遭遇
私とセローアは見通しのいい場所に陣取り、魔獣が出現するのを待った。
「どんなのかはそれじゃわからないんでしょ?」
「まあね。でも位置はかなり正確にわかるから、もう少しで現われるはずだけど」
そう言ってるうちに、それらしきものが見えてきた。
一言で言えば大きなイノシシ。全長は三メートルくらいだろうか。
「あれが何か知ってる?」
「いや、ちょっと大きすぎるわね。それに十頭もまとまってるなんておかしいわよ」
「じゃあ、町に近づく前に、ここで片付けたほうがいいか」
セローアがうなずいたのが見えた。
そういうことなら、まずは足を止めないと。
「アタッチメント! グレネードランチャー!」
狙うのは集団の少し前。
グレネードが着弾して爆発すると、先頭の三頭くらいが吹き飛んだ。
それ以外はその場に急停止して、周囲を見回した。吹き飛んだ3頭もすぐに立ち直って同じような行動をしている。
直撃じゃないとはいえ、ダメージが少ないように見える。
私はとりあえずグレネードランチャーをバックパックに戻した。
「アタッチメント! マシンガン!」
まずはマシンガンを左腕に装着。それからバックパックから右手で火炎放射器を取り出した。
「アタッチメント! モッドモード!」
火炎放射器が縦に開き、そこに左のマシンガンを突っ込んだ。
「これで完成! ファイアーマシンガン!」
そうしているうちにイノシシ達はこちらに気づいていた。
「来るわよ、どうするの」
「当然、こうするわけ」
私は炎をまとった弾丸をイノシシ達に浴びせかけた。
効果は? どう見てもよく効いている。一番近い一頭は蜂の巣になって転がった。
当然それでは終わらせずに、マシンガンを撃つのはやめない。
さらにあと三頭ほど蜂の巣にできたが、距離が近づいてきた。
「アタッチメント! チェンソーブレード!」
このまま全速前進!
「セローア! 逃した奴はお願い!」
体当たりをしてきた一頭にチェンソーブレードを叩きつけた。
それはイノシシの体を切り裂いて、血と肉を飛び散らせた。これで残りは五頭。
だが、そこに後ろのイノシシから体当たりを受けた。これはなかなかの衝撃だけど、深刻なダメージを受けるほどではない。
体勢を立て直して次の一頭はチェンソーブレードで両断した。
でもあとの三頭には対応できない。
次々に体当たりをされたが、この程度でどうにかなるようなやわな装甲じゃない。でも心配なのは。
「セローア、大丈夫!」
「心配ないわよ!」
振り向いてみると、セローアは両手から衝撃波を出してイノシシの突撃を逸らしていた。
私はすぐに逸れた一頭に向けてマシンガンを撃ちこんだ。これであと四頭。
もう一度の突撃に備えようとしたが、イノシシは突然足を止めた。
そして、私の目にはセンサーの強烈な反応が入ってきた。
「気をつけて!」
それだけ叫ぶと、イノシシ達の中心の地面が割れ、牙が並ぶ巨大な口が現われた。
それは跳びあがりながらイノシシの体を食いちぎり、姿を現していった。
こいつは、動物だとは思えない。十メートルはある楕円形の体はそのほとんどが口だ。こんな体で生きていけるとは思えない。
「なにこいつ! 知らないわよ!」
セローアの反応からすると、この間要一君が遭遇したような新種かあるいは別の何か、ということか。
でも、どうやら考えている余裕はなさそうだ。
大口の化物はイノシシを飲み込むと、すぐにこちらに注意を向けてきた。
とにかくマシンガンを撃ってみた。効果はあるようだけど、これでは決定的なダメージは与えらそうにない。
私はチェンソーブレードをバックパックに戻した。
「アタッチメント! グレネードランチャー!」
これを体内に撃ちこめばそれなりのダメージになるだろう。
「セローア、下がっていて」
とにかく、こいつを引きつけて、グレネードを連発で撃ちこむ。
私はグレネードを六連射モードに切り替えた。これは再装填に時間がかかるのが難点だけど、今が使いどころだ。
大口はものすごい勢いで私に跳びかかってきた。
私はそれをジャンプブースターで後方に跳んでかわした。でもこの角度じゃ口の中にグレネードは放り込めない。
落ちながらマシンガンを連射してこちらに注意を引きつける。
私が地面に着地すると同時に、その体からは想像できない勢いで大口を開けて襲いかかってきた。
今度は動かず、グレネードランチャーを落ち着いてその口の中に向けた。
「喰らえ!」
そのままグレネードを六発、その口の中に撃ちこんだ。
一瞬の間をおいて、今にも私のパワードスーツに食いつこうとしていた大口が爆発し、その体が四散した。
後に残ったのは、ぐちゃぐちゃになった肉片と、食い残しのイノシシの残骸。
改めて見ると、まさにぎりぎりの勝負だった。




