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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第七章 誓いの日へ
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7_08_象徴

こんにちは。





「何もふざけてないのに。ねえアビさん」

「うん」



ネストを倒したというのに、より強い奴が現れた。


アビスが転移で連れて来たらしい黒髪の女だ。



まるで悪夢のような出来事だが、悲しいことに現実である。



「それで、ネストは死んだ?」

「……あ、後ろ。まだ生きてる」

「ほんと? 悪運だけは強いのねぇ」



いつぞやも聞かれた死亡確認だが、教えずともアビスが気付いた。


すると女は何が可笑しいのか、小さく笑いながらネストへと近付いていく。



「ほら、起きて」

「っぅ……」

「早く起きてよ、ねえ」



女が腰の剣を抜いて、切っ先をネストの太腿に刺している。


刺された本人は呻いたが、目覚める様子は無い。



なのに何度も刺しては、起きろと訴えていた。



止めるべきだろうか。


そう考えている間に、とうとう恨めしげな声が響く。




「てめえ殺すぞ」

「おはよう。あなたじゃ無理よ」

「……アビから状況は聞いただろう」

「ええ、聞いたわ。逃げられたそうね」




ネストは起きた直後に状況を思い出したようだ。


俺としては何やら話している間に逃げたかったが、黒髪の女からは欠片の隙も見付からない。



背中を見せても、敵意を漏らしても、即座に切り捨てられそうな予感がした。



「後で礼はするから、追って殺せ」

「お断り。私には関係ないもの」

「てめえぇ……だったら何のために来たんだクソが」

「そこの彼と約束したからよ。アビさん、お願い」



ここからでも分かるほどネストが憎悪を撒き散らしている。


しかし女は心底どうでもよさげに流し、傍らに立つアビスへ頼むと転移門が出現した。



「待て、まだ俺は」

「どう見ても失敗よ。命があるだけマシじゃないの」

「違う! 元はと言えば無能どもが」

「はいはい」



途端にネストが慌て出すも、女は取り合ってくれない。


それどころか転移門へ蹴り飛ばされ、転移させられてしまった。



「さて、お待たせ」



今度は俺の番か。


勘弁してほしいところだが、逃がす気は無いらしい。



「約束なんかした覚えが無いんだけど」

「忘れたの? あの洞窟で交わしたでしょう?」



だから知らね……っ!



「っく!」


初動も把握できないまま、女が一気に踏み込んできた。


逆袈裟に振られた剣を寸前で反応して受け止めると、どこか嬉しそうだ。



「今度は殺してあげるって、約束したでしょう?」

「知るか!」



一方的過ぎだろ!



剣を切り結んだ状態で女の腹へ蹴りを放つと、後ろに飛んで回避される。


その僅かに空いた距離を詰め、しきりに斬り掛かった。



どれも本気であったが、全く通用しない。


涼しげな表情を崩すこともなく、何かを待っているかのように防ぐばかり。



けどな、俺にとっては好都合だ。


魔法だって準備できたしさ。



「”ブレイズフォーム”!」

「あら」



中級であっても補助魔法で身体能力が向上。


いきなり加速した一閃は、受ける力を間違えたのか僅かに押し込めた。



けど、勢いを活かす前に大きく後ろへ飛び退かれ、ずっと同じ場所へ立ち尽くしていたアビスの元まで後退されてしまう。



追いすがるべきか……いや、アビスまで刺激するかもしれんから追撃は無しだ。




「どうして上級じゃないの? 楽しみにしてたのに」

「……たぶん魔力が無い」

「あぁ、そっか。ネストと戦ったのよね」



無駄話までするほど余裕か。


こっちは悪態を吐く余裕すら無いというのに。



もう魔力が空だし、満身創痍で意識が覚束ない。


気を抜くと膝から崩れ落ちてしまいそうで、どこまで保つのやら。



「……つまらない?」

「ふふっ、そんなことないわ。頑張った人には応えてあげましょう」

「……やるの?」

「ええ、お願いね」



何か手は無いのかよ。


今すぐ森へ逃げ込む? 交渉を持ちかける?



