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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第三章 人魔を渡る者
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3_16_再突入

こんにちは。


少し更新のペースが落ちるかもしれません。

他にも書きたい作品の誘惑が……既に2本持っているのに……悩んでます。



洞窟で休憩を取り、初心者へのボーナス依頼である事を教えてもらった俺達は感謝を胸に進んでいた。


ここから先は未掃討エリアであり、より一層気を引き締めなければならない。

油断せずに周囲へ気を配り、たまに発見するダストゼライムを倒しつつ進む。



やがて開けた場所へ出て発見したのは……ダストゼライムの大群だった。


それはもうウジャウジャと、開けた場所のはずなのに地面は隙間さえ無いほどだ。

これ全部が悪臭の元なのだから、魔具が壊れたらと考えるだけで身が竦む。



「これは……凄まじいな」

「魔法で一気に倒す?」

「よし、風系統か水系統で倒そう」

「それじゃ、俺がやります」



ハイクが名乗り上げ、リーダーが頷く。

前に出たハイクが腕を突き出して詠唱を始めた。


「"刻めよ刻め風に囚われ、抉れよ抉れ果てる時まで、全てを包む鋭き抱擁、骨身を晒せ風神の腕・・・トルネード"」



まさかの上級魔法。ハイクにとっては普通なのかもしれないが。

詠唱の途中でリーダーが驚いたようにハイクを見たけど、止める間もなく魔法が行使される。



そして、威力は低く設定したらしい竜巻がダストゼライム達を斬り刻み始めた。

竜巻の大きさも制御したのか、交渉試合で見た時の半分ほどだ。


しかし魔物にとっては関係なく死を運ぶ風であり、ハイクの制御で竜巻は満遍なく蹂躙していく。


やがて竜巻が消滅すると、生き残っているダストゼライムは1匹たりともいなかった。



「魔力は大丈夫ですか?」

「大丈夫。規模を押さえたから消費も少ないよ」


まだ魔力は空になっていないようで、足取りもしっかりしているな。


「2割でも減らせば上出来だったんだが……」

「こんな……おまえ、上級……」



リーダーが呟くように言葉を零し、ジェイドは驚いているのか口をパクパクさせている。



「俺達の分も残せよな」

「その台詞言いたかっただけだろ」

「あ~、ごめん。時間も余裕無さそうだったしさ」

「そうですよ、これが最良です」



ともあれ、このエリアは掃討できたので奥へ進もうと思う。



しかし、問題が発生した。



「これ、どうすんの?」

「酸性だよな」



隙間も無いほど埋めつくされていたダストゼライムが刻まれたのだから、それはもう見渡す限り体液が散乱していた。


このまま進むと靴が溶けるよな、これは。



「仕方ない。俺が流そう」


水系統であったらしいリーダーが"スプレッド"を行使する。


ダストゼライムの死骸ごと溶解液を押し流し、進められるほどの道が出来上がった。



「最奥まで3箇所ほど広い部分がある。ここと同じように大量だろうな」

「もう1発なら大丈夫です」

「いや、ある程度は魔力を残しておけ」

「了解」



そこから俺達は最奥手前まで進んでいった。


途中でリーダーの言った通りにダストゼライムの溜り場が3箇所あったものの、ソマリの魔法だったり地道な作業で掃討が完了。


残すところは最奥だけとなったのである。

しかし、これ以上は進めない。



「魔具の制限時間が厳しいな」

「ですね」


もう残り30分ほどしかないのだ。今から戻ってもギリギリだろうから、これ以上は進めない。


もっと早く撤退しても良かったんだが、戻りは楽だからな。



ついつい長居してしまったというのが現状だった。しかし、もう退き時である。


「だが……」

「ジェイド、大丈夫そうなら再突入すれば良い。一旦引き返すべきだ」

「それなら様子だけ見ておかないか?」



そうやって奥へ進もうとするジェイドに、リーダーは明確に断った。


「それは認められない。もう限界なんだ」

「だが! ここまでの大量発生なら何か原因があるはずだろう!」

「その調査は再突入してからだ。それに検討もついている」

「少し見るだけだ! 走って戻れば5分くらい捻出できる!」



なんだか言い争いになり始めている。止めたほうがいいのだろうか……


そうやって考えていると、遂にジェイドは単独で奥に走ってしまった。



「おい! 戻るんだ!」


