今までとは違う日常とか
翌日、世菜にはてきとうなことを言っておいて、俺は出かけることにした。
待ち合わせ場所の駅前に来てみると、まもるさんのことはすぐにわかった。なんというか、目立つ人だな。
俺が手を上げて近づいていくと、まもるさんも気づいたようだった。そこでいきなり誰かが俺の前に出てきた。
「おー! これは美人さんだねえ」
世菜だ。ああ、面倒くさいことにまけなかったんだな。まもるさんは微笑を浮かべて世菜と俺の顔を交互に見た。
「この子が妹さん?」
「はーい、妹の世菜でーす」
「私は赤坂まもる、よろしくね」
二人はお互いに笑顔で挨拶をかわした。でもこれじゃ話はできないな。
「おい世菜、こづかいやるからちょっと遊んでこい」
世菜には多少お金を渡して追い払うことにした。
「ありがと。じゃあ、楽しんでね」
いかにも何かたくらんでそうな表情で世菜はどっかに走っていった。
「それで、話っていうのはなんですか?」
「たいしたことじゃないけど、まあ確認のためにね」
それから俺達は手近な喫茶店に入った。
「まず、誰か私達がいなかったことに気がついている人はいた?」
「いや、いませんね。まるで何ごともなく生活してたみたいな反応です」
「やっぱりね。私のほうもそうだったし、次元の管理人ってけっこうすごいことができるわけだ」
「おかげで助かりましたけどね。でも、ちょっと問題があるんですけど」
「問題?」
「それが、俺の馬鹿力はどうもそのままで、元に戻ってないんですよ」
「へえ。でもそれは別に問題ないでしょ」
まもるさんはコーヒーを一口飲んでから、一息入れた。
「それで、話は変わるけど受験はどうなの?」
「まあ、勉強時間はたくさんとれたから大丈夫そうですよ」
「そう、頑張ってね。どうしてもっていうなら、手を貸してもいいから」
そう言ってまもるさんは伝票を取って立ち上がった。
「じゃあ、世菜ちゃんによろしく」
それからしばらくぼんやりとしてから、俺も喫茶店を出ることにした。
家に帰ってみると、やっぱり世菜が楽しそうな顔をして寄ってきた。
「きれいな人だったねー。いつの間に知り合ったの?」
「まあ偶然だ」
「そんな暇あったの? それにけっこういい感じだったじゃん」
「いや、別にそういうことは全然ないと思うけどな」
「ふーん。まあ浪人生さんにこれ以上問題を増やしてもしょうがないし、お父さんとお母さんには黙っておいてあげる」
「はいはい、ありがとな」
俺はそれだけ言って自分の部屋に戻った。
そういえば、オーラさんからもらったものをまだ確認してなかったな。袋を取り出して机の上に置き、中身を取り出してみた。
剣が二本交差した形のペンダントか? 裏を見てみると、俺の名前が刻まれていた。これは、お守りってことかな。
あの人のことだから何か意味があるんだろうから、いつも身に着けるようにしておいたほうがいいか。
それから大体半年後くらい。俺はしっかり合格して、大学に通っていた。
まもるさんに無理矢理ボードゲームの同好会に引きずり込まれたりしたけど、けっこう充実している日々ではある。
そんな日々だったんだけど、ある日の夜。
「聞こえるか?」
あのじいさんの声が聞こえてきた。
「なんだよ。まさか、また何かあったんじゃないだろうな」
「それは問題ない。ただ、また何かあった時は力を貸してもらいたいというだけだ」
「できれば事前に確認してもらいたいんだけど。俺にも都合があるからな」
「そうしよう。それにどうやら、君があの世界の住人から渡されたもののせいで、前のような呼び出しかたはできなくなってしまったようだ」
俺は首から下げているペンダントを手にとって見てみた。間違いなくこれだろうけど、こんなもんまで作るなんて、本当にオーラさんって何者なんだよ。
「まあ、俺だってああいうやばいことになったのを放置する気はないよ。予定が合えば、手を貸すのは考えてもいいけどな」
「そうしてくれると助かる。君ほどの異次元への適応力がある人間はいないからな」
それでじいさんからの話は終わった。
これで、いきなり呼び出されることはなくなったのがわかったし、休み中なら少しは協力してやってもいいだろ。
あの世界で無駄に鍛えられたおかげで、こんどは準備期間的なものは短くて済むんだろうしな。
ま、これで大学生活に集中できるってもんだ。なんか明るい未来が開けてるような気がしてきたぞ。
あれだけ努力したんだし。精一杯頑張っていこうか。




