なぜか退屈な日々
この世界の厄介ごとは無事片付けることができたんだけど、それから一ヶ月経っても俺はまだ帰ってなかった。
あの山を片付けてからは魔獣が現れることもなく、平和な日々だ。まあこれが普通の状態らしいし、勉強も落ち着いてできるから助かるけど。
そんなわけで、俺は今日もエニスの店を手伝ったりしていた。
「ヨーイチさん。そろそろ交代の時間ですよ」
「ああ、じゃあちょっとギルドに顔出してくるよ」
「いってらっしゃい」
そうして俺は店を出てギルドに向かった。
ギルドに着いてみると、アルラインがケイン相手にメイスを振り回していたりした。
せっかくだから見ていると、ケインは振り下ろされたメイスをかわしてながら、アルラインの足を払ってその場に転ばせた。
俺はそこに近づいていってアルラインの顔を見下ろした。
「まだまだだなあ、アル」
「うるさいな。俺はこういうのは苦手なんだよ」
「まあ俺よりはましな鍛えられかただよ」
俺は手を貸してアルラインを立ち上がらせてから、ケインのほうに向き直った。
「まもるさんは来てるのか?」
「セローアと一緒に出かけました。また散策のようですよ」
「そっか」
俺は二人をそのままにしてギルドに入った。中ではオーラさんが地図を広げて、何かをギルド員達と相談していた。
オーラさんは俺のほうをチラッと見てからその話を続けた。俺は適当な場所に座ってぼんやりとしていた。
しばらくして、話を切り上げたオーラさんが俺の向かい側に来た。
「まだ帰れる目処はつかないんですか?」
「ええ、なんでも色々調整に手間取ってるとかで、もう少しかかるみたいですよ」
「そうですか。体でもうごかしますか?」
「いや、それは遠慮しておきます」
「それは残念ですね。まあゆっくりしていってください」
「見回りくらいならやってもいいですけど」
「なら、お願いします。外のアルラインでも連れていってください」
「わかりました」
俺が立ち上がって外に出ようとドアに近づいたら、それは外から開けられた。で、アルラインが入ってきたので、俺はそれをつかまえてそのまま外に出た。
「なにすんだよ」
「一緒に見回りだ。つき合えよ」
「ちっ、わかったよ」
そういうわけで、俺とアルラインは出発した。しばらく歩いていると、向こうからまもるさんとセローアが近づいてくるのが見えた。
「あんた達どうしたのよ」
セローアはいつも通りだ。
「お前と違って仕事だよ」
アルラインもこの調子だし、あんまり仲良くないなこいつら。
俺とまもるさんはちょっと目を合わせると二人の間に入った。
「さあさあ、見回りに行くぞ」
「そろそろ帰ろうか」
さりげない感じで二人を引き離して別れた。
そんな感じで見回りが終わったあとはエニスの店に戻って、店の手伝いをしたり勉強したりしてその日をすごした。
それから夕食の時間。今日はポクーラも来て六人での食事だった。
「聞こえるか」
その途中でいきなりじいさんの声が聞こえてきた。
「聞こえてるよ」
「やっとお前たちを元の世界に戻す準備ができた。そちらの時間で明日の今の時間になるから、準備をしておいてくれ」
「あ、ああ」
俺はその知らせを聞いても実感がわかなくて、ちょっとぼんやりしていた。
「どうしたの? ヨーイチさん」
エニスに聞かれて我に返った。
「いや、明日の今の時間に俺たち全員帰れるらしい」
俺の一言にその場の全員が黙り込んだ。まあ、突然のことだし、なんて言っていいかわからないよな。
そんな中でエリンさんが笑顔を浮かべて一番最初に口を開いた。
「おめでとう。そういうことなら、すぐに準備を始めないとね」
「そうだ。送別会の準備をしないといけないな」
タスさんも笑顔でそう言った。エニスは、まだどうしたらいいのかわからない感じだった。
「急な話ですね。もう少しこの世界にいたかったんですけど」
ポクーラはちょっと残念そうな表情だ。
「同感」
まもるさんもそれに同意した。
俺は、まあうれしいけど、もうちょっと事前に知らせておいて欲しいよな。
そして翌日。俺は一通り別れの挨拶まわりをしていた。装備は持って帰るわけにもいかないので、誰かにあげることにしよう。
「誰か、俺の装備いらないか?」
ギルドにいって聞いてみると、ケインが立ち上がって俺に近づいてきた。
「剣は私がもらいます。他は、ギルドで使わせてもらいますよ」
「ああ、役立ててやってくれよ」
俺は装備一式を外してケインに渡した。ケインはそれをテーブルに置いてから、俺に向かって手を差し出してきた。俺はその手を軽く握り返した。
「色々ありがとうな」
「ヨウイチさんもお元気で」
ちなみに隣ではまもるさんがセローアにナイフを渡していた。
なんか、感慨深いな。望んで来たわけじゃないけど、一年もいれば色々思い出もできるから。
今晩でこの世界ともお別れなんだな。




