3_13_休暇の正しい使い方? 午後編
こんにちは。
なんとか大丈夫そうなので午後編を投稿しておきます。
なんだかんだで寛ぎまくり、昼食の時間には少し早いが食堂へと移動する。
一足先に汗を洗い流してきたラグ達と一緒に食堂へ到着すると、なにやら良い匂いが漂ってきた。
「これって新メニューの匂いか?」
「食欲を刺激されるよね」
「私も空腹だからか、やけに引き付けられるな」
連れて来たチャールスとリンも興味津々といった様子だ。
そうして厨房を覗き込んでみれば、更に強くなる美味そうな匂い……
「イリーナ~~! 飯くれ~~~!!」
「やっと来たのねハウス」
「誰だよハウスって!」
「あら、ごめんなさい。つい間違えちゃったわ」
まるで犬に命じるような名前と間違えられたものの、イリーナはマリと一緒に厨房の奥から姿を現した。
なぜか髪の毛に粉を付着させたマリが、腕を組みながら堂々と宣言する。
「私も手伝ったのよ!」
「そっか。なら俺はいつものE定食で」
「俺も」
「僕はF定食にしましょうかね」
「ちょっと!! どうして別のメニューにするのよ!」
そういう流れだと思ったから、かな。
ともあれ他の生徒はまだ来ていない。
イリーナも忙しくなる前に食べておくようで、総勢9人による昼食が始まった。
運ばれてきた新メニューは、赤色で少しドロドロした刺激的そうなスープと、
柔らかめに焼き上げられた穀物入りのパン、そして牛酪の香りが鼻腔を優しく誘惑する鶏肉の素揚げだった。
あとは茹でられた野菜に、溶かした乾酪も添えられている。
こちらは追加で注文すれば出てくるようだ。
無料のメニューなので頼んでも料金は発生しないし、必要なければ頼まなくていい。
「なんかスープが辛そうだね」
「ええ、スープというよりはソースね。他の具材と一緒に食べるのよ」
「なるほど」
「まずは食おうぜ!」
「そだな。んじゃ、いただきます!!」
そうして始まった食事は賑やかなものだった。
料理も期待通りに美味く、ソースは確かに辛かったが食欲が誘発されていくようだ。
暑い季節になってきたため食べるだけで余計に汗を掻いてしまうものの、
しかしそれも冷たい水を喉に流し込めば爽快さを増幅してくる。
ちなみに女性陣は辛さを抑えたソースとなっていた。
ある程度の段階で選べるらしく、辛いものが苦手だったり汗を掻きたくなければ、辛くない方で頼めばいいそうだ。
リンとソマリ以外は全員が具材とソースをおかわり。
そうして満足する頃に、他の生徒達が食堂へと入ってきた。
「それじゃワタシは仕事に戻るから」
「手伝おうか?」
「いいわよ。甘え過ぎるのは良くないもの」
「そんな事言うなって。こちとら暇なんだし」
イリーナが断ろうとするのを押し切って、皆が厨房へと入る。
しかしオバちゃんに怒鳴られた。
「こんなに必要ないよっ! 窓口と給仕にも入っておくれ!」
「はいよー」
てなわけで厨房はイリーナ、マリ、モーティ。
窓口はソマリ、ハイク、リン。
給仕が俺、ラグ、チャールスとなった。
食後の満足感に浸りつつ手伝いを始める俺達。
しかし、すぐにその余韻も霧散した。
「ソマリ! 注文したのが足りねえらしいぜ!」
「すいません! 聞き間違えたかもしれないです!」
「イリーナさん、 新メニューが17追加だよ」
「マズいわね……あと30で品切れだから数を管理しといて!」
「チャールス戻ってこいぃ!! 話し込んでんじゃねえよ!」
「ルイス手伝ってくれ! B定食の盛りつけが間に合わない!」
「皿にゴチャゴチャ載ってるやつかよ! すぐ行くから待っててくれ!」
なんともまあ、多忙の極みであった。
俺達が手伝いに入ったとしても所詮は初心者であり、作業を覚えつつも間違えたりしているので戦力としては変化が無かったのである。
そこへ飛び込んで来たのは大量の指導会参加者達。
どうやら一気に移動してきたようであり、普段のピークより忙しいそうだ。
注文が届かなかったり新メニューが品切れになったり、色々と発生した問題に対応するのも人手が割かれる。
なんとか捌き終わった頃には、皆が肩で息をするほどの状態だ。
しかし続いて現れたのは、学集会の参加者達。
さしもの俺だって悲鳴を上げたくなったが、もう新メニューは品切れであるため注文が偏る事もない。
この忙しさの中で動き方も把握してきたし、持ちこたえられる!
