第110話:勘違いの狂騒曲と、聖なる部屋の不穏な密談なんですけどぉ!
戦わずして勝つ! という、根拠の全くない不確かな自信に満ち溢れているバカ人間、星凛愛。
力も体力も初期値のまま、ただ女神の超極振りによって得た運60というパラメータと、腰のうるさい聖光剣、そしてスマホという未知の道具を抱えているだけの、中身はただのパンピーギャルである。
しかし、そんな彼女のヘナチョコな実態を、魔界の住人たちは知る由もない。
「あの人間、今日は一段と不敵な笑みを浮かべて歩いているぞ……」
「まさか、次なる冥王クラスの抹殺計画でも練っているのでは……!」
周囲の魔族たちは、彼女がただ運60の数値を見て「あたし実質最強じゃね?」と調子に乗っているだけの顔を、深謀遠慮な魔人の表情だと勝手に解釈してビビり散らかしていた。
勇者装備と運に全振りしただけの女子高生に、魔界最高峰のエリートたちが戦々恐々とする。
この壮大な勘違いが生み出す歪みは、確実に魔界の勢力図を振り回し、混沌へと陥れつつあった。
時を同じくして、人界。
魔界の喧騒とは完全に切り離された、厳かな聖光教会の一室。
ステンドグラスから差し込む神聖な光のなかに、一人の女性が佇んでいた。
その人物、大神官セラフィナは、手元にある通信用の魔導具を耳に当て、静かに、そして冷徹な声で虚空へと語りかけていた。
「そうですか……勇者は日に日に力をつけていると。滞りないようですね。引き続き、監視を続けてください。では……」
通信が切れると同時に、部屋には彼女の低く冷ややかな笑い声が響き渡った。
「フフフフ……」
アザエルたち魔族を翻弄し、魔界で「恐怖の魔人」として悪名を轟かせている凛愛の現状を、正確に、かつ「順調に力をつけている」という歪んだ形で人界へともたらしたのは、一体何者なのだろうか。
魔界で肥大化していく凛愛の虚像。そして人界の闇で、その勇者の動向をじっと見つめ、何かを画策する大神官の思惑。
交錯する嘘と真実の螺旋のなかで、運60のギャルはまだ、己が巻き込まれている本当の運命の歯車に気づいてさえいなかった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・根拠なき万能感: 運60のチート感に浸りながら、「これなら魔界の終わりまで無傷で駆け抜けられるっしょ!」と完全に油断している。
・監視対象(無自覚): 人界のトップにその動向をすべて握られていることなど、微塵も察知していない。
・相棒:
・警戒雀: 凛愛の気の緩みっぷりに呆れつつも、人界側の不穏な空気を野生の勘でうっすらと察知し、『……妙だな。魔界の噂の広がり方が、あまりにも早すぎる。何者かが意図的に流しているのか?』と、元魔王らしい鋭い考察を巡らせている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・便乗: 「うむ! 凛愛の悪名が広がるということは、ワシの名声も広がるということじゃ! もっと皆、ワシを恐れるがよい!」と、自分への評価だと勘違いして悦に浸っている。
・周囲の状況:
・魔界: 凛愛の「戦わずして勝つ」というオーラ(ただ歩いているだけ)に圧倒され、治安が逆に良くなっている。
・聖光教会: セラフィナが不敵な笑みを浮かべ、机の上の羊皮紙に「勇者、魔界の制圧を順調に進行中」と、とんでもない誤報を書き記している。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




