第58話:魔導革命の夜明け!静かなる感謝!繋がる想いなんですけどぉ!
オープンを告げる鐘の音が響き、店内に集まった親しい顔ぶれたちが、一斉に凛愛へと視線を向けた。
かつての凛愛なら、この瞬間に逃走の極意を暴走させて逃げ出していたかもしれない。けれど、今は違う。
「……えーっと。皆さん、今日はお集まりいただき、本当にありがとうございますっ! 勇者ショップ、本日よりオープンです!」
半ば開き直り、ヤケクソに近い元気さで凛愛が挨拶をすると、店内は温かな拍手と歓声に包まれた。
「いいぞ、リア店長! アヴェントリア一の繁盛店にしようぜ!」
ハルドが景気良く叫び、アルメリアも優雅に拍手を送る。
新型触媒の完成を誇るエルドリン、そして誰よりも温かい眼差しを向けていたのは、凛愛が常連としてお世話になっていた宿屋の女将、マーサだった。
「リアちゃん、立派になったわねぇ……勇者だった上に、こんな一等地に店を持つなんて!おばちゃん、涙が出ちゃうわよ」
「マーサさん……! あたしがここまでこれたのも、マーサさんの美味しいご飯があったからです!」
その横では、盗賊ギルドを抜けて商業区の自警団となった女獣人のラグが、鋭い耳をぴくつかせながら腕を組んでいた。
「これからはウチが変な輩が店に近づかないよう睨みを利かせる。安心して商売しろ。ウチの鼻は、悪党の臭いには敏感なんだ」
「ラグさん……! ラグさんがいてくれるなら最強だよぉ! 警備は任せたからねっ!」
賑やかな人だかりの隙間を縫って、一人の小さな少女が静かに凛愛の元へ歩み寄ってきた。
フィオだ。
彼女は多くを語らず、どこか浮世離れした神秘的な空気を纏ったまま、凛愛の瞳をじっと見つめた。
「……お姉ちゃん」
「……あ、フィオちゃん!」
凛愛が驚いて腰を落とすと、フィオは小さな手で凛愛の指先にそっと触れた。その瞳には、言葉以上の深い感謝が宿っている。
「……お家、ありがとう……とっても、あったかい」
フィオの声は小さく、けれど透き通るように凛愛の心へ届いた。
聖剣探索や店作りの忙しさに追われ、自分ですら立ち会えていなかったが、凛愛が寄付し、手配を進めていた孤児院……「フィオたちの家」は、すでに完成していたのだ。
「……あぁ、ついに……!あたし、完成した時に真っ先に行きたかったんだけど……ごめんね、フィオちゃん。お姉ちゃん、ちょっとドタバタしすぎちゃった」
フィオは静かに首を振り、微かな微笑みを浮かべた。
彼女にとって、この美しい家を贈ってくれた凛愛は、物語に登場する聖女か何かのように見えているのかもしれない。
『……フン。バカ人間、少しは見直したぞ。貴様ががむしゃらに動いた結果、救われた命がそこにある……勇者の仕事というのも、案外悪くないものだな』
髪の中から、チュンペーが珍しく毒気のない声で囁いた。
「……うん。あたし、勇者になってよかった。ショップの店長になれて、本当によかったよぉ……!」
凛愛はフィオの小さな肩を優しく抱き寄せ、集まった仲間たちを改めて見渡した。
これから始まる魔界への過酷な旅。
けれど、守るべき帰る場所と、支えてくれる街の家族がこれほどまでに温かいのなら、どんな絶望的なソロプレイだって乗り越えられる。
ギャル勇者・凛愛の心に、本当の意味での勇者の火が灯った瞬間だった。
オープンの熱気が最高潮に達する中、凛愛は意を決して、カウンターの奥から輝く新製品を取り出した。
「えー、本日の目玉商品なんですけどぉ……これ、あたしの持ってるコレをモデルに、天才エルドリンさんが作ってくれた魔導スマホです! みんなに配るから、ちょっと触ってみて!」
一同の手元に、手のひらサイズの薄く滑らかな魔導器が配られた。
全員が不思議そうにそれを眺める中、エルドリンがひょこひょこと前に出て、誇らしげに目を細めた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよぉ。使い方はとっても簡単なんだねぇ。その板の表面に指を触れて、会ったことがあって今声を聞きたい相手を、強く思い浮かべてごらん……そう、それだけで画面に相手の顔が浮かび上がるんだね。あとはただ、お喋りするだけだよぉ!」
エルドリンの説明に促され、ハルドが試すと、隣にいるアルメリアの顔が画面にぼんやりと映し出された。
「……うおっ!? なんだよ、これ、遠く離れたギルドの依頼中でも話せるってことか!?」
「その通りだよぉ。それだけじゃないんだねぇ。理魔法の四元素の触媒としての機能、さらには周辺の地形を読み取って、表示する地図機能もブチ込んでおいたよぉ……天才だね!吾輩。これ一台あれば、迷宮で道に迷うこともなくなるんだ!やったね!」
宿屋の女将、マーサがまじまじと魔導器を見つめながら首を傾げた。
「でもこれ、動かすのに高い魔石を何度も買い替えたりしなきゃいけないんじゃないのかい? 便利なのはいいけど、お高いんでしょう?」
「そんな心配はいらないんだねぇ。この世界に満ち溢れる魔力を直接吸収して動くように、吾輩が魔術式を組んだんだよぉ。使うみんなの魔力が尽きない限り、いつまでだって動き続けるんだねぇ。魔石の交換も、特別な手入れもいらないんだ!これ最高傑作なんだねぇ!スゴイね!吾輩!」
「タダ……使い放題……エルドリンさん、天才すぎなんですけどぉ……!」
凛愛は、自分のスマホをデコっていた頃の気軽な気持ちが、とんでもない事態を引き起こしたことを悟り、少しだけ冷や汗を流した。
「これ……間違いなく秒で完売するよね。あたし、在庫管理だけで死んじゃいそうなんですけどぉ!」
ラグが感心したようにデバイスを弄りながら、「ウチの仕事も増えそうだな」と笑う。
マルコが大興奮と革新的な商売の底上げに唸る。
「ンンッん!こいつァ〜、人界に革命をもたらす!アタシは、これまでに無いバイブスをビンビン!感じてんのよォ!!エルドリン!よくやったわァ!!!」
凛愛の趣味から始まったキラキラした夢は、エルドリンの天才的センスによって、世界を繋ぐ新たな理へと進化していた。
現在のステータス
• 名前:星凛愛
• 状況:魔導スマホお披露目。「魔石不要」の衝撃が広がる。
• 精神状態:あたしが作ったわけじゃ無いのに中心にいる感じ……エグ過ぎる




