南島十夜の仮面生活~その2~
お久しぶりですm(__)m
遅くなりましたが、最新話です。
それではどうぞ!
ひとしきり海で遊んだ後、夕食時となったところで俺達は別荘の庭でバーベキューをしていた。色とりどりの野菜と、鮮やかなピンク色の肉。それが鉄板の上で華麗なる変身を遂げ、口に入れると瞬く間に味が広がっていく。その味はまるで草原にいるかのように爽やかで…。いや、ともかく美味い!
ちなみにバーベキューを楽しむためには、肉、野菜、野菜、肉、野菜という順番で食べるのが良いらしい。まあ、この別荘の持ち主であるはじめちゃんは肉しか食ってないけど。
「やっぱり夏はバーベキューだよね!!」
「こうやってみんなと外で食べると美味しいよね~」
女子達の微笑ましい会話が聞こえてくる。これだけでも来て良かったと思える。
「あ、そうだ!雷斗君ー!」
突然何かを思い出したように、雷斗を呼ぶはじめちゃん。当の雷斗は、死んだ魚のような目でボーッとしている。
「仕方ねえな…」
ぼそっと独り言を漏らし、俺は雷斗に近づいていく。
「呼んでるぞ」
「え!!??」
俺の呼び掛けに大きな声を出す雷斗。
「うわっ! なんだよデカイ声出して……」
「よ、よんでるって…」
「いや、だからはじめちゃんがお前のこと呼んでるぞって」
「あ、あぁ…」
ようやく状況を理解したのか、渋々とはじめちゃん達の方に向かう雷斗。その際何故か雷斗に睨まれるという理不尽を経験した俺は、気分直しにバーベキューを楽しもうと鉄板の方に近づいた。その時だ。
「さっきはじめちゃんと話してたんだ。噂だとこの付近にオバケが出るんだって」
なん…だと…? 今、優香里ちゃんが発した言葉の中に聞き捨てならない単語が混ざっていた気がする。いや、きっと気のせいだ。そう思い込もうと、俺は肉を口に運ぼうとする。
「夏と言えば海!! バーべキュー!! そして極めつけは肝試し!! この夏をより一層楽しむために、我々は肝試しで一夏のアバンチュールを堪能するべきだと思わないかい!?」
キモダメシ…だって? 俺は動揺したあまり肉を落としてしまう。
ここまでの反応で既に分かると思うが、俺、南島十夜は、オバケ、妖怪と言ったオカルト的な事が大の苦手だ。
考えても見てほしい。普段は見ることもない存在がそこにいる恐怖を。本来であれば存在しないはずなのに、禍々しい雰囲気共に突如として現れる恐怖を。
そして、一番の恐怖はこちらからなにもできない事だ。ずるくないか? こっちからは殴れもしないのに向こうはこっちを呪い殺せるとかさ。
「やめとこうぜ」
なんて言えるわけもなく、どうやら雷斗も女子達の押しに負けて肝試しに行くことが決まったらしい。
俺が絶望的な気分で立ち尽くしていると、雷斗がこちらを振り向いた。
「どうかしたのか?」
「へっ? いやいや、何でもないぞ?!」
いや、ここは素直にやはり行くのをやめないかとやんわり伝えるべきなのだろうか。しかし、さっかくの女子達の気分に水をさすのも気が引ける。ってか何で女子達は平気なんだよ。
そんなことを考えてるうちに、雷斗が呆れ顔で聞いてきた。
「怖いのか?」
「へっ? べ、別に怖くねえし?!」
怖いに決まってんだろうが! 俺のバカ野郎!
そんなこんなで日も暮れ、いよいよ肝試しの時間になってしまった。
昼頃までは爽やかな雰囲気だった山々も、今となっては地獄の入り口のような暗闇が大きな口を開けている。
はじめちゃんが言うには、山の中腹にカードを置いているので、それを取りに行くのが目的らしい。周りの景色は、歩く度に不気味さを増していく。もういつ出てきてもおかしくない。
俺は雷斗の服の裾を掴みながら、ほぼ目を瞑った状態で歩いていた。
「いや、気持ち悪いから離してくれないか?」
「無理!」
今離したら余計怖いだろうが。
その時、突然近くの草がガサガサと揺れたかと思うとそこから『何か』が現れた。
『みぃ~たぁ~なぁ~~!!』
まるで地の底から響いてるような声を発しながら『何か』はこちらをゆっくりと振り向いた。
「キャーーー!!」
「どんだけーーー!」
女子達の悲鳴と共に、俺は悲鳴をあげながらその場から全力で走って逃げた。
「な、なんなんだよあれは!」
走りながらさっきの『何か』を思い出す。
黒くて長い髪。服装はまるで死装束のような真っ白な着物。間違いない、あれは幽霊だ。
しばらく走ってから俺は後ろを振り返る。どうやら追いかけてきては無いらしい。そこでようやく俺は走るのをやめた。
「ハァ……ハァ…。ふぅ。ってここどこだ?」
ふと我に帰って辺りを見渡すと、生い茂る草や木などしか見受けられず道らしい道も無い。どうやら完全に迷ってしまったらしい。
「雷斗ーー! 優香里ちゃーん! 伶以子ちゃーん! はじめちゃーん!」