……くそっ……頭を巡る考えの全てが無意味に思えた。


森へ逃げ込む前に殺されるし、俺の命が狙いなんだから交渉の余地は無い。




なんて、絶望してる場合じゃねえ。


俺は諦めの悪さが取り柄だろうが。




「ねえ、あなたも知ってるでしょう? ”これ”を」



微かな糸口でも良い。必死に考え……っ!



「それは……」



起死回生の策を見出すべく巡らせていた思考が止まった。


同時に女が傍らへ立つアビスの肩に手を置くと、アビスの体が溶け崩れる。


ゆっくりと手首へ移動したそれは、一瞬の発光が収まると……腕輪に変貌していた。




魔憑(まがつき)はねぇ、そっちの専売特許じゃないのよ」



つくづく最悪の状況だ。アビスが魔祖だとはな。


もちろん真祖教団が魔祖を擁している可能性は、もっと前から浮上していた。



けど、導きで繋がった相手まで居るとは予想できてない。


ただでさえ異様な強さを誇る黒髪の女が、魔憑(まがつき)で更に強力な身体能力を得てしまう。



さらに、アビス自体が無詠唱で超長距離を転移できるし、魔祖であるなら魔力量も莫大だろう。


もし大軍すら一気に転移できるとしたら……もはや戦術級を超えた、天災級とでも言うべき脅威になる。




この情報は報告しておきたかったが……いや、今はどうしようもないか。





「言い残すことは?」

「ない」



少なくとも、お前に言うことは何もない。


ただ剣を構え、僅かな挙動も見逃さないよう集中する。



「ふふっ……勇ましいわね」

「!」



女が踏み込む。


直後に姿は掻き消え、一瞬で真横に移動された。



それだけ判断すると同時、考える暇も無く左腕のみで剣を振るう。


すると甲高い高音が響き渡り、剣を持つ手が跳ね上げられた。



「良い反応」



嬉しそうな声は後ろから聞こえる。


わざと聞かせたんだろう。


体を捻りながら屈み、後ろへ足を払うが当たらず、その勢いで振り返っても姿は無い。



けど土を踏む音は捉えた。


二回地を蹴り、俺の回転に合わせるような軌道で再び背後を取ったらしい。



足を払った直後では重心が安定せず、前へ飛ぶことは不可能。


ちりつく首筋を護るように剣を掲げると、間一髪で防げたのか重い衝撃が走る。




「ふふっ」



小さな笑い声は、まだ後ろから聞こえる。


剣も触れ合ったまま……しかし、動くことが出来ない。



上から押し込まれているんだ。


こんな体勢では振り払うことも難しい。



かといって、押し返すのも不可能だろう。


力を籠めるほど、同じ力で抑えられて拮抗するばかり。



まるで俺を試すように、次の一手を待っている。



遊んでやがるな。




「ちっ」

「!」



舌打ちを鳴らしつつ、剣の柄から片手を放す。


そのまま女の剣の刃を掴み、指を失う覚悟で引き寄せると、女は踏鞴を踏んで俺の左側へ躍り出た。



意外だったのか、女は不思議そうな表情を晒している。


俺は解放された自身の剣を握りしめ、背中から引き戻す勢いのまま振り下ろした。




だが、女の肩へ振るった剣は届かない。


真似するように片手を柄から放し、刃を摑み取ったのだ。



受け止めるだけでは手を斬り裂かれるだけ。


だから防御はできないと思っていたのに、指で挟んでいる。


「っが!」



ここからの一手を模索する前に、女が俺の顎を下から蹴り上げた。



首が吹き飛んだかと思うような衝撃と痛みが走り、意識が一瞬だけ飛ぶ。


続けざまに腹へ重い一撃が見舞われ、踏ん張ることも出来ず数歩下がってしまう。




女は剣を手放したようだ。


俺は二本を手にしたが、あいにくと両手で剣を扱う技術は習得していない。



とりあえず女の剣を地に突き刺し、刃を埋める。


そのまま柄を蹴り折って、武器を破壊した。




「あら残念。それ気に入ってたのに」

「そうかよ」



本来は、武器を所持している俺が有利だ。