そう自分に言い聞かせて奔走を続け、昼から2時間あまりが経過した頃に最後の客が食堂を去った。
「な、なんとか……乗り越えた……」
「誰か水をくれ……動けない……」
皆でテーブルを囲んで休んでいるが、死屍累々といった状態だ。
オバちゃん達まで疲労困憊の様子である。
「これは夜も忙しそうだねぇ」
「仕込みも増やさなきゃいけませんね」
「あいつら午後も指導会とか続けんのか?」
「そうらしい。参加者は減るようだがな」
などと皆が口々に話していると、食堂の扉が開かれる。
入ってきたのはシャロンだった。
なんだか剣呑な雰囲気である。
「リン、チャールス」
「「はい」」
「こっちへ来なさい」
うわ……怒られるのか?
たしかに2人は名門勢力だもんな。
食堂で働いてるなんて問題なのかもしれん。
心無しか足取りの重い2人がシャロンに呼ばれ、何か話している。
その光景を眺めていると、また誰かが食堂へ入ってきた。
「あ、クリストフ先輩と……ってか先輩達だな」
「どうしたんだろ?」
入ってきたのはクリストフ先輩、ケートス先輩、タチアナ先輩、ギッさんだった。
俺達の方へ近寄ってくる。
「やあ、お疲れのようだね」
「はは……どうも」
「笑い事じゃねえよ。休暇だって言っただろが!」
「普段より疲れていると思いません?」
「お前達は自身の管理すら出来ないのか」
どうやら忙しく動いていた俺達を昼食の際に発見し、注意しにきたようだ。
しかし途中で止めるのもアレだったため、終わるまで待ってくれていたらしい。
そうして俺達は呆れられていたんだが、オバちゃん達が援護してくれる。
「この子達のおかげで捌けたんだからねぇ、あんまり怒らないであげな」
「ほらお座り。話はそれからだよっ」
オバちゃん達の勢いに気圧された先輩達は、顔を見合わせながら席に座る。
そこから繰り広げられたのは午後の話だった。
何度も俺達に手伝わせるのは気が引けるため、夜は他の仕事仲間で人手を集める予定らしい。
オバちゃん達だって夜は入らないはずだったのだが、そうも言っていられないため可能な人は参戦するようである。
「大丈夫なのか?」
「心配しなくていいんだよっ! もう充分さ!」
「そうは言ってもなぁ」
食材も新メニューの分が無くなってしまったため買い足さなければならないし、
仕込みも多めにしておくようだし……本当に大丈夫か?
そう心配していると、クリストフ先輩が咳払いで注目を集める。
「思っていたより大変な状況のようだね」
「そうなんすよ」
「よかったら私も手伝おう」
「「「「へっ!?」」」」
クリストフ先輩が!?
「いやいや、先輩は休んでくださいよ」
「お前達が言っても説得力が無いだろ」
「そういうわけだ。後輩ばかりに働かせるのは気が引けるからね」
なんか申し訳ないな……
新入生メンバーが気不味そうに黙ってしまうと、そこへ提案してきたのはイリーナだった。
「それでは別の方法で解決しませんか?」
「?」
「食事の機会を分散するんです」
「ふむ……詳しく聞こうかな」
「これほど忙しくなる原因は、一斉に生徒が食事へ向かうからです」
だから、それを緩和できれば夕食の時間帯に大混雑する事もない、というのがイリーナの意見であった。
「ふむ……たしかにそうだね。3年生からは選択授業が基本になる」
新入生および2年生は全員が同じ内容の授業を受ける。
しかし3年生からは各々の進路に合わせて授業の内容を選択していく事になるそうだ。
そのため、今までは食事の時間がバラバラになっていたのである。
名門勢力が前半と後半に利用時間を分けていたのも、思っていたより細かい分け方であるらしい。
「たしか昼前の時間帯では軍事関係の選択授業だったね」
そうクリストフ先輩が目を向けると、ケートス先輩が頷く。
「そうです。俺はその授業を選択していますし、終わるのは昼過ぎですね」
「ふむ、昼食はある程度昼を過ぎた頃になるか」
「そうですね。毎回腹が減って倒れそうになるくらいですよ」
なるほどな……つまり全ての学年が同じタイミングで食事に向かわないような授業構成が、普段から実施されているのか。
「今回は授業の中止にあたり、その構成が崩れているんだね」
「一応は名門勢力が主催の企画で、生徒達は2分されている状態ですけどね」
「ただ、あんな続けざまに押し寄せてくると意味がありません」
と、ここでクリストフ先輩がギッさんとマリに指示を出した。
「ギリク殿はエグラフ殿を呼び出してきて欲しい」
「今すぐにか?」
「そうだ。少し急で申し訳ないけどね」
「了解した」
「マリはシャロン嬢を引き止めておいてほしい」
「はーい」
「とはいえ、今は部下と話しているようだからね。区切りが付くまで邪魔してはダメだよ」
それからは場が整うまで、イリーナとクリストフ先輩を中心に会議が繰り広げられていた。
・・
・・・
「では、そのように」
「ふん……この時間を無駄にせぬよう、抜かりなく管理する事だな」