全員の名前を叫んでみたが、聞こえてくるのは自分の声の反響だけ。いよいよ心細くて再び怖くなってきた。
「マジでどうすんだよこれ…」
このまま明るくなるまで、この不気味な山で過ごすのだろうか。それだけは勘弁してほしい。そう思っていた矢先、近くから笑い声が聞こえてきた。
その笑い声は複数聞こえ、俺は恐怖よりも先に安堵を覚えてその笑い声に近づいていった。
しばらく行くと、再びガサガサと草が揺れた。
そこで俺は、もしかしてこれも幽霊の仕業ではないかと思い始めた。だがここまで近くに来てしまっては手遅れだ。俺はすっかり逃げる気力を失い、その場に立ち尽くしていた。そして、ガサガサと揺れていた草から何かが勢いよく飛び出してきた。俺はこのとき正直死を覚悟し目を瞑って、自分の思い出を振り返っていた。
おふくろ。ごめんな、もっと家を手伝ってやりたかった。
明日香。もっと一緒に遊んでやりたかったな。
みんな。学校が楽しいと思えたのはみんなのお陰だ。これでこの世に対する思いは残せた。後は目を開ければ天国になっているはずだ。
「ってあれ? 死んでねえぞ?」
恐る恐る目を開けながら、周りを見る。するとそこは先程と変わらぬ景色だった。ひとつだけ変化していたのは、傷だらけの犬が俺の頬を舐めていたことだ。
「くぅーん…」
その大きな体格とは裏腹に弱々しい声で鳴く野良犬。所々に血が出ている。
「お前…」
こちらが心配して手を差し伸べようとすると、野良犬はビクッと体を震わして離れてしまった。どうやら相当な警戒をされているらしい。
すると先程聞こえていた笑い声が近くなってきた。野良犬はその笑い声にまた体を震わしている。
「さっきの犬どこだよ? 投球練習の途中だってのによ」
「卓也くんマジぱねぇわぁ」
「さっきの野良犬もマジうけんだけど!」
笑い声と共にそんな言葉が聞こえてきた。ここまで聞けばバカな俺でも状況は理解できる。そこで体を震わせて怯えるように丸くなってる犬の傷は、声の主達にやられたものなのだろう。俺は今や恐怖は完全に消え去り、この声の主達に対する怒りが沸き上がってきていた。
「お、はっけーん!」
そんな間抜けな声を発しながら、草葉を分けて声の主が顔を出してきた。一人に引き続き、二人、三人といかにもチャラそうな人間が出てきた。
「お? なんか犬と一緒に変なやつもいるぜ」
「あいつ人間? 卓也くんやっちゃってよ」
「そうだな! 幽霊だったらヤバイもんな!」
そんな会話をしながら、一人が俺に向かって石を投げてきた。俺はそれを寸でのところでよける。
「あ、なに避けてんだよ!」
「もういっちょ! 喰らえ!」
続けざまにもう一石投げてきた。今度はそれを受け止めて、投げてきた奴に投げ返してやった。
「いってぇ! マジいってぇ!」
「卓也くん大丈夫?」
「てめー何してくれてんの!?」
さっきから好き勝手言ってくれるもんだ。
思えば散々だ。幽霊は出るわ、迷子になるわ、幽霊かと思ったら野良犬も出るわ、変な奴も出るわ。変な奴に絡まれるわ。ついでに言えば帰る道もわかんねえし。あぁ…なんか本気でムカついてきた。
「おい! 何シカトしてんだよ」
そう言いながら近づいてきた一人の胸ぐらを掴み、持ち上げる。こいつらに八つ当たりするのもどうかと思うが、弱いものいじめしてる奴らを見過ごすわけにもいかない。
「てめーら、覚悟はできてんだろうなぁ?」
「ひっ!? や、やめ…ギャーーーー!!」
いや、本音を言えば九割は八つ当たりだ。
すっかり大人しくなった三人に道を聞いて、途中山道に足をとられ転げながらもなんとか下まで降りてこれた。その際もずっと野良犬がついてきた。どうやら完全に懐かれてしまったようだ。
「もうだめ~」
へとへとになった俺はその場に倒れこんだ。せっかくの再会だと言うのに皆はというと、あ、居たんだっけ?みたいな顔で見ている。酷くない?
頬に感じる生暖かい犬の舌の温度だけが、俺の慰めになっていた。
─────
まあそんな感じで俺達の一泊二日は幕を閉じた。ちなみにあのときの犬は、はじめちゃん家で飼うことになったらしい。怪我も完治して、今ではすっかり元気になったと聞いた。
さて、この事件からさらに後にも雷斗やらみんなには助けてもらったりと色々あった。そして、これからも俺達の学園生活最大のピンチも訪れたりするんだが、それはまだまだ先の話だ。
傷つけ傷ついて、それでも俺達は『仮面生活』を続けていく。それがいつか笑い話になる日がくるまで。
如何でしたか?
こんだけ期間が空いたらもう誰も覚えてないかもしれませんが、一応本編の派生ですので、あの時のワンちゃんが懐いていた理由がこれです。
お気に入り登録や評価など誠にありがとうございます。
次回は本編!といきたい所ですが、もう二話ほど寄り道をさせてください。次回はからははじめちゃんのお話です。




