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 シスがあたしを探してる時にあちこちの人に聞いたらしくて外に出る度に声を掛けられるようになってしまった。


 声を掛けられること自体はいいのだけど、あまりシスに心配を掛けるなとかが多くて首を傾げたくなる。


 心配? 怒ってるんじゃないの?


 そういえば前も心配してるって言ってた。


 あたしが悪い。今度から気をつけてつけよう。そう思ってシスにもう一回謝ろうと様子を窺っているのだけれど何て話しかければいいのかわからないなくて時間だけが過ぎていく。


 イビーには絵画教室で会えた時に迷惑掛けたみたいでごめんねと伝えたけど事故とか事件に巻き込まれてなくてよかったと言われてその可能性もあったんだと余計に申し訳なくなってしまった。


 シスに何かお詫びをしたいけど何をしてあげたら喜ぶんだろ。


 前に家賃とか生活費のことを聞いたら子供がそんなことを気にする必要はないよと断られてしまったし。


「うーん」

「どうしたの?」

「カノン。いや、うーん。シスにお世話になってるからお礼したくて」


 この間のこととかは詳しく話す必要はないよね。カノンはシスが大好きだから怒らせ? 心配? させたなんて言ったらなんて言われるか分からないし。


 ライアの時にそういう話が出ていたのにあのまま何も思いつかなくてと嘘ではないことを言っておく。


「あたしだったらシス先生にあたしをあげる! ……あだっ」

「ダメに決まってるだろ」


 カノンの後ろからノアがそっと近付きカノンの頭を叩いた。


「ノア! いいでしょ!」

「よくないだろ。大体いくつ離れてると思ってるんだよ!」

「12! でも、それだけ年離れてても結婚する人たちいるでしょ」

「でも、まだお前は12なの。結婚出来る年でもないのに」

「いいじゃない! あたしが誰に恋したってあんたには関係ないでしょ!!」

「ノロケ聞かされるのは僕なんだから」


 2人が言い争っているのを苦笑しながら見ていたらふとイビーが目に入った。


 そういえばこの2人イビーと友達になりたいって言っていたと思い出し、しばらくは終わらなさそうな言い争いをしている2人から離れてイビーに近寄って行く。


「イビー」

「アリシアこんにちは」

「こんにちは。今日はあの2人と描いてるんだけどイビーも一緒にどう?」


 ちらりと2人の方を見るとまだ言い争っている。


 その姿に苦笑するしかないが2人にはイビーが見ているよと言いたい。


「あの2人ちょっと性格があれだけどイビーと仲良くなりたいんだって」

「仲良く……」


 ちょっと引いてる? でも、と聞いてみると少し興味をもったのかイビーはあたしの言葉を復唱している。


「途中で別のところに行っちゃってもいいんだし」


 だからどう? と尋ねる。この辺りで2人の言い争いは終わっていたのか静かになっていたので2人の方をこっそりと見ると、あちらもあたしが居なくなっていたことに気付いていたのかこっちを窺っていた。


 だからイビーに気付かれないように後ろ手で2人に上手くやっているよと意味を込めて手を振っておいた。


「……邪魔じゃない?」

「そんなことないよ!」


 しばらく悩んでいたみたいだったイビーがそんなことを言ってきたので全力で否定する。


「邪魔だったら最初から聞かないよ!」

「それならちょっとだけ」

「うん! じゃあ、行こっか!」


 イビーと手を繋いで2人のところに連れて行くと2人共嬉しそうにしてた。


「アリシアありがとね」


 こそっとノアに言われてそちらを見る。


「あたしもみんなで描きたかったから」

「うん。でも、僕たちが何年も出来なかったことをアリシアがぱぱっとやってくれたから」

「何年も?」

「え? うん」


 イビーがいくら引っ込み思案だとしても打ち解けるまでにそんなに時間が掛かるものなの?


 ちょっと疑問が沸いてきてノアに尋ねるもノアもいつからかよく分からないが気付いた時にはこうなっていたと言う。


 イビー本人に聞いてもいいかな?


「ねえ、イビーナいつもあたしたちから逃げるのって何で?」

「えっ?!」


 カノン何で聞いちゃってんの?! そりゃあたしも悩んだけど、そういうのってデリケートな話題じゃないの?!


「えと……」


 ほら、イビーだってびっくりして口ごもっちゃってるじゃないの!!


「カノン……」


 止めるためにカノンに声を掛けようとしたら肩を掴まれて振り返ればノアが首を横に振って止めてきた。


「僕も知りたいし、カノンはあれでも考えて言ってると思うからここは任せておこう」

「でも……」


 本当にいいのかな?


「あ、あの、前にあたしが居ると迷惑って言われて……」

「はっ?! それ誰が言ったの?!」 

「アリシアも参加してんじゃん……」

「こ、この通りの子じゃないよ!!」


 ノアうるさい。こんなに大人しい子にどうしてそんなことを言うんだ。


 言った奴はぶん殴ってやりたい!


「当たり前でしょ! もしかしてミーナ?」

「ええっと……」

「ミーナって誰?」


 こっそりとノアに聞くと学校にいるボス気取りの女の子だそうだ。


 イビーはあたしたちより2つ年下らしいけどミーナって子にターゲットにされているのだろうか?


「ミーナってどの辺りに住んでるの?」

「ここからは遠いよ」


 エペンス通りとは学校を挟んで向こう側になるそうであたしたちだけじゃ行くのは時間的に2、3日掛かるから無理があるんじゃないかとノアに教えてもらった。


 確かにそんなに出掛けていたら夕方顔を見せなかっただけで心配していたシスにもっと心配を掛けてしまう。


 本当のことを言って行きたいと言っても許可をくれる訳でもないし。


「違うの! 入学してすぐに言われたから誰が言ったとかは覚えてないんだけど……でも、ミーナじゃないの!!」


 どうにかしてそいつを殴りに行けないかと考えていたら普段のイビーからは考えられないぐらいの大きな声で言うので通行人も振り返って何事だ? と見てくる。


「違うの?」

「うん、ミーナは金髪でしょ。確か茶髪か黒髪だったの」

「そうなのね」


 うっかり殴りに行く前でよかった。


「あのさ僕たちはイビーナと一緒に居るの迷惑だと思ったことないよ」

「そうだよ! 同じ通りの子だから仲良くしなきゃいけないとかじゃなくてイビーナと仲良くなりたいから」

「……ありがとう」

「あたしだってイビーと仲良くなりたいから声掛けたんだよ!」

「みんなありがと」


 イビーの潤んだ瞳は見なかったことにしてみんなで笑ってこれから沢山遊ぼうねと約束した。

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