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坂上一の仮面生活~その2~

なんと二話一挙に更新!


初めての快挙!自分で自分を褒め称えたい(笑)

それではどうぞ(*^^*)

 学校に着いてすぐ、皆の話題は私の新しい執事の事で持ちきりだった。

 まあ確かに金髪で碧眼ともなれば誰だって興味を抱くだろう。ましてや小学生、好奇心は半端じゃない。その話をしているグループの中でも、一際目立つ存在が佐久良(さくら)さんという女子だ。

 この佐久良さんも良いとこのお嬢さんらしい。『らしい』というのも、私自身は外での接触が無いから分からないのだ。


 普段から私も財閥同士の会食であったり、上流のパーティに出席したりしているのだが彼女をそういった場で見かけたことがない。そんなことをボーッと考えていると、その佐久良さんと目が合った。


 彼女らは嬉しそうにこちらへ寄ってきて、質問してくる。


「ねえねえ、はじめちゃん! あの執事さん誰? 凄く格好いい女の人だったよね?」

 格好いい女の人? 私にとっちゃただの嫌なねえちゃんですよ。


「サチって名前の人だよ。まだ新しい人だからね~」

 取り合えず無難に答えを返す私。まあ正直ほんとに名前以外全然知らないし。


「前からちょくちょく見かけてたんだけどさ。今日は運転してたんだね」

 佐久良さん目ざといな。付き添いでいたときなんて、ほとんど車から出てなかったのに。現に今日まで話題に上がらなかったぐらいだ。大半の人間は気付いてなかったと思う。


「前の人が辞めちゃってさ。それであの人が私の新しい執事さんなんだ」


「そうなんだぁ」


 ほんとは前の神宮寺さんが良かったんだけどね。そう心の中で思いながら、笑顔でやり取りする。

 この佐久良さんの笑顔も他の人達と一緒だ。この笑顔の下には、黒い感情が渦を巻いてる。私と仲良しを演じたいだけ。そうやっていれば何か得するんじゃないかと。そんな下心が見え隠れしている。



「サチさんはどんなことが好きなのかな?」


「さぁ…」

 ほんとに知らない。


「サチさんて休みの日も、一緒に行動してくれるの?」


「さぁ…」

 今日から本格的にって事なのでまだ休みの日を経験してない。


「もう~、はじめちゃん。『さぁ…』ばっかりじゃん!」


「ごめん…」

 私だってほんとに知らないんだし、それに何でこんなに人気なの? 優秀で、それでいてほんとに人に興味を持たれるなんてずるいよ。私なんて私自身を見てくれる人なんていないのに。

 今のやり取りと朝の出来事も相まって、私はイライラしてきていた。どいつもこいつも好き勝手言いやがって。


 だからだろう。私の学校生活において言ってはならない一言を私が言ってしまったのは。


「ねぇ! 今度さはじめちゃんの家に行かせてよ~。サチさんとかも一緒に遊んでみたい!」

 佐久良とその周りの子達がねだるように言ってきた時だ。


「もう! いい加減にしてよ! 別に友達じゃないのに何で私がそんなことしなきゃいけないの?!」

 私の言葉に思わず皆が黙り混む。

 友達じゃないのに。それはお互い暗黙の了解だった。それでも上辺だけの笑顔と言葉を止めなかったのは、少しでも繋がっていたかったから。友達を演じることで、心の隙間を埋めておきたかったから。


 だがそんな関係が長く続く訳もなく、現に私の学校生活での関係は、今まさに音を立てて崩れていくところだった。


「あっ…違うの」

 取り繕う為の言葉を探す。だが、もう遅かった。


「だ、だよねー。確かに私たちも友達って訳じゃなかったしね~」

「う、うん。なんかゴメンね。ちょっと迷惑だったよね」

「向こう行こ?」

 次々と佐久良さん達は申し訳なさそうにして離れていく。表立って事を荒げることはない。所詮は私の後ろに憧れを抱き、そして恐れを抱いているのだから。

 しかし、離れていく佐久良さん達からハッキリ聞こえた。


「ってか調子のってない?」

「今まで構ってやってただけでも感謝してほしいよね~」



 学校が終わり、一人で門へ向かう。校門ではサチが車から降りて待っていた。


「お帰りなさい」


「うん…」

 それ以降私たちは何も言葉を交わさず、黙って家路についた。


 翌日。この日も昨日と同じ。サチに起こしてもらい、朝食をとる。そして着替えを済ませ、学校へ車で送ってもらう。それから学校生活が始まる。

 昨日と違うのは、もう私に誰も近寄らないこと。そう。昨日の時点で、私は学校に居場所を無くしたのだ。いじめられることなんてない。教師も生徒も私の後ろを懸念しているから。しかし、被害はなくとも存在を認識されない。空気のように扱われる。教師も生徒間のそれを感じ取ってか、何も言わない。まるで、腫れ物のような扱いだ。