しかしながら、相手は時空系統の魔祖を相棒にしている。



「アビさん」

『……』



一言で要求を汲み取ったアビスが”収納”を開いた。


女は無造作に手を入れ、すぐに次の武器を取り出している。



今度は大剣かよ。


さっきの攻防で把握した限りでは、受け止めるなんて無理だろう。



「ルイス、だったかしら」

「!」



またしても姿が掻き消え、寸前で背後から声が聞こえる。


今回は立ってたから前へ飛ぶと、空を切る音が耳に届いた。



振り返れば、女は大きく空振りした体勢で俺を見ている。




「あなたの名前は聞いたことがある」

「……」



腰だめに構えた女が真っ直ぐ距離を詰めてきた。


逆袈裟に振り抜かれる大剣を避けたが、まるで紙を扱うような速さである。



「私には関係ないけどね」

「っ!」



反撃する前に大剣が頭上から迫ってきた。


少し下がりながら避けると、豪快に武器を投げ飛ばしてくる。



仰け反って回避しても、既に女は次の武器を取り出していた。



細剣だ。


二本を両手に持ち、悠々と歩いてくる。



その分だけ下がっても意味は無いと判断し、今度は俺から攻撃した。




「しっ!!」

「でも珍しいのよ、彼が執着するのは」





一撃目は避けられ、二撃目は流される。


三撃目は打ち払われ、ついでとばかりに刺突で肩を貫かれた。



痛みは無視して剣を薙ぐと、肩から細剣を引き抜いて避けられてしまう。



「だから、楽しみなの」

「!」



何を期待したかも分からないが、考えている余裕は無い。


先ほどまで俺を試すような様子だったのに、一転して殺気を撒き散らしてきた。



「あなたを勝手に殺したら、どんな顔するかなぁ」

「……!」



息の詰まるような殺意が全身を強張らせる。


相対してから感じていた予感が、まるで霧のように漂っていた結末が、このとき輪郭を定めたかのようで……




「おおぉぉ!!」



振り払うように雄叫びを上げながら突進し、深く踏み込んで一閃。


受けたら武器が折れると判断したのか、女は上体を反らして避けた。


だが、反りながら細剣が振られ、見えない右目側から迫った斬撃に反応が遅れる。




「うぉ……」



脇腹を裂かれ、もう片方の細剣は左目を狙ってきた。


頭を傾け回避したが、上体を戻す反動のまま右側を抜かれてしまう。



見失ったのは一瞬だけ。


しかし、その刹那に右足を二度も斬られた。


振り返りながらの一閃は流され、左腿を刺し貫かれる。


その痛みが走るよりも速く、今度は左脇から右肩までを斬り裂かれた。




圧倒的な実力差だ。


俺は女の姿を捉えきれず、武器は誰も居ない空間を斬るばかり。



動くほどに傷は増え、血を流し過ぎたのか体力が限界なのか視界が霞む。




「……よく頑張ったわ」



俺もそう思う。


猛攻を仕掛けられ始めて何分……いや、何秒か。



既に限界は超えて、一歩すら動けそうにない。



そんな俺に引導を渡すべく、女が目の前で重心を傾ける。



静かで、速く、鋭い踏み込みだ。




「さよなら」



本当に強かった。


アルフォードですら勝てなかった相手に、よく耐えたと思う。



だからさ、最後まで踏ん張るしかないよな。




「おおっ!!」



歯を食いしばり、足が砕けるほど地を踏みしめて、剣を振る。



何度も繰り返した剣筋は、我ながら過去最高の一振りだ。




しかし、結果には結びつかない。




「……か……ぁ」




俺の剣は女の髪すら触れることなく、女の剣は俺の腹を深々と裂いた。



骨まで達した傷から、どろりと暖かい血が流れる。




あ~……完敗だ。




振りかぶったまま動けずにいると、背後で地を蹴る音が聞こえた。



反転して首を斬り落とすんだろう。



この痛みも苦しさも、次の瞬間には消えて無くなる。




”一緒に居てほしい。ずっと……何があっても”




