても回路が駄目にならなかったとか。



しかし魔力充填であるため、戦闘中に使うなら1発が限界だ。切り札って扱いだろうな。


とまあ、そんな感じの魔武なんだが、ラグはこちらも調べて掲載すべきかどうかを聞いているのである。



俺としてはどっちでもいいけど、対抗試合や選抜では支給の武器しか持てないから、今回は保留となった。



あまり広げすぎると内容が薄くなるかもしれないし、ひとまずは選抜に焦点を合わせるから、って理由だな。



そうして……なんとか概要が固まった俺達は他の魔具屋での情報収集を続行するために喫茶店を出たのであった。


ちなみに、選抜に向けた準備として俺達は魔具を購入した。


しかも、他に幾つか学校内で試用できるように数点も買い足したため、今日の稼ぎは消えてなくなってしまったのである。



次回・・・個人戦 第一選抜 開始前


2/12に次回タイトルの予告を変更しました。



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