脅威の正体?
さて、この気持ち悪いのはどんな攻撃をしてくるんだろうな。
と思ってたら下のトカゲが足を動かして、こっちに向かってきた。あれ動くのか。
肉の塊は腕みたいなのを振りかぶって、走る勢いそのままに、それを横殴りに振った。腕は伸びて、俺達を薙ぎ払おうと襲いかかって来た。
俺はそれを盾で受け止めた。すごい力だな。
それでもこれくらいなら持ちこたえることは難しくない。さらに俺は力をこめてその腕を弾いた。
そして、突進をかわすために横に跳んだ。
すぐに振り向くと、肉の塊はザグも突進をかわして俺の横に来ていた。
「こいつはけっこう手強そうだね」
「まだ何もわからないのか?」
「あの上の奴が本体だっていうのはわかったよ」
「じゃあ、上のあれをぶっ飛ばせばいいんだな」
「そういうこと。でも、もう少し待ってもらいたいね」
「わかったよ」
俺は盾を前面に押し出して構えた。
肉の塊は今度は腕を伸ばして上から振り下ろしてきた。
俺は盾を上に向けてそれを受け止めたが、思わず片膝をつくほどの衝撃だった。
斧をそれに振り上げたが、腕はすぐに引かれて空振りになった。
さっきの攻撃もそうだったけど、なかなか素早いな。
「その調子だ。あいつのことが少しずつわかってきたよ」
「できるだけ早く頼むぞ」
俺はそれだけ言って、斧と盾を構えた。
そこに今度はトカゲの舌が伸びてきたが、それは斧を振って弾き飛ばした。
「どうした! そんなもんか!」
なんとなく挑発してみたが、当然そんなものは相手には通じない。それでもそんなこととは関係なくトカゲは足を動かして突進してきた。
俺はそれに対して盾を前に突き出して突っ込んだ。
「おらあああああ!」
俺は地面を蹴って肉の塊に体当たりをした。
見た目の大きさ以上の衝撃が盾を通して伝わってきたが、俺はなんとかそれを押し込んだ。
肉の塊はよろめいて、俺はその背後に着地することになった。そのまま振り向きざまに斧を投げつけた。
だが、それは腕に払われて地面に転がった。俺は剣を抜いて構えなおした。
そこに腕が横から襲ってきた。なぜか俺にはそれがスローモーションのようによく見えた。
「はあっ!」
俺はその腕を引きつけて剣を振り下ろした。
手ごたえありだ。伸ばされた腕は切り落とされ、俺の背後に転がった。
俺の顔にわずかに熱い体液がかかって、もう一つの腕が俺に向かって横に振られた。
「くそっ!」
俺は盾でそれを受け止めたが、万全でない体勢だったので吹き飛ばされた。
そこにもう一度腕が振り下ろされてきたが、俺は横に転がってそれをさけた。
それから俺は膝をついてすぐに立ち上がった。
肉の塊はその体を震わせると、俺が切った腕が一気に再生された。ちょっとそれはないんじゃないのか?
「おいザグ! まだか?」
「もう少しだよ!」
「早く頼むぞ!」
俺は盾を前に押し出して構えた。
こいつは再生能力があるみたいだし、一気に潰さないと倒せないんだろう。まあ、今はもう少し時間稼ぎだ。
今度は肉の塊が前傾姿勢になり、トカゲが足を動かして俺に向かって突っ込んできた。
今までの攻撃を考えると、受け止められないほどじゃない。俺は地面を蹴った。
「はああああああ!」
俺の盾と肉の塊が激突した。これなら押し返せる!
「おとなしくしろおおおおお!」
俺はもう一度地面を蹴って化物を押し返した。
さらに俺はそこから体制を崩した化物の前足を切りつけた。
思ったよりも軽い感触で剣はトカゲの足を切り裂いた。俺はもう一度地面を蹴って後ろ足も浅く斬りつけて、化物の後ろにまわった。
化物はバランスを崩して動きが止まった。どうやらトカゲのほうは再生できないらしいな。
「大体わかったよ! もう止めを刺してもいい!」
そこにザグの声が響いた。
そういうことなら、こっからは攻撃だ! 俺は剣を投げ捨てた。
「フォーム! 次元の鉄槌!」
俺は鉄槌をかつぐようにして構えて前に走った。
伸びてくる腕を鉄槌で振り払って、俺は地面を蹴って跳びあがった。
「潰れろおおおおおお!」
俺は真っ向から鉄槌を振り下ろした。
腕がそれを防ごうとしたが、鉄槌はそれを打ち破って肉の塊を直撃した。
そのまま鉄槌は肉の塊を押し潰し、地面に突き刺さった。肉片と体液が飛び散った。
俺が鉄槌をどかすと、あとに残ったのは潰れた肉の塊とトカゲの残骸だった。わずかに痙攣してるが、これ以上動く気配はない。
「思ったより簡単に片付いたね」
ザグが俺の横に立ってつぶやくように言った。
俺は鉄槌を消してから立ち上がった。
「見た目ほど簡単とは言えなかったけどな」
「いや、君は前よりずっと強くなったし、この程度の相手なら簡単に片付けられるだろうし、それは今証明したね」
「それより、わかったことを教えてくれよ」
「まあ、それは帰ってから話すよ。大したことがわかったわけじゃないけどね」