……虚しくはないが、寂しいな。


どうしても思い出してしまい、申し訳ない気持ちが湧き出てくる。



俺も、一緒に居たかった。


そんな言葉は、自分で届けるしかないのに。



『待って』

「あら、どうしたの?」

『ルイス、まだ生きてる?』

「ええ、もうすぐ死ぬけど」



でも、今更になって謝るのは遅くて。



嘆くのも烏滸がましくて。



『さっき、言われてた。取引するって』

「……なら連れて行くわ」

『ほんとに?』

「ええ、恩を売るのも悪くないから」




……誰だ、俺を動かすのは。



邪魔すんなよ。



最後くらいは、イリーナだけを想う。


俺にはもう、それしか出来ないのに。





・・

・・・





「……ぅ」





最初に感じ取ったのは、(かび)の匂いだった。


鼻を突き刺すような刺激臭では無いが、心地よいとは到底思えない。



この匂いを、俺は何度も嗅いだことがある。



学校の古い倉庫や、仄暗い地下通路。



そして……



「おはよう、ルイス君」



誰かも知らない声が耳に届き、意識が急速に覚醒していく。


視界には罅割れた石畳が映り、乾いて固まった血痕が染みを描いている。



身を捩っても、思うように動けない。


じゃらじゃらと鉄の擦れる硬質な音だけが響き渡り、手足と首に微かな振動が伝わった。



あぁ、そうだ……牢獄だ。


この(かび)臭さも、鉄の鎖が擦れる音も、覚えがある。



「……誰だ、お前」



顔を上げると、見知らぬ男が目の前に屈んでいた。


およそ牢獄という場所に似つかわしくない、柔和で屈託のない笑顔を貼付けている。



「ここはレトリアという街の地下牢だよ。ルイス君はリーファ様に敗れ、拾われた」



俺の誰何に答えることはない。


代わりに答えたのは、ここが何処なのかと、ここに連れてこられた経緯だ。



色々と思い出した。


リーファ様ってのが誰かも知らないけど、黒髪の女だろう。


ネストを撃破した後で、アビスが連れて来たリーファに敗れたんだ。



致命傷を負ったはずだが、自分の全身を眺める限りでは治療されたらしい。



生きていたのは嬉しいが、喜ぶ場合ではないか。


このレトリアという街の地下牢に連れてこられたのは、状況が良くなったと思えんし。



何が目的なのか、分からずとも予想はできる。


俺……というより魔焉が真祖教団の人員を捕えるのと同じく、情報を得るためだろう。




「リーファ様が戦った相手を生かしておくなど、珍しいことだ」

「……」

「取引か、もしくは恭順を期待したのか……実に興味深い」



男は独り言を呟きながら、俺を隅々まで眺め回している。


気持ち悪さに耐えつつ魔法を用意しようと試みたが、自分の魔力を感じ取れない。


魔力封じの枷で拘束し、さらに鎖で吊るされているようだ。



力ずくで抜け出す方法は無いんだろうな。


一度は試すべきだが、男が立ち去ってからだろう。




「できれば教えてくれないか、ルイス君」

「……」



まあ、このまま放置してくれるわけないか。


尋問が始まるようであり、答えなければ拷問も厭わないはず。



当然ながら何か教えてやる気は無い。


どのみち解放されるわけないし、拷問で死ぬか、洗いざらい吐いて殺されるかだろう。




「どうやってリーファ様に取り入ったのか、秘訣を知りたいんだ」

「……は?」



国家機密について知りうる事を教えろ、とか聞かれるんだと思っていた。



しかし、質問は予想に反した内容だ。


取り入った? 俺が?



