いちいち休めない日々だ
それからは連日同じようなことが起こった。
例の岩みたいなのが発見できることもあったし、そうでないこともあったが、発見できても最初の時のようにすぐに消えてしまった。
変わったことと言えば、出現の間隔が短くなっていることだった。最近は一日三回くらいはあの地響きがある。
で、夕方の地響きをセローアと一緒に確認に行ってみると、今までとは違うものが見つかった。
今までは岩一つだったのが、今回は三つ積みあがっている。
「けっこう壮観ね」
確かにそうだ。
「ここでちょっと待ってろ」
俺はセローアを残して岩に近づいていった。どうやら俺以外だと、あれが消えた場合に近くにいるとダメージがあるらしいからな。
間近で見てみると、これは三つが積み重なってるだけに見えるけど、思いっきり押してみても全然ずれる気配がない。
これはもう一つのものになってるっぽいな。ひょっとしてこんなのがたくさん現われて、合体なんかしたりしてね。
とりあえず俺はいったんセローアのいる場所まで戻った。
「どうだったのよ?」
「よくわからないけど、あれはもう一つになってるな」
「一つに?」
「そう、あれで一つだ。でもおかしいな、いつもならそろそろ消えそうだけど」
「たしかにそうね。ちょっと一発叩いてきなさいよ」
「ああ」
俺はもう一度岩の前に歩いていって、手をかかげた。
「次元の鉄槌よ! その姿を現し我が手におさまれ!」
俺は現われた鉄槌を肩にかついで岩を見上げた。一つになったといっても、つながってるだけだろうし、だるま落としみたいにできたりしてな。
俺は息を吐いて鉄槌をかまえて、一気に横殴りに振った。
手ごたえは十分だったが、だるま落としというわけにはいかなかったが、そのまま傾いて倒れ始めた。
轟音と共に岩は横倒しになったが、岩は鉄槌が直撃した部分が少し砕けただけだった。
本当に硬いな。もしこれが本当に何かの一部でしかなくて、本体がものすごいでかさだったらどうなるんだか。
正直言ってぞっとするね。だから、ここで壊しておいた方がいいかもしれない。
「フォーム! スピア!」
俺は槍の先を倒れた岩の継目に刺し込んだ。
「よっと」
そのまま槍で岩を引き剥がすように力を加えた。
「おりゃああああああ!」
手強い! でも少しずつ動き出してる感じはするぞ。
「おおおおおお!」
岩と岩の継目が大きくなり始め、俺がそこで一気に力を入れると、まるで撃ち出された様に飛んでいったと思ったら、その先の空間が歪み、そこに飲み込まれた。
残った岩の塊には何の変化もないし、つながっていた部分も何の痕跡もなかった。あれだけ強くつながってたはずなのに、これはおかしいな。
飛んでいった一個の岩が消えたっていうことは、一つだと駄目でも二つ以上つながってれば安定してこの世界に存在できるっていうことだな。
念のために残りのやつも引っぺがしておくか。
その夜、俺はギルドに行ってそのことを説明していた。
「なるほど、事態が本格的に動き出したようですね」
俺の説明にオーラさんはなぜか笑みを浮かべていた。いや、より深刻なことになってるような気がするんだけど。
「おや、ヨウイチさん。浮かない顔ですね」
話を振られた。
「それはまあ、あんなのがたくさん出てきて、それが一つにまとまって動いたりしたら大変なことになると思いますけど」
「それは確かにそうですが、現状ではどうにも手のうちようがありませんから。本体があるなら、むしろ早いところ出てきてもらいたいものですね」
まあ、それはそれで一理あるかもしれない。
「しかし、それがいつになるかはわかりませんよ」
ザグがそう言ったが、実はいつかはわかってるんだな。
「それはもう少しで出てくるはずだけどな」
俺がそう言うとそこにいるみんなの視線が俺に集まった。
「あとどれくらいですかね」
オーラさんは色々スルーして本題だけを聞いてきた。
「いや、もうすぐ俺がここに来てから一年だから、予定ではそろそろ出てきてもいいはずなんですよ」
まもるさんは黙ってうなずいている。オーラさん以外はみんなよくわからないといった表情だ。
「そういうことなら、その日を楽しみにしておきましょうか。それまでは、必要以上に気にしないことにしましょう」
その一言で解散という流れになった。
それからエニスの家に帰る道すがら、まもるさんは空を見上げながら体を伸ばしていた。
「あー、これからどうなると思う?」
「わかりませんけど、手に負えないようなレベルのことが起こるような気がしますね」
「手に負えない?」
なんとなくまもるさんが顔をしかめた感じがした。
「それをなんとかするためにここに来たんでしょ」
「まあ、そうですね」
来たっていうか、無理矢理放り込まれたんだけどな。




