仮面の謎
お待たせ(待ってる人いる?)しました♪
第28話更新です(*^^*)
目の前の事が信じられないといった顔で立ち尽くす坂上。それもそのはずだ。俺達の視線の先にいる二人の人物は、俺の知る限り相容れない仲であるはずだ。
その二人が、休日にこうして二人きりで会っているという現実が、俺の隣にいる少女の心に衝撃を与えている。
「おい、坂上。行くぞ」
そうしている間にも、二人はどこかへ移動しようとしている。俺は坂上の肩に手を置いた。すると置いた手からは、坂上の体が小刻みに震えているのが伝わってきた。
「坂上?」
「……サチから今日は用事があるって聞かされてたんだ」
消え入りそうな声で坂上が言った。俺は続きを促すように無言で坂上を見る。
「何があるの?って聞いたら『買い出しに行くためです』って言われたの。でも……」
そう言って、坂上は顔を上げる。無論視線の先には、二人が映っている。
「何で嘘ついたんだろう…」
坂上は再びうつ向いてしまう。よほどサチさんの嘘が坂上にはショックだったらしい。
「それを今から確かめるんだろ?」
坂上は俺の言葉に、目をぱちぱちさせて驚いている様子だった。しかしそれも束の間、次の瞬間にはいつもの坂上の笑顔がそこにはあった。
「よーし!もしサチに何かしたらあのおじさんはただじゃおかないよ!」
そう意気込んで後をつけ出す坂上。拳を握りしめて、肩を回している姿は少し物騒だと思ったが、口に出すと我が身に降りかかってきそうなので大人しく坂上についていく。
しばらくつけていくと、二人はどこかの高そうなレストランへと入っていった。
「なぁ坂上」
「なんだい?」
俺はあることを話すため、坂上を呼び止める。
「こんなとこに入れるほどの持ち合わせが無いんだが…」
表に出ているメニューの値段だけで懐が極寒になってしまいそうだ。このまま大人しく外で待っていた方が良いのではないかと思う。
「大丈夫!ここなら何度か来たことあるし、私の顔見れば店員さんも通してくれるよ」
そう言って坂上はずかずかと中へと入っていく。ここは坂上についていくしか無さそうだ。
中に入ると、柔和な人相の店員が爽やかな笑顔と共に出迎えてくれた。その店員は、坂上を見るなり「いつもの席でよろしいでしょうか?」などと訊ねてくる。
坂上が大体の事情を話すと、店員は特に迷った様子もなく先に店に入っていったサチさん達の隣の個室に通してくれた。
「よぉし!ここなら会話も筒抜けだよ雷斗君」
小声で意気込む坂上。俺も二人の会話に集中するため、無言で頷く。少しの間をおいて話し声が聞こえてきた。
「それで、お話とは何でしょうか?」
サチさんの声だ。
「ほんと、さっちゃんは俺に冷たいね~」
この場にそぐわない陽気な声。謎多き人物、真下 任だ。
「わたくしは忙しいのです。このあとは、お嬢様の為に買い物があるのですから。あくまで貴方との話はついでだと考えてください」
「そっか。んじゃ手短にしないと怒られちゃうね」
なおも真面目に話す気がない真下さん。表情は見えないがサチさんの呆れた顔が頭に浮かぶ。
「唯ちゃんの事、覚えてる?」
「っ!?」
「やっぱりさっちゃんは覚えてくれてるよね。良かった」
「それは…」
相変わらず二人の表情は見えない。しかし、二人の空気が変わったのを確かに感じた。
「ねぇ雷斗君。唯って誰なんだろう?」
「さあ…。ただあの二人に関係してるのは確かなんだろうな」
二人に共通してる人物。そして間違いなく何かの鍵を握っているはずだ。
「任さん。もうそろそろ別の道を選んではいかがでしょうか?」
サチさんのどこか物悲しい声色が聞こえてきた。
「お?さっちゃんが名前呼んでくれるのは久しぶりだね~」
「真面目に話してるんです!」
あくまでも真面目に取り合う気のない真下さんに、サチさんもイラついている様子だ。
「……俺が話したかった話はもう済んだよ。唯の事、さっちゃんが覚えてくれてたのが分かっただけで充分だ」
次に聞こえてきた真下さんの声は、静かで、それでいてどこか強い決意が感じられる声だった。
「それに、そろそろさっちゃんを解放してあげないと、そこにいる二人に嫌われちゃうしね~」
「えっ?」
不意に個室のドアが開かれる。固まっている俺と坂上。唖然と立ち尽くすサチさん。どうやら真下さんには、俺達が尾行していたのが最初から分かっていたらしい。
「お嬢様…?それに東川さんも」
「エヘヘ…」
気まずさを誤魔化すために、わざとらしく笑う坂上。
「それじゃ俺はこの辺で」
そう言って席を立とうとする真下さん。
「ちょっと待ったぁ!おじさん!サチに変なことしてないでしょうね?サチをいじめたらあたしが許さないんだからね!」
真下さんに対し、堂々と宣戦布告をする坂上。先程までのどこか遠慮がちな姿はどこへいったのかと突っ込みたい所だが、まあいつもの坂上が復活しているなら良しとしよう。
「お嬢様…」
坂上の発言に、サチさんもどこか嬉しそうな顔だ。
「っははは!大丈夫だよ。俺の話は済んだし、いじめるつもりもないから安心してくれ!」
坂上の発言が可笑しかったのか、笑いながら話す真下さん。
「まあ、結果的には君たちに嫌われちゃうかも知れないな」
そう言い残し、真下さんは出ていってしまった。この時俺は、真下さんの瞳の奥に、深い悲しみが隠れているように思えた。
「申し訳ございません。お嬢様」
サチさん達の方を振り返ると、サチさんが坂上に頭を下げていた。
「良いって良いって! サチが無事ならあたしはそれで良いんだよ!」
頭を下げるサチさんに対して、笑顔でそれを許す坂上。
「でも、次からは嘘つかないでね。サチの言うことなら悪いことじゃないってあたしは信じてるからさ」
「…っ!はい!」
そう言って抱き合うふたり。今の二人を見ると、今日無理矢理坂上に付き合わされたのもまた良かったと思えるのだった。
「さて、それじゃあたし達も帰ろうか!今日は付き合ってくれてありがとう雷斗君!」
「まあ気にするな」
ほんとはもっとゆっくり過ごしたかったがな。
「ありがとうございました。東川さんにもご心配をお掛けしてしまったようで、申し訳ございません」
サチさんも丁寧に頭を下げてくる。
「いえいえ。サチさんが無事で僕も良かったです」
「東川さん…」
少しうつ向いて頬を赤らめるサチさん。普段のクールな表情からは、想像もできないほど乙女の表情だった。
「とう!」
「ぐふ?」
謎の掛け声と共に、背中に衝撃が走った。
「雷斗君?サチに手を出したらボコボコだよ?」
振り向くと坂上が笑顔で仁王立ちしている。その笑顔からは明らかな殺意が感じられた。
「すいません…」
「分かれば良し!」
こうして俺の夏休み初日は終わっていった。
如何でしたか?
書いてて気づいたんですが、まだこのお話では夏休み入ったばかりだったんですね(-_-;)
季節をあまり意識してなかったので、ちょっと焦りましたね(笑)
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