「っ……!」
「それはこちらの台詞よ」
ひとまずの打ち合わせが終了し、旗頭両名による威嚇が交わされる。
真っ先に吼えそうだったのはチャールスであったものの、シャロンの視線により沈黙。
その様子を見ながら、俺はソマリに確認した。
「これで大丈夫か?」
「問題ありません。ただ、準備が上手く進むかは祈るしかないですね」
「そっか」
俺達が打ち合わせしていたのは、企画の実施時間を細分化できないかという内容だった。
今のままでは2分されていても食堂に押し寄せてくる生徒が多く、大混雑してしまう。
そのため学集会と指導会の区切りを幾つか設けてほしかったのだ。
シャロンもエグラフも食堂の混雑具合には懸念を抱いたらしく、方針としては了承してくれた。
しかしながら、両名が打ち出した解決策は違うものだ。
それは企画の複数実施であり、違う内容の企画を打ち立てようというものである。
先ほどまで概要を教えてもらったところでは、ローレライ家が4つ、ゼグノート家が3つの企画を打ち出そうとしていた。
それぞれの実施時間が違うため、これなら一斉に生徒が食事に向かう事もないだろうと思う。
ただ、問題はあった。
それは企画の準備にあり、概要は決まっていても担当者と細かい内容が確定していないのだ。
こればかりは時間が必要であるため、これから各勢力で検討が繰り返されるわけだが、時間に余裕があるわけでもない。
かといって生徒会が口出すなんてのは認められないため、任せるしかない。
一応は放送で午後からの予定を告知するのだが、それも企画を複数実施する旨と、実施まで少し時間を置くというぐらいだな。
細かい告知は企画をある程度まで練らないと不可能であるため、それまでの空き時間は生徒達に暇を持て余してもらうしかない。
まあ、一応は授業が中止なのだから自由時間なんだ。そこまで気にする事でもないけどな。
ともあれ、これから名門勢力は慌しく準備を進めなければならない。
ほどなくエグラフさんが退席し、続いてシャロンも食堂を去っていった。
残されたのは生徒会メンバーと……
「あれ? ここに残るのか?」
「休めというご指示は継続中だからな」
苦い顔で言葉を返すのはチャールスである。リンは隣で静かに座っていた。
「なんか、アレだな」
「歯痒そうだね」
「ぐっ……シャロン様がお忙しくされているというのに、私が休むなどっ!」
「てかさ、さっきは怒られてたのか?」
握り拳を震わせながら俯いているチャールスに聞いてみると、今度は嬉しそうな顔をする。
「実はな……お叱りを受けたが、お褒めの御言葉も頂けたのだ」
「は? なんで?」
「うむ、シャロン様は実に聡明な御方であられるからな。そのご寛大な御心も併せるとローレライ家の未来も明るい。まずは……」
ペラッペラ喋りまくるチャールスの話を俺は聞いていなかった。
しかし、その途中でハイクが俺に耳打ちしてくる。
「解説しようか?」
「あぁ、うん……ザックリ頼む」
てことで恒例のザックリ要約だ。ハイクが咳払いしてから教えてくれた。
「つまり、棚ぼたで好印象を得た功労者が、チャールスさんとリンさん、って事だね」
「何がどうしてそうなったんだ……」
要約する前の本文を聞いてないから全く理解できん。
すると今度はソマリが説明してくれた。
なんとチャールスの話を聞きながら翻訳してくれているのである。
「食堂が大混雑した件で不満を持つ生徒も多かったんです。それに対して動いたのが生徒会とローレライ家……という話が出てるんですよ」
「そうなん?」
どうやら事実らしく、そういう話が出回っているそうだ。
注文が届かなかったり間違えられたりで不満な点はあったものの、それでも対処しようと踏ん張っていた人員にローレライ家が含まれていた。
これは大混雑する展開を見越して部下を配置させていたのでは……と良い具合に勘違いされているらしい。
それこそチャールスの姿も名前も知られているのだから、給仕として動き回っていれば目に付く。
貴族が食堂で給仕をしている事自体は褒められた行為でないものの、そうでもしなければ余計に食堂が大混乱していたのは事実である。
そんなこんなでシャロンの株は僅かだが上昇し、それを褒められたそうだ。
決して狙ったわけではないとチャールスもリンも否定したそうだが、実際に利益が出たのだから同じだとシャロンも譲らない。
だからチャールスは嬉しそうだったんだな。叱られもしただろうけど。
「さて、生徒会としては何か動くわけではない。ここで解散としよう」
チャールスが話し終わるのを待ち、クリストフ先輩が解散を宣言する。
それに皆が頷いたが、そこでマリが提案し始める。
「皆でお茶会しない?」
「お茶会?」
「うん。のんびり休みながら甘いもの食べたり、お茶を楽しんだり……喫茶店で寛ぐようなものね」
「ならワタシが紅茶に合う焼き菓子を作るわよ」
「ほんと!? 私も手伝う!」
「頼もしいわね。あなたは?」
