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ライアはライアの旦那さんのブラウンさんにお願いして連れて来てもらうことになってる。
ブラウンさんには前もって今日の話をしてあってブラウンさんもライアのお人好しのお陰でエペンス通りの人たちによくしてもらえるからと快く引き受けてくれた。
「アリシアちゃんそっちのスープかき混ぜたら火を止めて」
「はーい」
「シリウスの香草焼き届いたよ!」
マルサの声に女たちはわっ! と声を上げ作業を中断し我先にとマルサのところに駆け寄ってく。
「ちょっと! これはパーティーで出すんだから食べちゃダメだよ!!」
「ちょっとぐらい味見は……」
「ダメだって言いたいけど、これ本当に凄く良い匂いでお腹空いちゃったから一皿だけ食べちゃいましょう」
その言葉にもう一度歓声が上がり凄い勢いで香草焼きがなくなって行く。
あたしも食べられるかしら? と不安になっていると誰かがあたしの分をお皿に載せて渡してくれた。
お礼を言おうと思ったのに渡してくれた人は居なくなっててもう誰か誰か分からなくなっちゃった。
あたしに分かるのは香草焼きがおいしいってことと、あと一時間ぐらいでブラウンさんがライアを連れて来るってことだけ。
これだけおいしいのに一口だけしかは。食べられないなんて。
競争率激しくても絶対パーティーでも食べるわ。
みんな同じようなことを考えているのか、感嘆のため息と何事かを囁き合う声が聞こえてくる。
「この香草焼きはどこに置くの?」
「ふふ、それ言っちゃうと取り合いになるから言わない」
「ケチね」
「あら、大丈夫よ。シリウスにたっぷり作ってもらってるからみんなお腹いっぱいまで食べられるわよ」
「それより、これのレシピ知りたいわ」
「あたしも!」
「それはシリウスに聞いてよ。あたしだって知りたいのに教えてくれないのよ! ってそろそろ支度しないとあっという間にライアが来ちゃうわよ!」
その言葉に慌てて時計を見ればライアが来る予定の時刻まで後30分を切っていた。
「いけない! 盛り付け済んでるのから会場に運んで! アリシアちゃんも!」
「はい!」
「スープ類はもうちょっと後で! あ、待ってアリシアちゃん着替えもさせなくちゃ」
「へ?」
思わず今日着てる服を見るがエプロンをつけていたからそんなに汚れてはないと思うんだけどな? と不思議に思って居ると近くにいた人たちにがっしりと掴まれる。
「あ、あの?」
「大丈夫。すぐに終わるから」
よく分からないまま別室に連れて行かれる。その時にシスに遭って助けてもらおうとしたのにシスはにこりと笑ってあたしを捕まえてる1人に何かを渡した。
「これで頼むよ」
「シ、シス?」
「任せて! とびっきり可愛くするから!」
渡したのはあたしがライアにもらった白地に黒の大柄の花が描かれているあたしの一番のお気に入りの服。
何であの服? 今日着てる服だってライアが作ってくれたものだからこれでいいやと選んだ茶色のチェック柄のワンピース。胸のところは紐が通っていて編み上げリボンに出来て可愛いし、ふわりと広がる裾はギャザーがよっていてこの服だってお気に入りだ。
料理する時にちょっとだけ汚れるかもと思ったけど、エプロンのお陰で服は全然汚れてなかったから着替えまでする必要はないんだけどと言いたいのに大人たちに着せ替え人形のように着替えさせられ、髪も編み込み纏め上げられた。
「やっぱり肌が綺麗ね」
「そりゃまだまだ若いんだものあたしたちと比べたらダメよ」
あははと笑い声が室内に響く。
その笑い声にどう反応していいものかと迷っている間に軽くお化粧までされてしまった。
「はい、おしまい。アリシアちゃんとびっきり可愛くしといたわよ」
「あ、ありがとうございます」
「ライアが来るわ! みんな会場に集まって!」
ニコニコ笑う女性たちにお礼を言っていると、ライアが来たとトレイトが知らせに来てくれた。
「嘘っ! もうそんな時間?!」
みんなで慌てて片付けて会場に走る。
「さっき会館に入ってくの見たから多分そろそろ!」
「走れば間に合うかしら?」
わーわー騒ぎながら会場に入る。
一番目立つ場所にあたしが描いた横断幕。横断幕にはいつの間にか紙で出来たお花が縁を色どっていて驚いた。いつの間に作ったんだろう。
その下にはエペンス通りの人たち。
みんな思い思いにくつろいでは居るがその目線は料理とライアが入って来る扉を行ったり来たりしている。
まだつまみ食いはされてないみたいだけど、ライアが入って来るのが遅ければ何人かつまみ食いしちゃいそうなぐらいそわそわしてる。
あたしたちは会場と調理場を繋ぐ通路を走って来たからライアとは鉢合わせしていない。
「よかった。まだライア来てなかった……」
「よくねえよ。こっちは待ちくたびれてさっきから腹が鳴りっぱなしなんだよ」
お肉屋のジョンの皮肉にみんな笑い出す。
「あたしたちだってそうよ!」
「綺麗にしてもらったね」
「シス!」
笑っていたらいつの間にかシスが横に居てびっくりした。
「いきなり着替えさせられてびっくりしちゃったわ」
「アリシアも今日の主役だからね」
「あたしも?」
にこりと笑うシスに不思議に思って問い直すとうんとシスは頷いた。
「みんながねアリシアの歓迎会もしようって言い出してくれて」
「えっ」
あたしの歓迎会?
シスの家に住むようになってすぐにライアにお祝いしてもらったような?
「どいういうこと?」
「そのままの意味だよ。この通りの人たちもアリシアを歓迎してるって意味」
「そうよ。アリシアちゃんはレイチェルの子でもあるし、ライアのためにってこんなに素敵な会を企画してくれたでしょ」
「本当は横断幕はライアだけじゃなくてアリシアの名前も書こうと思ったんだけどアリシアが張り切っていたからね。これには書いてないけどアリシアのパーティーでもあるから今日は楽しんでってね」
「レア……シス……」
どうお礼を言おうか迷っていると会場の外から話し声が聞こえて来た。
そろそろライアが来たのかな?
会場のみんなも緊張した面持ちで待っている。
ドキドキしながら会場の入り口のドアを見つめる。