だが、その叫びに応えずジェイドの姿は見えなくなる。


「くそっ!」

「追いますか?」

「……いや、俺達は撤退する。様子を見て戻ってくる事を願おう」

「何かあっても自己責任ってやつだね」

「引率者を引き受けた以上は、そう切り捨てられないがな……」



だが、俺たちまで巻き込んで連れ戻そうとするのは余計に容認できない。


そう告げてリーダーは引き返した。俺達も後に続いていく。



少し重苦しい雰囲気の中を歩いていると、やがてリーダーが何かに反応して振り返る。

釣られて俺達も振り返ると、どうやらジェイドが早くも戻ってきたようだ。


本当に様子見だけで済ませたらしいが、俺達に追い付いて文句を言ってくる。



「お前達だけで戻りやがって……」



そっちが勝手するからだろうが。


などと言い返す前に、リーダーが先を促す。



「足を止めるな。本当に時間の余裕は無いんだからな」

「……ちっ」

「それで、様子見は出来たのか?」

「ああ、思った通りだった」

「そうか、お手柄じゃないか」

「ふん、原因を取り除いてからじゃないと手柄にはならないだろ」

「そんな事はない。調査だけでも……」




調査だけでも大量発生の原因が突き止められれば手柄になる。



そう言いたかったのだろう。


だが、リーダーは最後まで言葉を続けられなかった。

ガチャン! と留め具を外す音と共に、リーダーの腰から魔具が離れたのだ。



「借りるぞ」

「な……っぐ!?」



ジェイドに魔具を奪われたリーダーから浄化効果が消え去る。


直後に訪れた凄まじい悪臭に、リーダーの口は塞がった。



「おぇぇぇ……!」


あっという間に嘔吐まで至り、胃の内容物を吐き出しながらリーダーが崩れ落ちる。



「何してんだ!!」


ラグが詰め寄ろうとするが、ジェイドは剣を抜いて牽制した。


「少し借りるだけだ」



そう言って自身の魔具から魔石を取り外し、新しい魔石を設置する。

それまでの繋ぎにリーダーの魔具を奪ったのか。



「注意事項を忘れたのかよ! 有害物質が漂ってるかもしれねえんだぞ!!」

「そうかもな。だが、すぐに運び出して治癒すれば死なない」

「治癒を使える人が居ないかもしれません! 短絡的にも限度があります!」

「そこは把握してるに決まってんだろうが。他の班に使い手が居る」



俺達の指摘に返答しながらジェイドが魔具の準備を終わらせる。

そして、俺に向かってリーダーの魔具を放り投げた。



「お前らも交換するなら今の内だ」

「誰がするか!」

「だろうなぁ。精々良い子にしてな」



嘲笑しながらジェイドが奥へ向かっていく。

ぶん殴りたいが、今はリーダーを助けないと。


「……よし」


すぐにリーダーの腰へ魔具を取り付けたものの、この短時間で酷く憔悴しているようだ。


吐くと肺から空気が搾り出されるからな。そのために呼吸しようとして再び悪臭を吸い込んでしまうだろう。



「リーダーを外に運ぼう!」

「そうですね。急がないと」



補助魔法で身体強化を施しつつ移動する。


すると、背負っていたリーダーが声を絞り出した。



「だい、じょうぶだ……毒は無かったようだ……」

「舌噛むぞリーダー! もうすぐ外だから寝てろって!」

「あぁ……すまない」



涙と鼻水と吐瀉物で酷い有様だが、有害物質は漂っていなかったらしい。

これなら少し休めば動けるようになるだろう。



安心した俺は、リーダーを背負い直して走る速度を上げた。




・・

・・・



「おい! どうしたんだ!!」

「話は後で。今は休憩地点まで下がろう」


洞窟を出ると、既に撤退していたらしい他の班が待機している。

すぐに俺達の様子に気付いて驚いていたが、ひとまず悪臭から離れる事となった。



やがて休憩地点に到着し、俺はリーダーを背から降ろして水を渡す。



「……ぶはぁっ! ありがとな、助かった」

「いいってことよ」

「それで、何があったんだ?」


他の班を引率していた冒険者が事情を聞いてくる。


俺は先ほど起こった事を簡単に説明した。



「……ふざけた奴だな、あの野郎」

「かといって、放置は出来ないか」

「そうだな。少し疲れたが再突入しよう」



そうやって話し合っているのを聞いていると、他の班に編成されていた新米冒険者達が反発した。



「そんな奴を助けに行くんですか?」

「放っておきましょうよ」



だが、リーダーが首を振って答える。


「引率者としての責任がある。それに、大量発生の原因も排除しておきたい」

「「「……」」」