イリーナとマリが菓子作りに挑戦するらしく、リンにも参加するか問いかけている。
「私ですか?」
「そうよ? 興味ない?」
どうしよう……って感じにリンが視線を彷徨わせる。
しかし、チャールスに目を止めてから告げた。
「私はチャールスが暴走しないか見張らなければなりません。残念ですが……」
「リン!? それは心外だぞ!」
「それでは、大人しく過ごしていただけますか?」
「む……もちろんだ」
「そうですか。では、私も参加させていただきたいです」
丁寧にお辞儀をして、リンが参加を表明。
その光景を見ていると、ハイクが立ち上がった。
「ちょっと思いついた事があるんだけど……」
・・
・・・
「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
慣れ親しんだ食堂の扉を開けると、総勢5名の可憐な少女達が一糸乱れぬ丁寧なお辞儀で出迎えてくる。
その光景は訪れた者達の心を奪い、美しい声が耳を優しく打つようだ。
しかも可愛らしいメイド姿であり、まさか食堂で目にする光景であるとは予想もできなかっただろう。
男性はもちろん、女性までもが見惚れて動きを止めてしまうが、それも続く言葉で我を取り戻す。
「ご来店は3名様でよろしいでしょうか?」
「あ……はい、3人です」
「それでは、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
案内されるままに席へ座る。渡されたメニューを見れば、どうやら喫茶店のような品揃えであるらしい。
「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」
丁寧なお辞儀をして離れていくメイド姿の少女。
名残惜しさと困惑が心を支配する中で、来訪者達は注文を検討し始めた。
「3名様ご来店です」
「あいよ」
「もう少し丁寧な言葉を使いなさいよ」
メイド姿の少女……イリーナが俺に注意してくる。
「だってさあ、こういうの慣れてないし」
「ワタシも同じよ」
「その割には妙に似合ってんだよな」
「そう? ありがと」
嬉しそうにイリーナが微笑むのを視界に収めながら、俺は食堂を見渡した。
もはや喫茶店そのものであるかのように準備が整った光景を見ると、呆れていいのやら笑っていいのやら。
「これで時間稼ぎ出来るかな」
「たぶんね。絶対に必要ではないけど、こういう形にすれば有用でしょ」
俺の隣に立つハイクが答える。まるで執事のような服装を纏ったイケメンである。
俺も同じような格好をしてるんだけど、どちらが似合っているかは言うまでもない。
ハイクが提案したのは、生徒会とローレライ家による喫茶店形式の休憩所だった。
名門勢力の企画立案が完了していない間、生徒達の暇を慰める時間稼ぎという意味を持つ。
そしてゲストという形でシャロンやエグラフさんを招き、親睦会としての側面をも持たせるのである。
上手くいくかは分からないが、こういう機会でもないと両家の溝は不変のままだ。
挑戦してみようという意見が多数を占め、実施する運びとなったのである。
昼食の片付けはオバちゃん達に任せ、俺達は菓子作りと飲み物、そして装飾の用意に奔走した。
数名が都で買い集めてきたり、大忙しだったな。
しかし、その甲斐あってか1時間ちょっとで準備が完了。
菓子も作る分では間に合わないだろうから、市販品も買い揃えている。
喫茶店のような雰囲気で飾り付けをしているため、気軽に寛いでもらいたいな。
で、ハイクの悪ノリなのかは不明だが、生徒会メンバーに加えてチャールスとリンも参加し、各々が衣装を用意している。
女子ならメイド服であり、これはリンから貸し出してもらった服だ。
一方の野郎どもはギッさんから式典用の礼服を借り受け、折り込んだり装飾品を外したりして執事っぽい見た目に改造。
クリストフ先輩とケートス先輩は自前の礼服を改造していた。
サイズが合わないからである。
そして接客は女子に任せつつ、男子は給仕を担当だ。会計は必要ないため、注文された品を運ぶだけで済む。
ちなみに、ビューラも参戦している。マリが呼んだ助っ人だな。
服装も似合っているし、癒し系のビューラなら即戦力である。
とまあ、こんな感じで喫茶店が開店した。
実施時間は長めに取ってあり、各々のタイミングで来店してきたらいい。
シャロンとエグラフさんにも話を通していて、ゲストとして訪れてくれるようにもなっている。
企画の打ち合わせに一区切りついたら、あとは部下に任せて訪れる約束だ。
とはいえ、まだ始まったばかりなため客は一般の生徒ばかりである。
告知の放送を聞いて興味本位で来てみたのだろう。普段の食堂とは全く違う様相に度肝を抜かれているな。
男子生徒はメイド姿のマリ達に見惚れているし、女子生徒はハイクの姿に目を奪われている。
……タチアナ先輩は仮面だけど、まあそれも一興だろう。一驚でもあるが。
