警戒中-まもるサイド-
それから、見回りは二人一組が二つずつ見回りにあたって、町の守りは私のパワードスーツのセンサー頼り、という日々が一ヶ月ほど続いた。
隣の町のギルドからもザグとイザリルが助っ人して参加したりしていたし、心配された人手不足ということはなかった。
私は常に町に残っている必要があったので、本当はこの方法は乗り気じゃなかったんだけど、まあ仕方ないか。
とりあえず今の時間は私が町の真ん中のパワードスーツの中でセンサーを監視していた。
魔獣らしき反応は特になし。平和なのはいいけど、ずっと肩透かしが続いている感じと言える。
「マモル、そろそろ交代の時間よ」
セローアが来た。私はハッチを開けてヘルメットを取りながらパワードスーツから降りた。
「じゃあ、あとはよろしくね」
「任せておいて」
セローアは自信満々という感じでパワードスーツに乗り込んで、センサーの前に陣取った。
私は後はセローアに任せることにして、そろそろ昼食の時間なのでエニスの店に行くことにした。
「いらっしゃいって、ああ、まもるさんでしたか」
中に入ると要一君が店番をしていた。
「そう、特に問題はなくて退屈だったけどね」
私はそう言って奥に入っていった。
奥ではエリンさんが作業をしているところだった。
「おやマモルさん。何も異常はなかったのかい?」
「はい。何もなかったですね」
「それなら安心だね。昼は食べてくのかい?」
「ええ、ギルドのほうの食事はいまいちなので」
私がそう言うと、エリンさんは笑顔を浮かべた。
「まあ、あっちは多人数相手だし、それは仕方がないね。みんなが気に入るような味付けだから、中途半端にもなるよ」
それはわかる。私は自炊派だったし。いや、こっちに来てからは食べさせてもらってるけど。
「じゃあ、今から準備するからね」
エリンさんはそう言って昼食の準備にとりかかった。
昼食が終わってから、私は自分の部屋に戻って要一君から貰ったノートを開いた。
そこにはパワードスーツに関することがびっしり書いてある。
仕様は頭に入っているといっても、実際に動かしてみて気づいたこともたくさんある。それをこうしてまとめてみると、けっこう面白いものが出来ていた。
事態が緊迫してきている感じだし、効果的な運用法が見つかるのは大事だ。私はしばらくノートを眺めてから立ち上がった。
それからパワードスーツの場所に向かうことにした。
到着してみると、セローアがパワードスーツの中でうとうとしていた。
いや、寝てちゃまずいと思うんだけど。
「セローア、セローア」
私が肩をゆさぶると、セローアは慌てて目を覚まして転げ落ちそうになった。
「あ、マモル? い、異常はないわよ」
センサーを覗き込んでみると、確かに異常はなかった。
「そろそろ交代だから昼寝でもしてくれば?」
「そうね、じゃ、あとはよろしく」
セローアは若干ふらふらしながら歩いていった。
私はヘルメットを着けるとパワードスーツに乗り込んでハッチを閉じた。
さて、これからしばらくは退屈な時間になるか。
と思ってたけど、そうはいかなかった。センサーには魔獣と思われる反応が、まあ十個は出てる。
不幸中の幸いか、反応は固まっていて、町からも離れた場所だった。
こういう時に簡単に通信できればいいんだけど、まあないものねだりをしてもしょうがない。
これくらいならまだ要警戒という段階だけど、放っておくわけにもいかないか。
私はパワードスーツを動かしてギルドに向かった。降りるのも面倒なので、マイクを通して呼びかけることにする。
「魔獣が近くに出現しました」
そう言うと、ギルドの中からオーラさんが出てきた。
「どのあたりですか?」
「まだ警戒が必要な程度ですけど、どうしましょうか」
「とりあえず具体的な場所を見せてもらえますか」
私はハッチを開いて、センサーが見えるようにした。
オーラさんはこのために作った地図と照らし合わせて場所を確認した。
「なるほど。これは放っておいてもいいかもしれませんが、集団なのが気になりますね。早めに対応すべき、でしょう」
「私が行きましょうか?」
聞いてみるとオーラさんは少し悩む様子を見せた。
「わかりました。セローアと一緒に行ってもらいます。厄介なようでしたら、偵察だけにとどめて戻ってきてくださいね」
この人はまさにリーダーという感じの用心深い人だと思う。
そういうわけで、私はセローアと一緒に魔獣退治に向かうことにした。
「魔獣はどれくらいいるのよ?」
「おそらく十体くらいのはずだけど」
「ふーん、けっこう多いのね。サイズはわかるの?」
「それは近づいてみないとわからないけどね」
さて、なにが出るか。ちょっと楽しみではある。