「リーファ様は人の身でありながら、我ら革命軍における”象徴旗将(しょうちょうきしょう)”の席を得ている」

「……」

「だが誰も近づけなくてね、部下の一人も居ない。敵に容赦が無く、味方に興味が無い御方なんだ」



ぺらぺら内部事情を教えてくれるとはな。


真祖教団というのは、俺達が便宜上の呼び名として使っているだけ。



実際こいつらは自身を革命軍だと認識しているようだ。


さらに、”象徴旗将(しょうちょうきしょう)”という階級があるらしい。



いわゆる司教級というやつだろう。


その座にいる黒髪の女……リーファは部下を持っていないと。


つまり、同じ階級だろうネストやルドルフは部下を持っているんだな。




「素晴らしいと思わないか!」

「っ……」

「誰に媚びることなく認められた、孤高の存在! まさに力の象徴だ!」



男がいきなり大声を出し、両手を広げた。


視線は天井へ注がれるが、まるで別の何かに見蕩れるような、恍惚とした表情を晒している。



「確信があるんだよ、ルイス君。彼女に認められたとき、私は新たな象徴として生まれ変わるだろう」

「……」

「しかし、どんな手段を講じようとも……彼女は私を認知してくださらない」



とても悔しそうに、男は力なく項垂れた。


だが、すぐさま這うような動きで俺に近付き、その肩を掴んで揺らしてくる。



「教えてくれないか! あの御方に名前を覚えられ、しかも連れ帰るほどの興味を持たれる方法が知りたいんだ!」



俺に抵抗する術は無い。


されるがままに揺らされ、繋がれた鎖が連動しては硬質な音を響かせた。



聞く限りだと革命軍での地位向上を望んでいるらしい。


新たな象徴、つまり”象徴旗将(しょうちょうきしょう)”の座を得たいって意味だろう。




「……馬っ鹿じゃねえの」

「?」



俺には理解できない。


こいつが恍惚とした表情で語ったリーファは、世界を敵に回し、罪の無い人達を虐殺するような危険集団の幹部だ。



そんな集団の中で偉くなって、何が満たされるというのか。



「お前らは犯罪者の集まりでしかねえ。象徴とか烏滸がましいんだよ」

「……取り消せ……子どもに何が分かる」



おっと、癇に障ったらしい。


煽り耐性0かよ。

俺と話すには役不足だな。



「その子どもに縋り付いてんだろ? お前のほうが何も分かってねえじゃん」

「違う! 私は分かってる! あとは導くだけなんだ!」



導く?


笑えてくるな。


こんなすぐ取り乱すような奴が、誰をどう導くってんだ。



「誰も相手しねえよ」

「黙れ! 私は」

「犯罪者だ。それでしかない」

「~~~っ!!」



声を荒げる男を遮り、変えようの無い事実を告げた。


世の中を壊すような活動である限り、革命とか導くとかは成し遂げてこそ認められるんだろう。


未遂のうちは犯罪者でしかなく、それ以上でも以下でもない。




「そのあたりにしておけ」

「!」



男がいよいよ殴りかかってきそうな怒気を撒き散らしていたが、地下牢に響いた声で固まった。



冷水を掛けられたかのように肩を跳ねさせ、ゆっくりと振り返る。



まだ姿なんて見えなくても、そうせざるを得ないかのように。



先ほどまで気付かなかった靴音すら、一定の間隔で近づいてくる事実が耳を支配して放さない。




「彼は我々を理解していない。まずは話して聞かせるべきだろう」




俺は知っている。



声や姿、その全てが無視できない存在感で満たされた……あの男を。




次回・・・


ーーーーー

確定しましたら掲載いたします。


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