・・
・・・
「あ、はい、ただいま」
近くに立っていたビューラさんが呼ばれ、テーブルへと向かう。
そこでは上等な服に身を包んだ生徒が3人座っており、その様子から心身ともに寛いでいるような印象を受ける。
これは喜ぶべき事だ。
生徒達の暇を慰め、ゆっくり寛いでもらいたいという意味合いで実施した喫茶店であるのだから。
といっても、寛ぎ方には幾つか種類がある。
まずは右手をご覧になってほしい。
「あ……あの」
「はい、ただいま」
「! ……この……焼き菓子を、ひ……1つ……」
「かしこまりました。お飲物は追加でご注文されますか?」
「ひゃい! お願いします!」
素晴らしい、見事に緊張している。
一般生徒1人だけが座っているテーブルなんだが、イリーナの丁寧な接客に気押されているようだ。
碌に舌が回らないほどであり、これは果たして寛げているのだろうかと思うだろう。
しかし目の保養という点では凄まじく潤っているため、これは寛げていると判断した。
さて、次は左手をご覧になってほしい。
「あいよ、菓子と紅茶だ」
「え……ケートス……なのか?」
「あ? どうした?」
「…………うははははは!!」
「んだよっ! 笑ってんじゃねえ!」
「そりゃ笑うって……あは、あはははははははは!!」
「こんのやろう!」
「うおぉぉっ!?」
素晴らしい、見事に極っている。
ケートス先輩が執事みたいな格好をしていて面白いのか、ひたすらに笑っているようだ。
それこそ笑いすぎて絞め技を掛けられるほどであり、これは果たして寛げているのだろうかと思うだろう。
しかし笑うという行為は心身に良い影響を与えるため、これは寛げていると判断した。
さて、続いては後ろを振り返っていただきたい。
「これ美味しい。どこの店で買ったの?」
「南区で売ってるの! 近いから昼食の時間に寄れるよ?」
「ふ~ん。なら今度お茶しに行こうかな」
「マリちゃんも一緒に行こ?」
「うん!」
素晴らしい、見事に接客している。
マリが接客ついでにテーブルへ座り、どうやら友達と談笑しているようだ。
だが業務中のため気兼ねなく楽しめなさそうだし、これは果たして寛げているのだろうかと思うだろう。
しかしテーブルにはマリの分も菓子や紅茶が用意されており、これは寛げていると判断した。
というか、サボっていた。
「マリ」
「ごめんなさいぃぃ!」
呼びかけた瞬間に、マリは圧倒的な反応速度で業務へ戻る。
別に怒る気なんて無かったんだけどな……
そもそも休暇であるのに忙しく動き回っているんだ。
こうやって少しサボったりする程度を責めようとは思わない。
とまあ、こんな感じに皆が寛げている様子を眺めながら、俺は給仕を続けるのだった。
・・
・・・
「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
「おお!! 6人だーーーっはっはっはっはっは!!!」
「申し訳ございませんが、他のお客様もお寛ぎされていますので……と思いません?」
「……すまない。やっと食事にありつけるから盛り上がっていた」
こんなやり取りで来店してきたのは先生達だ。学校長も一緒だな。
ハイゴル先生が早速うるさかったが、タチアナ先輩に注意されてローゴル先生へ切り替わる。
そのまま案内されて奥へと座り、学校長だけが俺に近付いてきた。
「やあルイス君、元気だったかね?」
「まあ、はい」
なんか用事でもあるのか?
「今度の対抗試合なんだがね」
「どうしたんですか?」
「それがだね、うん、ルイス君の参加は取り消しておこうと思うんだよ、うん」
「…………へ?」
どういう事だ? 参加を取り消し?
「どうやらルイス君の周りでは色々と起こるようだからね、うん」
「いや、あの……」
そんなフワッとした理由で参加できないって、かなり落ち込むんですけど。
「うん、冗談だよ」
「……冗談に聞こえないんで、やめてください」
「おっと、申し訳ない。この通りだ、許してくれないかな」
拝むように謝られ、俺は溜息で応えた。
で、本題を聞いてみるとドルアーザさんからの伝言を俺へ届けに来てくれたらしい。
”俺は北部に向かう。エルフの国付近だ。土産は期待していいぞ”
これだけだ。
土産を渡してもらえる機会はあるのだろうか。
「では伝えたからね。彼に連絡するならギルドを経由するといい。君なら受け付けてくれるだろうからね、うん」
「了解です」
と、今度はイリーナに向き直る学校長。
「イリーナさん」
「はい、なんでしょうか?」
「ここは菓子以外も注文できるのかね?」
「それでしたらワタシ個人で承りますよ。いつもので大丈夫ですか?」
「おお、ありがたい。それでは頼むよ、うんうん」
学校長が満足そうに席へ戻っていく。その背中を見ながらイリーナに聞いてみた。
「いつもの、って何だ?」
「ワタシが適当に見繕って作るのよ」
つまり普段のメニューではない、って事か?