 分かりきっていたことだった。いつまでもこんな関係が続かないことは。しかし、いざこうなってみると案外キツい。


「……辛いなぁ」

 私の独り言は誰にも届くことはなかった。


 それからちょうど一週間が経過したときだ。さすがに精神的に限界だったのだろう。私は学校に行きたくないと、両親に伝えた。しかし、その時の両親は仕事が忙しかったらしくまともに取り合ってはくれなかった。


 そして、またサチに任せると私をサチに押し付けて仕事に出掛けてしまった。こうなってはもう学校へ行くしかない。憂鬱な気分で私は車に乗り込んだ。


 しばらく車に揺られ、今日はどうやって学校での時間を潰そうかななんて考えていた。不意に窓に目をやったときに、いつもとは違う景色が広がっていることに気づいた。


「あれ? サチさん。道間違えてるよ?」

 私はサチに注意を促す。しかし、サチは私を無視して車を走らせる。


「ねぇってば!」

 私が大きな声をあげると、車は急停車する。一瞬、私の声にビックリして停めたのかと思ったが、どうやら普通に目的地に着いたからのようだ。


「学校のサボり方、教えてあげる」

 そういってサチが車から降りるように促す。車から降りて目の前の建物を見上げると、そこはゲームセンターだった。


 私は訳が分からず、サチに目でどう言うことか説明を求める。


「最近なんか辛いことあったんでしょ? だから今日は遊ばせてあげる」

 そう言って、サチは私の手を取って建物の中に入っていった。


 それまでゲームなどをした事がなかった私は、たぶん凄くはしゃいでいたのだろう。サチもそんな私を見て、クスクスと微笑んだ。


「あっ!」


「……? どうかした?」


「笑った!!」

 するとサチは少し恥ずかしそうに目を反らし、代わりにゲーム機に私を座らせた。どうやらこれをやれと言うことらしい。


 それから数時間、二人でみっちりゲームセンターを満喫し、外へ出た頃には辺りは夕暮れだった。


 帰りの車中。サチは独り言のように、ポツポツと話始めた。


「あたしもさ、小、中学校では常に浮いてたんだよね。ほら、こんな外見だしさ。だからずっと独りだった」

 サチはずっと独りだった。学校でも異端な存在として扱われ、友達と呼べる人間は皆無だったらしい。だから昔は不良だったそうな。


「でも、高校の時変なやつがいてさ。そいつとそいつの彼女だけは私の事を普通の女の子として接してくれたんだよね」

 そう話すサチの瞳は、懐かしみとほんの少し悲しみが混ざってるように見えた。


「だから、あんたも大丈夫だよ。今はあれでもきっとあんたの事を普通の女の子として接してくれる人が出来るからさ」

 だから、あんたはあんたらしくしていれば良いよと。そう言わんばかりにサチは私に微笑みかけた。


「サチさんは…」

 辛くなかったの? と言おうとした私の言葉を遮り、優しい声色で「サチで良いよ」と言ってきた。その時のサチの顔を見て私は質問を取り止め、代わりに今までの仕返しと冗談混じりにこう言った。


「じゃあ、サチは私の事はお嬢様と呼ぶように!」

 ふふんとふんぞり返りながらサチに言うと、サチは肩透かしを食らったような顔をした後、笑いながら返してきた。


「はいはい。お嬢様」


「それからちゃんと敬語も覚えてね! でないと追い出すよ?」

 今度はさらに冗談を重ねる。いつかの脅し文句の時のように。あの時と違うのはサチの表情と言葉、そして宙をさ迷わない私の右手。


「それは困りますね。せっかくお嬢様と仲良くなったのに」

 今度はしっかりと握手をする。


「えへへ。じゃあまずは黒髪に私が染めてあげる」


「えー…」

 二人で見つめ合いながらくすりと笑う。私は今日、本当の友達が出来た。


 それから高校に上がるまでの七年間。サチとはいつも一緒だった。

 そして高校二年の春、彼らとの出会いに私は少しの不安と少しの期待を抱き、共に歩んでいくうちに傷ついて、喜びを知るのだ。




いかがでしたか?


はじめちゃんとサチさんの過去です。この二人が姉妹のように仲のいい理由が少し垣間見れたかと思います。


次回からは本編です。忘れてるかたもいるかもしれませんが、この小説の主人公は雷斗ですよ(;´д`)


お気に入り登録誠にありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたしますm(__)m

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