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「さて!」


 ユスリアルを見送ってからあたしも出かける。行き先はもちろん決まっている。


 シスのところだ。


 仕事中だからとか言ってたらいつまで経ってもこのままだ。


 来週はイビーとカノンが泊まりにくるからその時にギクシャクしてるだなんて嫌だもん。


 せっかくのお泊まりなんだから2人には楽しんでってもらいたい。


 家の鍵を閉めてシスのいる広場へと向かう。


 前みたくお昼を作ってこうかとも考えたけど、それより先にシスの顔を見たい。


 気が付けばいつの間にか走っていた。


 あそこの角を曲がれば広場が見えてくる。そしたらシスの姿が見えてくるはずだ。


「いた! シス!!」


 大声でシスの名前を呼ぶ。


 あたしの声に振り返ったシスはびっくりした顔をしていて今にも逃げ出してしまいそうだったけど、仕事中だからか逃げるのに躊躇している。


 逃げられたらあたしの足じゃ追い付けない。


 シスが迷っている隙に急いでしがみつく。


「アリ……」

「逃げないでよ!」


 逃げられたらあたしの足じゃ追い付けないし、夜も多分あたしが寝る頃まで帰って来ないか、多分どこかで泊まってくるような予感がする。逃がしてたまるもんか!


「あたしこのままギクシャクしてるのは嫌だ! シスとちゃんと顔を見て話したい! シスが駄目だって言うのならワガママも言わない、この間みたいに勝手なことしないで家で大人しくしろって言うのなら家にずっといるからあたしのこと嫌いにならないで!!」


 言いたいことは言った。


 後はシスに振り払わられなきゃいい。何て言われるかドキドキするけど絶対に離さないからね。


 ぐっと力を入れてしがみついていると最初はあたしのこと引きはなそうとしていたが、途中から諦めたのか黙ってあたしの話を聞いていた。


「アリシア」

「いや、離さないんだから!」


 離したらまた逃げるんでしょ?


「あたしにとってシスはシスでしかないんだからあたしがシスを嫌いになることはないんだからね!」


 口から心臓が飛び出そうなぐらいドキドキしてる。


 これで駄目だったらどうしよう。


 ドキドキする心臓の音がうるさい。これじゃシスが何て言うのか聞こえくなったらどうするんだと密かに頭を悩ませているとふわりと頭に乗った。


 びっくりして見上げるとシスの優しそうな、けど今にも泣きそうな顔があった。


「シ……」

「ごめんね。僕のせいで不安にさせちゃったよね。僕のこと気持ち悪くない?」

「何で? あたしシスのこと大好きだよ」

「でも、アリシアとは一滴も血が繋がってないんだよ」

「言ったよね。あたしにとってシスはシスでしかないんだって。だからあたしがシスのこと嫌いになるなんてことはないよ」

「……これから先僕が本当の親戚じゃないから何か言ってくる人が居るかもしれない」

「そんなのあたしたちに関係ない人でしょ。横からパッと出てきただけの人間に何が分かるの?!」

「アリシアは本当にいいの?」

「当たり前でしょ! そろそろ怒るよ!!」


 シスを睨めばシスの目からぽろりと涙がこぼれた。


「ごめん、あの、その……泣くつもりはなくて……あの」

「お二人さんここ往来だから」


 突然割って入ってきた声に驚いてそちらを見れば見知らぬおじさんが立っていた。


 そしておじさんの言葉を頭の中で繰り返す。


「あ……」


 恥ずかしい。抱きついた挙げ句にシスが大好きだって叫んでた。しかも、このおじさん以外にも聞いてた人がいるってことだよね。


 ああ……明日からしばらく外に出られない。


 ちらりとシスを見上げれば同じように真っ赤になった顔。しかもシスは泣いてるし、この後もここに居なければいけないとか。


 本当にごめん。


 家に帰ってから沢山話し合った。


 シスの本当の両親はシスが2歳の時にシスを置いて行ったんだそう。


 おじいちゃんとおばあちゃんに引き取られるまでは孤児院に居たらしいけど、そこでの記憶はあまりなかったらしい。


「無くてもいいやって言ってくれたのがアリシアのおばあちゃんだね」


 おばあちゃんはいつも優しかったが怒る時は怒り実の子である母さんとの分け隔てなく育ててくれたんだそう。おじいちゃんはいつも無愛想だから最初は嫌われてると思っていたけど、時間が経つにつれて不器用な人だと分かったんだそう。


「だから父さんに会った時に無愛想だったとしても気にしなくていいよ。母さんも多分照れてるだけだって言うはずだし」


 そんなことを言われて思わず笑ってしまった。


 沢山話してその日は2人で眠った。


 シスのベッドは2人で寝るには狭いよと断られそうになったけど、ぴったりくっ付けばいい。


 そりゃくっついた分暑くなるけど、今日はくっついて寝たいとおねだりし続けると分かったと一緒に寝てくれた。

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