黒幕と最強な人だ
さすがに俺とケインは段々追い込まれていった。
なにしろ相手は気配を消してどこから現われるかわからないんだから大変だ。
「まったく、どうすりゃいいんだよ」
俺はできるだけケインを守りながら戦っていたが、けっこうつらい。
そう思っていると、いきなりオーラさんの声がその場に響いた。
「そこの三人、もう終わりですよ」
俺がそっちのほうを見ると、オーラさんは一人のじたばたしている少年の首根っこをつかんでぶら下げていた。
そして、その少年の首に腕をまわすと、一気に締め上げて意識を刈り取った。
すると、アルケラさんの動きが止まって、とまどったように首を動かして状況を把握しようとしているように見えた。
「これは、一体?」
そこにオーラさんが少年をぶらさげながら近づいてきた。
「操られていたんですよ、この子にね」
そうしてその場にその少年を投げ出した。
「じゃあ、この子がカルトのメンバーなんですか?」
ケインは剣を収めながらオーラさんに向かって聞いた。
「まあ、そういうことです。人や小型の魔獣を操る能力を持っているようですね」
人を操る? それでアルケラさんがああなったわけか。
「ちょっと待ってください。じゃあなんでアルケラさんだけが操られてたんですか?」
そう、操れるんなら、オーラさんでも、まもるさんでも、それこそ俺でもよかったはずだ。
だが、オーラさんは笑顔で首を横に振った。
「ギルドのメンバーにはケインが術にかからないように対策していたんですよ。ヨウイチさんとマモルさんには、そもそもそういったものは効かないようですが」
はあ。
「アルケラを呼んだのはまあ、言ってみればエサです。実力がある者になら飛びついたでしょうからね」
オーラさんの言葉にアルケラさんはため息をついた。
「相変わらず人使いがひどい人だ」
それは確かにそう思う。オーラさんはそれは適当に流した。
「まあ、こうして首謀者を捕らえることができたんですからいいでしょう」
いいのか?
「ケイン、アルケラにも対策をしておいてください」
オーラさんの指示にケインはうなずいて、ナイフで指先を切ると、アルケラさんの額にその指を押し付けて、口の中で何かを言った。
「できました。もう大丈夫です」
ケインの言葉にオーラさんはうなずいてから、少年に活を入れて無理矢理目を覚まさせた。
「え? え? なんだよ!」
ずいぶん混乱してるな。で、オーラさんの姿を見ると慌てて後ろに下がって俺の足にぶつかった。
「くそっ! 俺をどうするつもりだ!」
少年は俺達四人を見回して叫んだ。まあ気持ちはわかる。
オーラさんは落ち着き払った表情で少年の腕をつかんで動きを封じた。
「まあ落ち着きなさい。今さら暴れたところで無駄ですから、私の言うことを聞いたほうが利口ですよ」
少年はおびえた表情でうなずいた。
「ではあなたの名前から聞かせてもらいましょう」
「お、俺はアルライン・リエイラだ。お前らみたいなギルドの奴らには何があっても従わないぞ!」
「ではアルライン、あなたがギルドにくれば、生活は保障しますし、給料も払いますよ。カルトなんかの手先でいるのと、ギルドのメンバーになって、堂々と生活するのとどちらがいいか、当然わかりますよね」
オーラさんは不気味なくらい穏やかにそう言った。
「だ、騙されないぞ」
アルラインはそう言ったけど、最初の勢いはない。
「念のために言っておきますが、あなたの力は通用しませんよ。それから、あなたの命運は私が握っていることも忘れないように」
これは明白な脅迫だな。でも給料払うとか言ってるし、好意的にとらえるとスカウトなのかもしれない。
アルラインはオーラさんの脅迫というか申し出に悩んでいるようだった。
「まあ、返事は明日聞きましょう。今日は帰りますよ」
アルラインはそれを聞いて口を中途半端に開けたまぬけ面になった。
「ああ、もちろん町であなたの能力を使ったらただではすみませんからね」
そう言って、オーラさんはさっさと歩いていった。
「あの人と同じ町でなくて幸せだ」
アルケラさんは俺にささやいて、その後を追った。
ケインも続いたので、俺とアルラインが最後になった。
「ほら、あの人には逆らわないほうがいいぞ」
俺はアルラインの肩を叩いた。正直、少し同情してる。
「どうなるんだよ」
「間違いなく躊躇なく殺される。とりあえず言われた通りにしたほうがいいな」
アルラインは俺の言ったことは理解できたようで、うなずいて立ち上がった。
「俺は要一だ。よろしくな」
「ふん。なにがよろしくだよ」
「いや、あの人に目をつけられたら逃げられないだろうし、これからよろしくだ」
アルラインは何を言われているのかわからないようだったけど、まあ明日になればわかるさ。




