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11話 謎の2人は噂の2人

 ギルドの隅に置いてあるテーブルで、私達は向かい合わせに座る。受付のお兄さんは2人の顔を見るなり「ひぃっ」と言ってギルドの奥深くの方に逃げて行った。


 此奴ら、あの受付のお兄さんに何したんだ。

 もしかして、此奴らが受付のお兄さんが言ってた噂の2人なんじゃ……。


 ピンスのクエストは街に戻る途中で終わらせた。あのお爺ちゃん大丈夫かなー。若い者には負けられんとか言いながら鶴嘴(つるはし)振ってたけど、ギルドに向かう途中で「ハグァ⁉︎ こ、腰が……!」って声が後ろから聞こえたけど、やっぱ腰やったのかなー。



「何回も言うけど助けてくれてありがとな! えーっと……」

「アリシアと言います」

「アリシアか、じゃあ、そっちは……」

「シャーロットです」



 受付のお兄さんがカタカタと震えながらジュースを持って来た。本当に此奴ら何やったんだ。



「俺はロルフ・ガルシアっていう名前だ」

「私はリリー・ライトっていうの! ねぇシャーロット、貴方、レミリア教に入信

してみ」

「せい」

「あいたぁいっ!」



 中々に個性的な奴だな。

 心の中でそんな事を考えながら目の前に座ってジュースを飲んでいる2人を見つめる。


 まずは最初に自己紹介してくれたロルフさん。


 青を含む灰色の髪と灰色の瞳。顔付きはガキ大将だ。おまけに耳と尻尾が生えている。うん、家じゃ見なかったから居ないと思ってたけど、この世界には亜人がいたのか。乙女ゲームで出てた奴って大体人間だったからなー。


 次は美少女だけどちょっと怖いリリーさん。


 緑の髪に金色の瞳。衣装からっていうか言動からしてプリースト? いや、私と同じくらいの歳に見えるからプリーストより下の1次職のアコライトかも。


 ジッとロルフさんを見つめていると、それに気づいたアリシアが説明を入れた。



「お嬢様は知りませんでしたか。ロルフ様は亜人と言って、人と姿形は似ていますが人よりも秀でている身体的特徴や能力を持っています。この国では差別はありませんが他の国では差別されており、奴隷にされたりしておりますが、また、その他の国では亜人が王様になっている国もございます。亜人では獣人(じゅうじん)鳥人(ちょうじん)水人(すいじん)という三括りで分けておられます」

「へー」



 もうアリシア、グー●ル先生並だよ。凄いよ、その知識量パネェよ。

 アリシアに感心して再びロルフさんに目を向ける。目線の先の彼は居心地が悪そうにジュースを飲んだ。



「な、何だよ……人と少し違うからって見下してんのか?」

「違います。亜人だからそんなに大きな剣が震えたのか、凄いなーって考えてただけですよ」

「すご……⁉︎ そーか、そうだよな! 俺は強い亜人だからお前みたいな弱っちい奴と違って大きな剣が振り回せるんだぞ!」



 あっ、何だろう。此奴チョロいわー。

 心の中でそう呟くと、ロルフさんだけ良い思いをしているのが気に喰わないのかリリーさんが立ち上がった。



「私はレミリア教の最高司祭の娘、リリーよ! レミリア教会は自然の女神、レミリア様を信仰するけど、レミリア様は緑色の髪に金色の瞳をしていると語られているわ! そう! つまり私はレミリア様と同じ髪と瞳よ! 凄くない⁉︎」

「あーうんうん、凄い凄い」

「どうよロルフ! あんたのただの亜人だから力が強い事より、私の方が凄いんだからね!」

「はっ! 戦力的には俺の方が上だ!」

「はぁ〜〜〜⁉︎ 私の方が凄いんですけど!」



 言い合いを始めた2人、止めようと間に入ったが聞く耳なし。アリシアに助けを求めるべく目を向けたが、何を勘違いしたのか近くに寄って小声でこんな事を耳打ちしやがった。



「どちらが言い合いで勝つか、賭けてみませんか?」

「却下!」



 どうしよう、なんかもう不安しかない。





 ようやく言い合いが止まった。2人が肩で息をして互いを睨み合う。そう、結果は引き分けだ。いや、若干リリーが押され気味で終わった。



「それじゃあ、私達はそろそろ帰ります。帰ろ、アリシア」

「ま、待って!」



 席を立つと、リリーさんが私の裾を引っ張って止める。



「実は私達、冒険者なの!」

「うん」

「それで、ロルフはソードマンで私はアコライトなの! どっちも1次職だけど貴方、私達のチームに入ってみない⁉︎」



 ……何故だろう。入ってみたいけど瞳が入信って書いてある。

 此処は断っておこアイタタタタッ⁉︎


 いつの間にか裾を持っていた手は腕へと移動していて、ギチギチと力強く握っている。クソッ、こんな馬鹿力、んな小さな体の何処にあるんだよ。



「わ、分かった! 入る! 入るからその手を離せ!」

「ありがとう! ふふっ……これで入信者1人ゲット。あぁ、レミリア様……迷える子羊を導き給え」

「入信してねぇよ‼︎」



 そう言って、私達は家へと帰った。



「ねぇアリシア。聞こうと思って聞けなかったけど、モンスターを倒すとこの小銭……いや、コインが落ちるの?」

「はい」



 アリシアが淹れてくれた紅茶を飲みながら、夕焼けの赤い陽を浴びてキラキラと光る五百円玉を見つめる。



「これ、売れる? ……んっふふ」

「お嬢様、頰が緩んでますよ」

「いやね? だってお金だよお金、んっふふふふふ……あっ、でもアリシアがゴブリンを倒したんだからアリシアのだよね」

「いえ、私には特に必要ないのでお嬢様に差し上げます」

「良いの? えっ、本当? ありがとう大切にするわ!」



 皮袋に入れていた小銭を机の上に並べて数える。数える度に心が弾む。



「そのコインは精霊を召喚するのに使います」

「これで召喚できるの?」

「はい。使う時は主に仕事かモンスターを倒す時ですが、召喚する聖霊によって使うコインが異なります」

「はぁ〜、これまた不思議なもんだねぇ」



 小銭が数え終わったので皮袋にしまう。疲れたのでもうベッドで眠る事にした。


 リリーさん、本当は「〜ですわ」とかのお嬢様口調にしてみたかったけど、これから出てくるキャラと口調が被るから、妥協してあんな感じになったんだよなぁ。



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