「だが、お前たちまで巻き込むつもりは無い。引率者は多めに残しておくから待機しててくれ」



その言葉で新米冒険者達は反論できなくなり、黙り込んだ。


そしてリーダーが救出班の編成を始める。



「ルイス達はどうする? 一緒に来るか?」

「へ?」


てっきり俺達も待機だと思ってたんだが。


「実力の一端は見せてもらった。お前達なら連れて行ける」



そう言われて、俺達は顔を見合わせる事も無く即答した。



「「「「あいつ殴りたい(です)」」」」

「っはは、あいつが無事だったらな」




・・

・・・



救出班が即座に編成され、すぐに出発した。

俺達とリーダーの他に2人のベテランを含めた7人である。



浄化用魔具も他の者から譲り受け、念のために2つ用意していた。


そして新たに加わったベテランの内で1人は治癒魔法を得意としているため、安定した編成だな。待機班もベテランが6人控えているし、大丈夫だろう。


そんなわけで洞窟へ再突入し、真っ直ぐ最奥へと進む。



「他の経路は掃討が済んだんだな?」

「ああ、1匹残らず倒した」

「こっちもだ。そこまで多くなかったな」


つまり、俺達の担当した経路の奥が大量発生の原因となる。


他の経路は溢れてきたダストゼライムが侵入していただけらしい。



「何が原因なんだろな?」

「さあな。行ってみりゃ分かるだろ」



そうラグと話していると、リーダーが振り返らずに教えてくれる。


「ギルドの予想ではヒュージゼライムの仕業らしい」

「ヒュージゼライム? なんで?」



あの種類は無害だったはずだ。

しかも大量発生したのはダストゼライムだろ?


「ゼライム系の異常個体については知っているか?」

「?」

「たまに巨大な異常個体が出現するんだが、どうも違うらしい」

「違うって……何が?」

「今までゼライム系の大量発生は異常個体が原因とされていたが、実は殆どが通常個体だったんだ」



詳しく聞くと、最近になって判明したヒュージゼライムの特徴が、模倣であそうだ。


この種類は体液が酸性じゃないものの、溶かす事は出来るらしい。


何を溶かすかといえば……ゼライムだ。

つまり、ヒュージゼライムは共食いとでもいうべき食性を持っている。



およそ酸性の体液を持つゼライム系なら全てが捕食対象であり、核まで溶かしてしまう。そして捕食したゼライムの性質を模倣するのである。



今回の大量発生の原因だとすれば、ダストゼライムを捕食したのだろう。

そうして成長すれば、自身もダストゼライムと同じ性質へと変質して分離し、ダストゼライムを量産するのである。



そして、ある程度まで分離すると性質を元に戻し、自らが生み出したゼライムを食って成長して、また分離。


それを繰り返すため大量発生の原因となるのだ。



つまり、異常個体ではなく1つの種類として認知されているヒュージゼライムを、別種が異様に成長した異常個体だと勘違いしていただけの話であるらしい。


ただ、本当に別種の異常個体だった場合も当然ある。


どうやって見分けるかといえば、分かりやすいのは発生量だな。



異常個体が分裂するにも成長が必要であり、それは餌がないと不可能だ。

しかし共食いはしないため、一定まで増えると大量発生の波が収まる。


増えるほど近くの餌が仲間に食い尽くされるからな。成長する糧が無くなるんだ。



それに対して、ヒュージゼライムは自身が生み出したものを餌にする。

どこまでも留まる事なく増えていくのである。



そして、この洞窟の環境は外から生物が侵入してこない限りは異常個体の餌が補給されない。


なのに悪臭で近付く生物は殆ど皆無なのだから、それでも増えるならばヒュージゼライムが原因となるだろう。


そう検討をつけていたのもあり、また初心者へのボーナスも含めて数回に分けて掃討したのである。



結果として、現段階ではヒュージゼライムの仕業である可能性が高いそうだ。



「今が成長期なら危険も少ないが、増殖期だったら危険だ」

「そうなん?」

「ああ。増殖期って事は捕食した相手の性質を模倣している。巨大なダストゼライムそのものだ」



巨体で退路を塞がれてしまうと為す術がなくなってしまう。

体液の中を突き抜けるわけにもいかないしな。


そんな説明を受けながら、俺達は急いだ。



そして30分ほどで最奥手前まで到着すると、そこにいたのは……


「でっか……すぎだろ」


そこにいたのは、最奥への通路を塞ぐように鎮座する巨大なゼライムだった。


次回・・・原因排除

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