それって裏メニューとでも呼べる、一種の特別待遇じゃねえかよ。
「なんかズルいな」
「ワタシが働き始めてからは、頻繁に食堂を利用してくれているわね」
「他の先生は?」
「同じよ。ワタシの気まぐれ料理を頼んでくるの」
どうやら学校長が面接でイリーナの料理技術に注目し、食堂の利用時間が過ぎてから1人で来訪するようになったそうだ。
レシピの決まった食堂のメニューではなくイリーナ独自のレシピであるから、より美味いのは当然である。
しかし他の先生達に目撃されてしまい、その話が職員の間に広がってしまった。
1人だけ良い思いをするなんてズルいと糾弾されてしまい、なんだかんだで他の先生達も裏メニューを利用する事になったという顛末だ。
「それじゃ、ワタシは先生達の食事を作るから」
そう言って厨房に入っていくイリーナ。
俺達もイリーナの手料理を食べられるけどさ、なんかズルいと思ってしまう。
毎食なんだろ? それは許されるものなのだろうか。
「あ、そうだ」
納得できないまま考えていると、悪戯を思いついてしまった。
ハイクを呼んで提案してみれば当然のように乗ってくる。
「いいね。でも折角だから利益も上げようか」
てなわけで、俺とハイクは他のメンバーに接客を任せて厨房に入るのだった。
・・
・・・
「お待たせしました」
俺とハイクが先生達の席へ皿を運ぶ。
ちょうど6人分の皿は、中身が見えないように半球状の蓋で覆われていた。
空腹も限界だっただろう先生達は、早速に手を伸ばそうとする。
が、機先を制してハイクが発言した。
「皆さんは頻繁にイリーナさんの料理を?」
「そ、それは……」
ババロン先生が手を止めて言葉を濁す。
他の先生たちも気不味いのか動きを止めた。
「生徒達に黙って、それはズルいですよね?」
「き、君達もイリーナさんの手料理は食べられるでしょう? お互い様ですよ」
ナイール先生が俺達も共犯であると言い包めてくる。
「圧倒的に回数が違います。俺達は週に一度くらいが関の山ですよ」
「わ、私達だって同じよ! 時間が空いてる時だけなんだから!」
ミーミン先生が毎食ではないと言い訳してくる。
「それでも、やっぱり納得できないんですよね。利用時間が過ぎてからなんて、職権乱用じゃないですか?」
「ほ、ほう……ならばどうする?」
ローゴル先生が俺達の要求を聞こうとしてくる。
「実は、この中の1皿だけは……ルイスが担当しました」
「な、なにぃっ!?」
名前も知らない先生が驚愕の声を上げる。
「ちょっとした趣向だとでも思ってください。味は保障しませんけど」
「な、なるほど……1人だけは泣きを見るんですね」
学校長は趣向を受け入れたのか、瞳に真剣さが増した。
そして、皆が蓋を穴の空くほど見つめながら悩む。
どれがハズレなのか見極めようとしているんだろうけど、分かるはずもない。
だが、先生達は互いに目線を飛ばし合いながらも決めかねているようだ。
と、ここでハイクが先生達に語りかける。
「どうしてもイリーナさんの手料理を食べたい人はいますか?」
その問いに全員が手を上げる。そりゃそうだわな。
「では、どれがイリーナさんの担当したものか、教えてあげてもいいですよ」
ハイクの言葉に先生達の目が光った。
悟ったのだろう……情報はタダではないと。
「実はお二人に魔具を贈ろうかと考えていたんですよ」
「ほうほう」
「あ! ナイール先生ズルい! ねえ二人とも、魔石に興味ある?」
「ん~……どうだろな~」
次々と先生達が物で釣ろうとしてくるが、俺達は曖昧な反応を示すばかりだ。
と、ここで学校長が本命の提案をしてきた。
「ところで、今回の経費を特別予算として賄おうと考えていましてね」
「「ほう!」」
「学校長っ! それは禁じ手ですよ!」
「そうよ! 卑怯じゃないの!」
「何の事ですかね。これに関係なく予算を賄う予定でしたが?」
「ぬぅ……」
大人の汚い部分を見てしまったが、これで目的は達成した。
俺とハイクは頷き合って全ての蓋を取り除く。
「こ、これは……」
「果物だけ? どういう事ですか?」
先生が驚いているのは果物しか置かれていないからだな。
一皿だけは不恰好に切り分けられていて、これは俺が担当したんだが、果物の皮を剥いて切り分けるだけだから不味くはないだろ。
「まあ、味は変わりないと思いますよ」
「まずは果物で繋いでください。すぐに本命の料理が届くので」
すると、ナイール先生が呟く。
「騙されましたね……」
「時間を忘れて楽しんでいただけたようで」
俺の返しに、ナイール先生は溜息を吐くばかりだった。
「まんまと予算を獲得ですか」
学校長が苦笑しているものの、ハイクは涼しい顔だ。
「最初からそのつもりだったんですよね? 何の取引もありませんでしたよ」
「おや、それもそうですね」
と、こんな感じで先生達は食事を始めたのであった。
・・
・・・
「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
