忍び寄る脅威ってやつですか-要一サイド-
まもるさんの話は、新しい脅威が迫っているのを明らかにした。
「どうやら、従来の魔獣とは違うものが現われているのは間違いありませんね」
まあこれがオーラさんの結論。
まもるさんもその言葉にうなずいていた。
「明らかに生物としておかしいのが出てきてますね」
そんなやばいのと遭遇したのかよ。
「ひょっとしたら、僕みたいに違う世界から迷い込んできたのかもしれませんよ」
そういえば、あのじいさんは次元の歪みから魔獣が生じるって言ってたよな。
「それはないわよ。あんなの、どんな世界でだって生きていけるようなものじゃなさそうだったし」
セローアの言葉にポクーラはうなずいて俺のほうを見た。
「ヨウイチさんは何か心当たりはないんですか?」
鋭い奴だな。
「ある筋からの情報によると、次元の歪みから魔獣が生まれてるらしいんだ」
「そういうことはもっと先に言いなさいよ」
セローアに睨まれた。そういえば言ってなかったか。
「なるほど。それならこれからはさらにおかしな魔獣が出現する、ということですね」
オーラさんはそう言って一同を見回した。
「とりあえず警戒態勢は今の状態を維持しましょう。ただし、これからは出現する魔獣は未知のものになりそうですから、出来る限り慎重に行動すべきでしょうね」
この集まりはそれでとりあえずお開きになった。
俺の見回りの当番はしばらく後なので、エニスの店に戻ることにした。
「おかえりなさい、ヨーイチさん」
ちょうどエニスが店番をしていた。
「セローアちゃんもいらっしゃい」
なぜか俺の後ろにセローアが。ついて来てたのかよ。
「なんで一緒に来たんだよ」
俺が小声で聞くと、セローアは指を顔の前で振った。
「もっと詳しい話を聞かせてもらうわよ」
「そうは言っても、あれで全部だよ」
「本当に?」
「本当だよ。俺が教えて欲しいくらいなんだから」
「わかったわよ」
俺の言葉にセローアは渋々納得したらしかった。
「二人ともどうしたの?」
エニスがそう聞いてきたが、俺とセローアは同時に首を横に振って、口を開いた。
「いや、なんでもないよ」
俺達の答えにエニスは妙なものを見る表情を浮かべたが、それはすぐに消えて、笑顔になった。
「見回りまではまだ時間があるんですよね、それまで休んでいってください」
「ああ、そうさせてもらうよ」
俺とセローアは店の奥に入っていった。
そして、向かい合って座るような流れになった。セローアは真面目な表情になって口を開いた。
「ヨウイチ、あんたがこの世界に来た理由って、今起きてることをなんとかするためなんでしょ?」
「まあ、そうだよ」
「なら、伝説の通りね」
セローアは満足そうな表情を浮かべて立ち上がった。
「あんたは救世主なんだから、しっかりしておいてよね」
そう言ってセローアは出て行った。
救世主か。正直、俺には過ぎた役割だよ。まもるさんなら適任かもしれないけどさ。
そんな思考を追い出すために、俺は参考書を呼び出して勉強を始めた。
そうしているうちに見回りの時間がきたので、俺はギルドに向かった。
「ちょっと遅刻だよ」
今日はザグと一緒だ。俺達の担当はこの間の芋虫が出た方面。
「僕も早くおかしな魔獣に遭遇してみたいものだね。最初のは時間が経った残骸だったし、次のは肉片だ」
「俺としてはあんまり会いたくないんだけどな」
「でも、しっかりした対策のためには、まだまだ情報が足りないからね」
それもそうだけど、もう少しでラスボスが出てくるはずだから、やっぱりそれまではあんまり出てこないほうが嬉しいんだよな。
「おっと、何かきたみたいだよ」
いきなりザグが立ち止まって、森のほうを向いた。
俺もそっちを見てみたけど、特に何も見えない。
「何が」
「伏せろ!」
いきなりザグが大声をあげたので、俺はとっさにその場にかがむと、頭上を何かが猛スピードで通り過ぎていった。
振り向いて確認すると、以前集落で戦ったトカゲに似ているが、サイズは二倍くらいあるやつがいた。
「気をつけたほうがよさそうだよ。こいつは普通じゃない」
どこがだろう。と思う間もなく、トカゲの目がぐるっと反転して、その背中がガバッと真っ二つに裂けた。
「次元の鉄槌よ! その姿を現し我が手におさまれ!」
嫌な感じがしたので、俺はとっさに鉄槌を前に突き出した。鉄槌に強い衝撃があって、俺は思わず後ろに下がった。
「なんだよこいつ」
体勢を立て直して鉄槌を構えた俺の目に入ってきてのは、トカゲの背中の裂け目から姿を現した、人間の上半身のような形をした肉の塊だった。
ザグのほうを見ると、槍を構えてじっとその化物を凝視していた。
「何かわからないのか?」
「やっぱりおかしいね。すぐにはわかりそうにないよ」
じゃあ、しばらくねばらないとな。
「フォーム! アーマーアンドシールド!」