「……何をしているの?」
「喫茶店です」
「それは聞いているけれど、ここまでするの?」
「慣れたら楽しいよ? 一緒にどう?」
「遠慮するわ」
シャロンが食堂へ訪れ、メイド少女達が出迎える。
すると目頭を抑えつつ呆れているようだが、マリに毒気を抜かれてしまったようだ。
案内された席へ座り、紅茶と焼き菓子を注文してくる。
即座に用意された品がハイクの手により運ばれた。
「お待たせいたしました」
「あなたまで遊んでいるのね」
「意外だったかな?」
「……いいえ、想定内よ」
「でしょうね。それでは、何かあればお呼びください」
さて、シャロンの案内は終わった。だが誰も寄り付こうとしない。
せっかく親睦会を兼ねているのに、これではシャロンが孤独のままである。
と、そこへ今度はエグラフさんが訪れてきた。
シャロンも同じだったけど、供を連れていない。
「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
「ふん、くだらん」
そんな事言わねえでくれよエグラフさん。
こっちだって恥ずかしいのを耐えてんだからさ。もう慣れてしまったけども。
で、マリが案内するようである。
「こちらへどうぞ」
「……」
笑顔でエグラフさんを案内し、そして座らせたのは……シャロンと同じテーブルであった。
あのバカ……いきなり旗頭をペアにしてんよ。
「あれ大丈夫か?」
「ん~……文句は言ってないみたいだけどな」
「呆れて何も言えないだけだと思いません?」
めっちゃ思う。別の席に案内し直したほうがいいのかな。
が、続々と客が入ってきた。名門勢力の上級貴族達である。
もう打ち合わせは終わったのかな? なんて思う間もなく彼らは突き進み、迷い無く旗頭両名の下へ向かう。
そして結局、座ってしまった。
テーブルの半分がローレライ家、もう半分がゼグノート家という勢力図になってしまう。
直後に広がる一触即発の空気……ビューラが注文を伺いに行くが、話しかけられないようである。
と、ここで厨房から声が聞こえてきた。
「ルイス」
「んあ?」
ギッさんだった。俺を手招きしている。
何の用かと近付いてみれば、そこにはハイク、ラグ、ソマリ、マリ、モーティまでもが集められていた。
「あのテーブルの状況は把握しているな?」
「爆発寸前っすね」
「ビューラさんが気の毒……」
「他の生徒達も萎縮していますね」
口々に皆が答え、ギッさんは頷く。
「そういうわけで、この中から3人が出撃だ」
なんですと!?
「こういうのはルイスの出番よね」
「そうだね。ルイスは確定として……あとは誰かな」
「ちょい待て、なんで確定してんだし」
「となればマリさんかな」
「えぇっ? 私なの?」
「ルイスが空気を壊して、マリさんが新しい空気に入れ替える。あとは……」
聞けよ。なんで俺だし。他にも空気壊せる奴いるだろ。
「ケートス先輩は無理なんすか?」
「ケートス殿は今、チャールスを抑えている」
「ああ、混ざっていきそうですからね」
「それなら俺が抑えれば大丈夫っすよ」
「よし、ならばケートス殿が出撃だ」
「これで決まったね」
決まっちゃったし。ほんとに出撃すんの? あの修羅場に?
そんな俺の疑問など誰も聞き入れず、速やかに送り出された3人。
俺、マリ、ケートス先輩である。
チャールスはラグが捕獲しておくようであり、他は業務に戻った。
「出撃、つってもな」
「どうすればいいの?」
「俺に任せとけ」
「「さすが先輩」」
どうやらケートス先輩が何とかしてくれるらしい。俺達は後ろを付いていく。
「ようエグラフ、ここ座らせてもらうぜ」
「ここはバカの座る席ではない」
「んだとっ……じゃなくてだな。休憩がてら楽しく話そうぜ」
「……ふん、好きにしろ」
「おい、ルイスもマリも座れよ」
「「……」」
解決してねえ! ただ紛れ込んだだけじゃんかよ!
と、内心で盛大にツッコミを繰り広げたが意味などなく、俺とマリは席へ座った。
とりあえずビューラを重苦しい空気から解放しないとな。
「え~っと、俺はコレとコレで」
「わ、私も同じので!」
「皆も注文しようぜ! どれにする?」
こんな感じで促せば、ポツリポツリと注文が集まる。
やがて全員の注文が取り終わり、ビューラは安堵しつつ厨房へ通しに行った。
さって、ここからが本番だな……ひとまずマリに小声で聞いてみる。
「こういう時の対処ってさ、演習で実践したよな?」
「してないわよ? 私の班は空気が悪くならなかったもん」
なんですと!?
けっこう頼りにしてたのにっ!
くそ、ケートス先輩は……
「いっつも仏頂面しやがってよ、もう少し愛想良くしてみろっての」
「貴様が近くに居ると気分が悪くなる。愛想笑いすら不可能だ」
「あぁん!? だったら無理矢理にでも笑わせてやろうか!」
「芸なら足りている。貴様は普段から滑稽だからな」
「そうか分かった喧嘩だな? おい、今から始めっか?」
喧嘩してんじゃねえよ!!
どいつもこいつも使えねえ!
仕方ない……最終兵器を使うしかないな。
マリではない。
こんな事もあろうかと考えていたわけではないが、呼ぶしかあるまいと判断した。
「ハイク召喚!!」
「はい喜んで~」
即座にハイクが近寄ってくる。
何が始まるのかと皆に視線を向けられるが、彼は涼しい顔で言い放った。
「せっかく用意した休憩の場を、こんな形で壊されるとは思っていませんでした」
「っ……」
「そもそも旗頭のお二人は了承されましたよね? 親睦会の側面もあるって」
「「……」」
「なのにピリピリした空気しか漂ってこないんですけど、これが親睦なんですかね?」
「おい、ハイク……」
ちょっと待とうか。
あんまり言い過ぎたら後が怖いんだけど。
「いやいや、大丈夫ですよ? やっぱり無理かなって思うところも実はありましたし」
「「……」」
「ただ、それなら別に留まる必要も無いわけで。お二人も忙しいでしょうし?」
止まらない。
やっちまった感が俺の心を支配する。
「まあ、ここまで言われて出て行くのも情けないでしょうし、そろそろ談笑でも始めてみては?」
「「……」」
「って言うようにケートス先輩から指示されてたんですよ」
「!?」
そして全てを押し付けた。
俺はとんでもない奴を召喚してしまったらしい。
「……まあ、あれだ。盛り上がってこうぜ」
ケートス先輩がハイクの無茶ぶりを拾おうとする。
「わ、私も話を聞きたいなぁ。エグラフさんの……えっと、出身とか」
マリも続いて繋げようとしてくる。
が、拾えてもいなければ繋げてもいなかった。
・・
・・・
あれから喫茶店は繁盛し、売り上げこそないものの成果としては上々である。
かなり不穏な雰囲気だった名門勢力も、ハイクの挑発により何とか意識を切り替える。
実際に親睦を深めるために訪れたのだから、きっかけを与えただけの話だったそうだ。
とはいっても挑発しまくったのに違いはなく、後で俺とハイクは怒られたんだけどな。
しかしながら以降は一般生徒もテーブルに招いたりしつつ、談笑を繰り広げたのであった。
それも1時間ほどで旗頭両名が企画に戻ってしまったけど、身分差を過剰に意識せず話せるような場として利用されたのである。
ちなみに、名門勢力による企画も順調に進んだようだ。
午後からは開始こそ遅れてしまったものの、しっかり内容は練り上げられていたので満足度も高かったらしい。
そして俺達は夕食の時間帯になる前から片付けを始め、打ち上げの用意も進めたのである。
「それでは、お疲れさま」
「「「「「お疲れ様です!」」」」」
ガシャンと打ち合わされるグラス。
とうとう生徒会の打ち上げが始まった。
場所は利用時間が過ぎて閑散とした食堂であり、特別に借りている。
イリーナとビューラも含めて12人だな。
本当はチャールスとリンも誘ったんだが、後で合流するってさ。
「いやはや疲れたね。楽しくもあったが」
「俺は肝が冷えましたよ。さすがに無茶ぶり過ぎだろハイクは」
「ああでもしないと中々進まないと思ったんで」
「俺としてはハイクの意見に賛成だ。あれは兄上にも非がある」
「ギッさんがエグラフさんを責めるなんて珍しい」
「まあ一般生徒が居心地悪そうだったからなぁ」
「ひとまず無事に済んだので良し、だと思いません?」
「んだんだ」
皆が口々に感想や改善点を出していく。
俺も意見を出しながら、イリーナの用意した料理を頬張っていた。
てか料理が多いな。
さすがに食いきれんというか、30人前以上はあるんじゃないか?
すると食堂の扉が開かれて、ぞろぞろと誰かしらが入ってくる。
皆が視線を向けてみると、なんと名門勢力だった。
シャロン側もエグラフさん側も、10人ほどの人員を引き連れてきたようだ。
「襲撃?」
「どうしてそうなる。私が招待しておいたんだよ」
どうやらクリストフ先輩が呼んだらしい。
今回の親睦会で距離が縮まったのかは明らかでないものの、こうして全勢力で労い合うくらいは可能になったようである。
「待たせたわね。少し後始末に時間がかかったの」
「ふん……」
「今日は皆が疲れただろう。仕事の話は程々に、打ち上げを楽しんでもらいたい」
てなわけで全員が席に座り、再び乾杯。
料理が余る事もなく、賑やかに談笑が繰り広げられるのだった。
次回・・・後頭部にご注意ください
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イ「結局……誰も休んでないわね」
ハ「なんだかんだで楽しめたし、気分転換になったでしょ」
ソ「誰よりも気分転換したのは作者でしょうけどね」
ラ「これだから展開が遅いんだっつの」
ル「それよりさ、また不穏なタイトルなんだけど……」
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